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十四 ギルドマスター

「ギルドマスターなのだ」


 声のした方に顔を向けたお銀が言った。


「そこの人達が例の人達?」


 ギルドマスターが言う。


「そうなのだ。こっちから、ガオガブさん、ジャベリンさん、そんでもってこの猫がミーケさんなのだ」


「どうも。こんにちは。あーしが、DQのギルドマスターよ」


 一郎達のそばにギルドマスターが来る。金銀赤青が入り混じった長い髪に、ぶ厚い化粧。更には、日常ではまず見る事のできないような派手なドレス。ギルドマスターは一目見ただけで誰もが驚くような恰好をしていた。


「すごいな。それはなんなんだ?」


 一郎はギルドマスターを見て言った。


「ドラッグクイーンよ。知らないかしら?」


「ドラッグクイーン?」


 一郎は呟く。


「知らないならいいわ。気にしないでちょうだいな」


「ミーケ達に用があるんだってにゃー?」


 ミーケが眠いのか目しぱしぱさせながら言う。


「あら。かわいい猫ちゃん。アフロなんて趣味がいいわ。あなたの猫ちゃんなの?」


 ギルドマスターがミーケと一郎のそばに来ると、ミーケのアフロをそっと優しく撫でる。


「ふにゃーん。うむうむ。ジャベリン。撫で方からすると、こいつは悪い奴じゃないかもにゃ」


 ミーケが気持ち良さそうな顔をする。


「ふふふ。かわいいわ。それで、あなた達がボットで間違いないのよね?」


「ああ。俺達がチーターを狩ってるボットだ」


「なら良かったわ。あーしと一緒に来て欲しいの。魔王が出現するイベントがあるんだけれど、その魔王はどうしても倒せのないのよ。それと、それだけじゃなくって、負けたプレーヤー達の使っているキャラが、戦いに負けると皆デリートされてしまうの。データを復旧しようとしてもできなくって、もうお手上げなのよ」


 ギルドマスターがミーケを撫でる手を止めて、一郎の顔を見る。


「イベントに参加さえしなえればいいんじゃないのか?」


「それが駄目なのよ。魔王が出没したエリア一体にいる者達すべてが強制的に参加させられるイベントなの。魔王は神出鬼没で、被害は拡大中よ」


 一郎はミーケの顔を見る。


「ミーケ。そんな話聞いてるか?」


「んにゃ? お母さんは何も言ってなかったにゃ。けど、プレーヤーが独自でやっているイベントだと、通報が遅れていたり、調査が遅れていたりする事は結構あるにゃ。恐らくそういう事だと思うにゃ」


 一郎は何か釈然としない物を感じたが、そもそも今の立場になってから何もかもが初めて起こる事づくしだから、こういう物なのかも知れない。と思うと、その事については何も言わずに、それで俺達にそいつを倒して欲しいって事? とギルドマスターに聞いた。


「そういう事よ。あーし達じゃ歯が立たないの。まったく何もできないわ」


「そんなに強いのです?」


 今まで黙って聞いていたガオガブが言った。


「強いっていうのと違うわね。あれは、魔眼を持っているの」


 魔眼? 魔眼っていうのは、あれか? 相手を見ただけで殺せるとかそういう感じの? と一郎は思う。


「即射の魔眼と皆呼んでいるわ」


「即射の魔眼?」


 一郎は呟くように言う。


「そう。即射の魔眼。あの目を見た者は、体の中から体液が出てしまうの」


「なんだよそれ。すごいグロイ事に」


「いえ。そうはならないわ。体液と言ってもおもに下半身的なあれなのよ」


 一郎の言葉を遮るようにギルドマスターが言い、すぐにその言葉の意味に気付いた一郎は息を飲んだ。


「な、なんて恐ろしい魔眼なんだ」

 

 一郎はちょっとわくわくした。


「むむ? ジャベリン? なんか呼吸が荒くなっているにゃ?」


「ミーケよ。これは武者震いというやつだ。行こう。そんな魔眼を持つ者を放っておく事はできない。これ以上被害者を出しちゃ駄目だ。ギルドマスター。すぐにその魔王がいる所に連れて行ってくれ」


 一郎は、うへ。うへへへへへ。即射の魔眼かあ。どんな感じなんだろう。気持ちいいのかな? と思いつつ言った。


「それが、どこにいるかは分からないのよ。向こうの気分次第なの。まあ、危険だから、本腰を入れて探した事もないのだけれど」


 ギルドマスターが申し訳のなさそうな顔をする。


「それは大丈夫にゃ。すぐにお母さん連絡して居場所を特定してもらうにゃ」


 ミーケが言って大きな欠伸を一つする。


「あらー。猫ちゃんすごいわ。そんな事ができるの?」


「ミーケな優秀にゃ。って。もう場所が分かったにゃ。とっとと行くにゃ。ジャベリン。飛ぶにゃよ」


「あの景色が歪む奴か?」


「そうにゃ転移するにゃ」


 ミーケが言うと周囲の景色が歪み始めた。


「ここは?」

 

