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あなたと共にいられるなら。  作者: 某某
第一章 出会い編
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第一章5.5 行動の根元の愛。

また文量が少なく、さらにフィーリア様が登場しないため、〇.5話扱いとなります。遅筆だよちくしょう。

 早いもので、フィーリア様の従者になってから、一月と少し、月日が経過した。

 その日も、いつも通り早朝に起床。フィーリア様を起こすまで少しばかり時間ができる。昨日の授業の内容を覚えている限り帳面にまとめ、それを切り取って、ポケットにしまう。だいぶ、一冊の厚さが薄くなってきてしまっているが、その分だけここで時を過ごしたのだと思うと、感慨深くなる。まあ、一月程度の期間ではあるが。

 ここでの暮らしは、ジジイと暮らしていた時期以来の充実感を俺に与えてくれた。まず、一日一日の内容が濃いのだ。そのうち、だいたいのことにフィーリア様が関わっていて、俺にストレスを貯蓄させたり、からかってきたりする。白髪生えるかと思ったくらいだ。まあ、ストレスだけってわけでもなく、楽しかったと思うこともなかったとも言い切れない。

 俺を気に入ってくれている様子なのは嬉しいが、毎晩俺の部屋に来て話し込む習慣はそろそろやめていただきたいものだ。安眠の妨げと睡眠時間の減少につながる。その旨を伝えても、『いやよ』という却下を意味する言葉と『善処するわ』なんて言葉を言い残す癖に、次の日になるとまた扉をノックしてくる。マジであの人どうにかできねえかな・・・・・・。

 とまあ、最近の話はひとまず置いておこう。集中しなければならない。


『熱よ、(ことわり)よ。我が手に種を芽吹かせたまえ』


 呪文を詠唱する。これから行おうとしているのは初級も初級。基礎の魔法なのだが、いかんせん魔の才がまるでない俺には、高難度魔法を行使しようとするのと同じくらいに難しいのではないかと思えてしまう。

 握りこぶしに、人差し指だけを立て、その先端に意識を集中する。フィーリア様が言うには、体に流れる血液が、指先に集まるイメージで・・・・・・。

 出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ出ろ――――――!

 だいぶ遅れて、豆粒程度と言えるレベルの火種が、俺の指先に宿った。


「よっ、しゃぁっ・・・・・・!」


 額に浮かんでいた汗を拭う。それだけの行為で、火種は消えてしまった。だが、今はこれでいい。最初の内は、この点火すらままならなかったのだから。むしろ、よくここまで上達したと自分を褒めてやりたいくらいだ。

 今やったように、俺は魔法の練習も早朝の習慣としている。なんとなくかっこいいことをやってみたい年頃なのだ。それですぐに魔法が出せなかったのにそれでも習慣として続けているのだから、我ながら根気があると思う。

 俺の適正は火の魔法のみだった。それも、かろうじて火種が出せるレベルになったばかりのポンコツ。フィーリア様は、水と風の二つに適性がある。噴水を流れる水程度なら自由に操れるくらいには、上達しているようだった。流石に、持って生まれた才能の面は覆せない。

 毎朝の習慣は、前日の授業のまとめと、魔法の練習。それからもう一つ――――――、


「スカイ君、起きてるよね」


「・・・・・・はい」


 ――――――フィーリア様の兄、フィヨルドとの剣の稽古だった。






::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::





「何で、毎日毎日私のこと連れ出すんですかね」


 庭へ向かう。相も変わらず底の知れないフィヨルドの笑みを尻目に、ため息をつきたくなるのを堪え、尋ねる。


「さー、なんででしょう?」


「・・・・・・質問に質問を返さないで下さいよ」


 毎日毎日フィーリア様の誤解を解くの面倒なんだぞ。寂しがり屋なのかはしらないが、やけにコイツとの関係に勘繰り入れてくるし。こんなよくわからない奴の側につくわけないのに。


