再現不能な技術。
「お待たせいたしました」
フロスティが本をいくつかワゴンに載せて帰ってきた。
「魔王討伐戦争について書かれた資料、そしてその他補足資料になります」
そう言って分厚い本を3冊テーブルの上に乗せるフロスティ。
「ありがとう」
アルルさまのその声に、可愛く微笑む姿がまたかわいい。
「姫さまにはこちらを。ご注文がなかったので姫さまが喜びそうな本を見繕ってまいりました」
はう。嬉しい。
真っ赤な分厚い表紙に綺麗な宝石がいくつもはまっているそんな飾り表紙の本。タイトルは……。
「まあ。魔道王国の伝説、ですわね」
著者、アリシア・ローレン。
あたしとおんなじアリシアって女性作家の書いた本。
『魔道王国の伝説 〜マシンメア=ハーツ〜』
昔読んだっていうか観たのは子供向けの童話みたいのだったけど、この国の神話みたいなお話で。
王女セリーヌ・ラギ・レイズが活躍するお話だったかな。けっこう好きだったのを覚えてる。
うん。がんばる女の子が出てくるお話はけっこう好きかなあたし。
アルルさまの読んでいる本はほんとう紙に文字が書いてある本。
あたしに渡されたこれ、は。
本を開き手をかざす。
と。
ああ。頭の中に情景が浮かんでくる。
3D映画のように、頭の中に直接立体的な映像が浮かび。
味も匂いもそんな五感全てに訴えかける刺激。
めくるめくストーリー。
どれくらいの時間そうしてたのだろう?
一冊分の内容がおわり。あたしは主人公セリーヌになりきって完全にその世界に入り込んで。
ふ、と、現実に帰る。
眼を瞑ってしばらく余韻に浸ったところで。
「姫さま。続きを持ってきましょうか?」
そうフロスティから声がかかった。
隣を見るとアルルさまはまだ読書中らしい。時間も……、まだお昼には早いのかな?
「ええ。お願いするわ。フロスティ」
あたしはそうフロスティに告げ、読み終わった本を手渡した。
この、VR絵本というべきかVRビデオというべきかそんな本。
実際に目で読むのではなく頭の中に直接ストーリーが流れ混んでくるそんな魔道具。
実はこれも『失われた技術』の一つではあるの。
この王立図書館は聖王国成立以前の前時代の頃からここに存在してる。
聖王国の歴史だってもうすでに二千六百年もあるっていうのにそれ以前ってどんだけ?
でも。
フロスティやタビィにしてもそう。魔力紋ゲートもそう。こういったVR絵本もそう。みんな現代じゃ再現不能な技術でできてるんだよね。