 一郎達は森の中に移動して来ていて、目の前には禍々しい雰囲気を放つ、古代の遺跡の廃墟のような物があった。


「場所は、言っても、このゲームの知識がない一郎には分からないにゃ。とにかく、ここに魔王がいるにゃ」


 ミーケが一郎の腕の中から抜け出ると、すたすたと廃墟に向かって歩き出す。


「ミーケ。待てって」


 一郎は言って後に続く。


「ガオガブも行くのです」


 ガオガブが走り出す。

 

「お銀も行くのだ」


「お銀。駄目よ。あーし達はここで待っていた方がいいわ。魔王との戦いに敗れたあーし達は消えてしまう」


 背後からお銀とギルドマスターのそんな会話が聞こえて来る。


「ミーケ。ほら。抱っこ」


 一郎はミーケに追い付くとミーケをひょいっと持ち上げる。


「ジャベリン。ジャベリンはミーケの事が大好きなのにゃ?」


「当たり前だろ。こんなかわいい猫誰が嫌いなもんか」


 一郎はミーケの顔に頬擦りする。


「うーん。なんか複雑なのにゃ」


「旦那様。ミーケさん。あの上に人がいるのです」


 ガオガブの言葉を聞いた一郎は顔を上げる。遺跡の廃墟の中にいくつかある石柱のような物の一つの天辺に、深紅のローブに身を包んでいる者の姿があった。ローブに身を包んでいる者が石柱の上から飛ぶ。風鳴りの音をさせながら、降下して来ると、一郎達の前に着地する。


「良くこの場所が分かったの。わしを見付けるとはたいしたものじゃ」


 ローブの中からテキストなどを読み上げるソフトが発するような声が聞こえて来る。


「お前が、プレーヤー達を困らせている魔王とか言われてる奴か?」


 一郎は言った。


「そうだったらなんだというのじゃ?」


「悪いけど、二度とそんな事ができないようにさせてもらう」


 一郎は、アドミニミニコードを使うとして、こいつをどうしてやろう。いや。その前に、魔眼の威力を試した方がいいよな? うんうん。絶対にそうした方がいい。と思った。


「ほう。わしと戦うというのじゃな」


 そう言って、フードの部分に向かって手を伸ばすと、フードの部分をめくって顔を出す。


「な、なんだと?」


 一郎は言って体をこわばらせる。その者の顔に一郎は見覚えがあった。かつて一郎がエロゲー世界に出入りしていた時に、一番お世話になっていた羊獣人のゴートちゃんにそっくりだった。


「ふふふふ。わしに見覚えがあるようじゃの」


「ゴートちゃんなのか?」


 一郎は恐る恐る聞く。


「残念ながらわしはゴートちゃんではない。じゃが、お前とは趣味が合いそうじゃ。わしもゴートちゃんには良く世話になっておったのじゃ。これは、あのデータを利用しているだけじゃよ。そんな事より、お前の情報はすでにつかんでいるのじゃ。柳生一郎。お前は、元人間のボットじゃろう?」


「な、なに?」


 一郎は、ゴートちゃんの言葉に驚き、それ以上言葉を出す事ができない。


「そうだったらなんなのだにゃ?」


「なあ、一郎。お前は元々はこっちよりの人間じゃろう? どうして、そんな事をやっているのじゃ? こっちに来るのじゃ。一緒にこのデル―ジョンにあるすべての世界を乗っ取るのじゃ。わしとお前が手を組めばなんでもできるのじゃ。管理者さえ倒せば、この世界のすべては思いのままじゃ。お前の力があれば、すぐにでもそれが実現できるのじゃ」


 一郎はゴートちゃんの思わぬ言葉に動揺する。


「ジャベリン。こんな奴の言う事は聞いちゃ駄目なのにゃ」


「旦那様。ガオガブは旦那様を信じているのです」


 一郎はミーケの顔を見てから、ガオガブの顔を見る。


「他のボットどもには話していないのじゃ。黙っているのじゃ。魔眼発動なのじゃ」


 ゴートちゃんの目が金色に輝き出す。


「にゃ、にゃっはーん」


 ミーケが色っぽい声を出し、びくびくと痙攣しはじめる。


 これは? まさか? これが魔眼の力なのか? 一郎はそう思いつつ、ミーケの顔を見つめる。


「お前もじゃ」


 ゴートちゃんがガオガブを見る。


「駄目なのです。そんな、なのです。立っていられないのですうぅ」


 ガオガブがその場に座り込む。一郎はガオガブの顔を見つめる。上気して赤くなっているガオガブの顔はいつになくエロかった。


「どうだ? これでもわしに協力はできないか? わしとくればなんでもやり放題じゃぞ」


「ふ。どうかな。この二人はこうなっているが。俺はまだだ。お前が俺に勝てないと分かっていてそう言ってるかも知れないからな。俺にも試してみろ。俺にその魔眼が効くようだったら、お前の仲間なる件の事を考えてやってもいい。万が一に俺に効かなかったら、お前をこの場で成敗する」


