戦争の理由。
「最初はどうやらただの烏合の衆。魔を恐れた者たちの集まりに過ぎなかったそんな対魔連の軍勢は、道ゆく魔獣を仕留めつつ進軍したものの魔王に敗北し撤退したようです。その後、都合400回にも及ぶ進軍を重ね、そのうちの何度かは魔王を打ち破ったと記録にはあります」
はう?
「じゃぁどうして? どうして戦争が続いてるの?」
「魔王は何度でも甦るのです。倒しても、倒しても、時間が経つとまた魔王が現れる」
「そんな! だったらこの戦争って終わりがないじゃ無い!」
「ええ。しかしそれを良しとする者も居るのですよ」
「どういう、こと?」
アルルさまは食後のお茶を一口すすって。少し遠くを見るように視線を動かしながら語った。
「魔獣から取れる魔石です。もはやこの地の経済は魔石無しでは回らないところに来ているのです……」
生活を支える魔具。お掃除から洗濯、調理器具までもが魔石というエネルギー無しではただのガラクタだ。
前世の地球でいう電気? みたいなものを全て魔法に頼っているこの世界では、そのエネルギー源である魔石の供給が欠かせない。
それまでなんの不思議にも思わず使っていたそんな魔具、そして魔の詰まった魔石。
魔ギアのような失われた技術を使用した魔道具は、大気中に存在するマナを自身で吸収してエネルギーに変えているようなのだけれど、そういう機能は完全にブラックボックスと化して解析不能、再現不能なのだという。
その代わりのエネルギーが魔石であり、魔石を利用した魔具が現在のあたしたちの生活を支えている。
アルルさまのお話を聞くまで、あたしは魔石っていうのは石炭のように採掘しているのだとばかり思っていた。
まさかその魔石を回収するために積極的に魔獣を殺しているなんて。
この戦争の最大の利益がその魔石回収にあるだなんて。
そんなの!
アルルさまのお話を聞いてそう解釈したあたし。
アルルさまが悪いんじゃ無い。それは充分わかってる。でも、怒りがおさまらなかった。
「じゃぁ、魔石を得るために戦争してるっていうんです!? そんなことのために、あんな戦争が続いてるって言う事ですか!?」
思わずそう叫んでた。
セバスが静音の魔法を張り巡らせたのがわかる。周囲にこのテーブルの会話が漏れないよう結界をはったのだ。
「ああ。今となってはそうだと私は確信しているよ……」
「そんな!」
「情けない話だけどね……」
ぎゅっと噛み締めた唇がプルプルと震える。
そんなの間違ってる! って大声で叫びそうになって、それを我慢しているあたしの隣で、静かな、囁くような声が漏れた。
「そんな、そんな事のために魔族は虐げられてきたと言うのですか……」
その声は冷たく、そしてとても悲しい色をしていた。




