マジカルレイヤー。
アルルさまは年に一回か二回はうちの国に遊びに来るようになった。まあ表向きは兄様達と交流してるけどたぶんあたしの事諦めてなさげ、かな?
この離宮にまで押しかけてくるようになったからちょっとふにゃぁ。
っていうか、よ? 若い女性ばっかりのこの離宮にそうそう他国の王子様がいらしていいわけ?
そんな風に思うんだけどきっと王宮サイド、お父様やお母様連が許可してるからこういう事になってるんだと思うと気が重い。
はう。
アルル様の事は嫌い、じゃないよ?
むしろ好感持ってる。
だって、ほんとに正直なんだもの。
心の色が真っ直ぐで何処にも嫌なところがないのだもの。悪い感情なんか持ちようが無いよ。
友達としてならほんとに良い人なんだけどな。恋愛感情とかはちょっとまだわかんないし王室の結婚がそんな好きだのなんだのでできるわけも無いのもわかってるけどでもね? もう少しだけ夢を見させてくれてもいいじゃない。あたしだって恋の一つもしてみたいとは思ってるんだよ?
今日は一緒に図書館に行かないかって誘われてる。
これって、デート?
王立図書館は警備も万全だしなんたって入り口には魔力紋ゲートまでついてるから不審者は入室できないし。
ってこれ、魔力紋ゲートって言うのはあれね。魔力紋を登録した人しか通さないっていう優れものの魔具。
けっこう大昔の技術で作られててもう再現不能なブラックボックスな技術なんだけど、残ってるのはほんのわずか。
この国では王宮最深部と王立図書館にしかないそんな魔具。あたしは当然登録してあるけどアルル王太子もたぶんちゃんと登録されてるのかな?
「ええ、先日登録しておきましたから」
そう抜かりのない返事をくれるセバス。まあだからわざわざ王立図書館って指定で誘って来たんだよね。
今日のあたしは白いドレス。
ついてくることになってるクロムが黒のゴスロリのミニドレスなんだけどデザインが所々お揃いでかわいいの。
そういえばね?
クロムはアルル王太子がこの国にしょっちゅう遊びにくることが決まってから少し変装? させてる。
魔族とわからないようにね。
流石にさ、他国の王太子のお側に魔族の少女が居るって言うのは向こうの国の関係者にとっては許容出来ないだろうし。
マリーお母様がふらっと離宮に遊びに来た際に教えて貰ったマジカルレイヤーっていう魔法。
自身の魂のゲートからマナをふんわりと出して、そのマナに対象のマトリクスを描いて纏う。簡単に言えばそんな魔法なんだけど。
なんていうかな、前世の世界にあったお絵かきソフトのレイヤーみたいなもの?
マナを膜に見立ててそこに人としての形質を貼り付け、それを自身に纏うことで見た目を変化させる事ができる魔法。
他人のマトリクスを纏えば他人に変身することだって可能だろうけどそもそもその他人のマトリクスっていう概念がわからない。
クロムの場合、肌の色を人に寄せ、ツノのない姿のマトリクスをお母様が構築してくれたから良かったけどふつうそういう事をする方が難しいよね。自分のマトリクスなら魂に刻まれてるからわりと簡単なんだけどね?
でもってこれにはもう一つ良い効果があって。
それは、人の身体的な弱さを補ってくれるってこと。
人間の皮膚は弱いよね。鋭い刃物ですぐ切れてしまうし熱にも弱い。
身体能力だってそう。そういうのを高めてくれる効果もあった。
皮膚の上に一枚バリアが貼られたような感じ? おまけにちょっとスーパーマン的な?
っていうか魔法少女? かな? そんな感じの強さを得ることができたの。