 一郎は言ってきりっと表情を引き締めた。


「分かったのじゃ。わしの目を見るのじゃ」


 一郎はゴートちゃんの目をじっと見つめる。


「魔眼発動なのじゃ」


「ほううう。はうわぁ。これはぁああ」


 一郎は声を上げながらその場に膝を突く。


「どうじゃ? 効くじゃろう?」


「うーぬ。まだ、まだだ。これくらいじゃああ、俺は倒せないんぬっ」


 一郎は立ち上がる。


「ほほう。やるのう。だが、こちらもまだまだじゃ。見れば見るほど気持ち良くなる。それがわしの魔眼の力じゃ」


「ほうっはほちっぺんっすう。ふー」


 何を言っているか一郎自身も分からないし、書いている作者自体も分からないが、それはそれは恐ろしいほどの快感が一郎を襲っていた。


「どうじゃ? 腰が引けているようじゃが?」


 一郎は腰を曲げて、エビのような格好になりながら、辛うじて意識を保っていた。


「うーふふうふ。まだまだまだまだ。俺はまだまだいけるぜぇ。それが証拠に俺の頭が爆発していない。欲情ゲージがマックスになると俺の頭は爆発するんだが、そうなっていないという事は俺はまだまだいけるという事の証だ」


「お前は馬鹿じゃのう。欲情ゲージなどマックスなるはずもない。お前は今常に快感を吐き出しているのじゃからな。いわば連続ハッピー状態よ。まあいい。そのまま枯れるのも、いいじゃろう。現実のお前が死んだ時のように、この世界でも快楽に溺れて死んで行け」


 魔王の魔眼の輝きが増す。


「ジャベリン。逃げるにゃ」


「旦那様。目を見ては駄目なのです」


 ミーケとガオガブが言う。


「大丈夫だ。二人は大人しく待っていろ。俺は一度死んだ身だ。俺にはもう恐れる物は何もない」


「恐ろしいやつじゃの。これだけの魔眼の攻撃を受けても理性を失わないとは」


 ゴートちゃんが動揺しはじめる。


「これで終わりか? 終わりなら、俺の方から反撃をさせてもらうぞ?」


 一郎はゆっくりとゴートちゃんに向かって歩き出す。


「何をする気じゃ?」


「それなんだけさ。その魔眼をもらおうと思ってな。いい能力じゃないか」


 一郎はそう言ってから小さな声で、アドミニミニコード魔眼と俺の目を交換しろ。と言った。


「これでどうだ? ゴートちゃん。俺の目を見てみろ」


「ん? お前の目がなんだというのじゃ? はわわっわわ。これが、これが魔眼のおおほぉぉお」


 ゴートちゃんが崩れるようにしてその場に座り込む。


「勝った」


 一郎はその喜びを分かち合おうとミーケの方を見る。


「駄目にゃー。見ちゃ駄目にゃあ」


 ミーケがはあはあする。


「ミーケ。ごめん」

 

 一郎は慌てて下を向く。


「旦那様。そんな目は早く捨てるのです」

 

 ガオガブの言葉を聞いた一郎は、ガオガブちゃんの言う通りだ。早くこの目を……。いや。待てよ。アドミニミニコードを使えばいつだって戻せる。その逆もしかりだけれど。まあどっちもできるけど、どうせなら、このままこの魔眼を使って色々と楽しむというのはどうだろう。と思う。


「ガオガブちゃん。それはちょっと。今は、やめとくよ。せっかくこんな面白い物を手に入れたんだ。俺はしばらくこれで遊ぼうと思う」


 一郎は顔を上げるとガオガブを見る。


「旦那様。駄目なのですうぅ」


 ガオガブががくがくと体を痙攣させる。


「エロいなあ、これ」


「おい。ジャベリン。何してるにゃ。早く止めるにゃ」


「ミーケ。ごめん。後少し。こんな面白い物、すぐには捨てられない」


 一郎は言って歩き出しつつ、次は、誰にしょうかな? あ。そうだ。あのくノ一にしよう。と思う。


「それ以上はいけません」


 そんな言葉が聞こえたと思うと、一郎の周囲の景色が歪んだ。


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