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前編

 

 一般的な大人が使える時間というのは限られている。

 

 平日は、朝から晩まで、社会に奉仕しなければならない。

 恋人とのバカンスを楽しんでいても、僅か数千円のお金を代価に、休日を売り払わなければいけない日もある。

 

 ようやく仕事を終わらせた日には、恋人とのデートや友人達とのパーティ、家の掃除等、行わなければいけない事が山ほどある。粗悪な安物の家電が壊れてしまい、それを修理するような事に一日を使わされた日には、うんざりするだろう。


 それらを終わらせたと思えば、もう日が暮れており、次の日の仕事に備えなければならない。一般的な大人の人生はそんなものである。いくらあっても時間が足りない。


 これが今回の話、『小説を書く時、どのぐらいの時間を使うのか』という話に繋がる。


 小説を執筆する上で、どのぐらいの時間を使うべきか。

 多くの読者は、作者は面白い作品の為には、膨大な時間を使うべきだと思っているだろう。

 小説に多くの時間をかければ、当然良い小説が出来上がる。


 時間をかければ、余計な文章は削除し、より良い表現を見つけることが可能だ。

 良い文章構造を見つける事もできれば、話の筋をより良くすることもできる。


 しかし、『小説家になろう』の殆どの作者には、小説を書くための十分な時間というのは用意されていない。

 小説を好きなだけ推敲する時間もなければ、作品にアドバイスをしてくれる編集者もいない。

 体調の最も優れた調子の良い日を選んで書きはじめられる訳でもない。


 小説を書くための時間というのはあまりにも少ないのだ。


 ランキング上位の作者は、毎日のように小説を投稿している。彼らの作品で最も驚くべきことは、誤字脱字の多さや、その陳腐なストーリーでもなく、その執筆スピードだ!

 彼らの中に専業の小説家は殆どおらず、本業との兼ね合いのバランスを保ちながら、数千字の話を投稿し続けている。しかも毎日だ。アメイジング!

 

 私の場合を例示しよう。私が書いている短編小説は二千文字程度の作品が殆どだ。二千文字程度の作品は、だいたい五分程度で読める。この作品はどれぐらいの時間が使われているか。聡明な読者はお分かりだろうか。


 一時間? 一日? 一週間? 一ヵ月?

 

 私が作品に使える時間というは、平均して、二時間+一時間である。

 まず初日に二時間程かけて原稿を書き上げる。次の日に誤字脱字等をチェックして校正する。問題がなければ、そのまま投稿だ。

 出来上がった作品が、面白くなくても投稿した方が良い。作った作品を投稿しないのは勿体ないからね。なにせ投稿しなければ、まったくの無駄な時間を使ってしまった事になる。面白くなくても、感想がつけば御の字だ。成長の糧になる。


 そうして作り上げられた作品が、『小説家になろう』に並べられる。

 作者は、自分の作り上げた作品を見てニヤニヤと笑う暇はない。いくらアクセス解析をクリックしても、劇的でドラマティックなグラフを見られるわけではないし、感想欄に素敵な恋人が待っているわけでもない。


 投稿した作品は見返したくなるのが作者心であるが、これが最も無駄な時間だ。そんな事をするぐらいなら、他の小説を読んだ方が百倍マシというものである。後で自分の小説を読み返しても、誤字が見つかるだけだ。


 そして自分の小説に感想が書かれたら、返事を打たなければならない。そこには良い感想もあれば、便所にすてた方がマシだと思えるような陰口も存在している。感想は作者にとって嬉しいもので、小説を書くためのエネルギーのようなものであるのだが、それらに毒物を混ぜてくる読者が存在する事は、悲しいが認めなければいけない事である。


 投稿後の反応はチェックすべき事柄であるから、時間を割かないわけにいかない。良い感想には時間を惜しむべきではないが、クソのような感想には一分たりとも時間をかけるわけにはいかない。

 そして良い感想を探しだす時間があれば、恋人との濃厚な時間を楽しむ事ができるし、一か月後の旅行について何処に行くか考える事さえできる。

 

 さて、私がこの文章(前編)を書き上げるのにどれぐらいの時間を使ったか考えてみよう。

 私はこの作品を午後十四時に書き始めた。時計を見ると午後十五時である。

 明日の私が誤字脱字やストーリーをチェックし、そのまま投稿するだろう。

 

 明日の私が使った時間を考えると、この前編に使われた執筆時間は90分である。


 二日の間に90分を使った事になる。今日は調子よく筆が進んだので、普段はこれ以上の時間を使っている。つまり、小説を書く代わりにこの時間を使う事があれば、勉強して難関資格を取る事が可能だし、彼女へ愛を囁いて結婚する事さえできるだろう。筋肉トレーニングをして物理的な強さを手に入れる事さえ不可能ではない!

 

 結局の所、この文章で言いたい事は、執筆時間というのは短くあるべきであり、筆が早い程良いという事だ。面白い作品を考えるより、作品を早く作る事を考えた方が良いと主張したい。

 ※これは何時でも小説を投稿できる機会に恵まれている『小説家になろう』だから成り立っている事を注釈しておく。文学賞等の少ないチャンスには、時間をかけた方が良いだろう。

 

 そうして作品を作れば作る程、面白い作品を作れるようになるだろうし、誤字脱字や陳腐なストーリーも減るはずだ。作品を書くほど作者としての経験が増えるだろう。余った時間で他の小説を読むこともできれば、プライベートを充実させる事もできる。

 

 執筆中は良く集中して書いていれば、いつかは短い執筆時間でも良い作品を作り出す事ができるはずだ。

 だからこそ、作品を素早く書くための技量が必要だと思う。


 後編へ続きます。

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