《或る夜の素直さ》&《緑色の髪》
詩というよりかなりの短文になりつつあります。
《或る夜の素直さ》
ああー…
眠れない。
なんでだ?
枕は自分のを持ってきたし
彼奴がいない夜に
抱き枕の代わりの
鹿のぬいぐるみも
あるのに。
あー寝れない。
旅行で
遠くに泊まるときには
いつも寝付けない。
なんでだろうなぁ…
ぼんやりと考えていた時彼奴が言った。
『お前、いっつもオレの腕枕で寝てんだぞ。』
ほら、といって
差し出された腕に
噛みついてやった。
『いってぇ!何だよ!』
ぶうぶう文句を言う彼奴を黙って見つめて
その厚い胸板に
顔を押しつけた。
彼奴は
急に黙り込んじまったから
言ってやった。
『たまには、抱き締められて寝たいもんだ』
そうしたら
あったかい腕で
抱きしめてくれて
一言言われた。
『素直になれよ』
素直になんか
なるもんか。
だから
小さく、
やだよ
と呟いて
深い夢へと
落ちていった。
(素直になれない自分は彼奴に堕とされたようだ。)
《緑色の髪》
どうやら
恋、を
してしまったようだ。
貴方から
目が
離せないのだ。
忙しく仕事をしている時
生徒たちを叱っている時
オレの横を歩いている時
くるくると
目まぐるしいほどに
変わってゆく
その表情に
惹かれたのか。
でも
今、
たった今
気付いたんだ。
オレの横を歩く
貴方の
その
緑色の髪に
心臓のど真ん中を
射抜かれたんだ。
その矢は
オレを
興奮させ
痛めつけ
そして
勇気
―無鉄砲という名の―
を与えたのだ。
『髪、きれいですね』
それしか言えなかった。
だけど
貴方は
微笑んで言った。
『そう言ってくれたのは貴方が初めてです。』
その微笑みに
やられてしまったようで
理性と感情が
滅茶苦茶になり
オレは
言った。
『じゃあもう一つ初めてを貰っていいですか?』そして
優しく
口付けを。