「知りたい?」


「そりゃあ知りたいですね」


「じゃあ、教えてあげようか」


「え?」


 案外あっさり教えてくれるんだな・・・・・・てっきりはぐらかされるものと。


「俺、君のことを観察してたんだよ」


「は?」


「俺は、この一か月君のことを観察してたつもりだ。何かやましいことがあればわかり易い君のことだ、節々で表情に出るだろう。まだ、君がどこかからの刺客だという可能性だって捨てきれなかったからね。危ない異分子は消さなきゃいけない。結果として、君は潔白(シロ)だったね。消さないで済んでよかったよかった」


「・・・・・・」


 ・・・・・・つまりこの人は、俺がこの一か月のうちに何かしら怪しい動きをしたら、即刻存在を抹消するつもりだった、と。

 あっぶねえええええええええ!!!!!死ぬところだったのかよ!


「フィーリアはね、王太子殿下の婚約者候補なんだよ」


「・・・・・・候補?」


 複数人いる、ということなのか。はたまた正式に決まってないだけで、フィーリア様一人しかいないのか。

 思考をめぐらす俺の考えのうち、フィヨルドは前者を肯定して続けた。


「そう。フィーリアは、正式な婚約者ってわけじゃなくて、複数いる候補者の一人。その中から、王太子殿下直々に選び出されるんだ」


「・・・・・・で、それと何の関係が?」


「あれ?案外驚かないんだね」


 正直、ヴラドが公爵として国の重役に就いているのはすでに知っているし、その娘であるフィーリア様が、可憐で愛らしい少女(見た目は)なのだから、王太子の妃に選ばれても不思議なことはないと思う。言うほど意外性はない。


「話を戻そう。まあ、君ならすでに知っていそうなものだけど、フィーリアは気丈に振舞ってるようで、案外脆いところがある。あの子の『眼』も、そうなってしまった一因だね」


「確かに、誤って泣かせてしまったことがあります」


「わーひどい」言いながら、少しもそう思ってなさそうに笑みを深める。


「まあ、そんなフィーリアは、打算や欲望を嫌って、人を頼るということをしなくなってしまっている。ただでさえ脆いのに、そんな状態で王太子殿下の婚約者候補だなんて、きっと心を壊してしまうよね。プレッシャーだとか、候補者同士のいがみ合いだとか。あの子一人で耐え抜けるとは思えない」


「つまり、何なんですか」


「君に、フィーリアを支えてほしい」


 最初からそう言ってくれればいいものを。この人は本当に回りくどい。

 しかしまあ、支えるだけなら、すでにこの役職で十分なしていると思うのだが・・・・・・。


「それは、すでに従者として」


「まあ、そうだね。君にはこれまでと同じでいい、あの子と接してあげてほしい。気遣ってあげてほしい。話し相手になってあげてほしい。他人に心を開くなんて、フィーリアとって異例中の異例なんだ。来年からはフィーリアも学園で暮らすことになる。もちろん君を連れて行くだろうけどね」


「従者ですから」


 貴族の子供たちは、十一歳を境に、よっぽどな理由がない限り、生家を出て、どこかしらの学び舎へ入ることになる。

 フィーリア様もその例に漏れず、約一年後、俺も付き添いで王都の学園へ向かうことになるだろう。


「うん。だから、フィーリアが辛い時、傍にいてあげてくれ」


 フィヨルドの言っていることは、至極全うな、妹を大切に思う兄の言葉であるように思う。しかし、そんな言葉が彼の口から出たことに、違和感しかない。この男が何の打算もなく、フィーリア様を応援したりするのだろうか?この一月の間、俺は毎朝彼と剣を交えた。だからこそわかる。こいつは、他人のために無償で動くような綺麗な人間じゃない。

 しかし、人の本質というものは、そんな短い期間で測れるものではないようで、


「・・・・・・俺だって、可愛い妹のことくらい、心配するよ」


 また俺の考えていることが筒抜けだったらしく、フィヨルドは苦笑した。どうにも、嘘を言っているようには見えなかった。

 たまに見せる真実味ある表情。それこそ、彼の素なのだとわかってきた。

 妹を大切に思う心。この人も、人並みに家族を大切に思う気持ちを持っていたようだ。大袈裟だけれど。


「そりゃあ、君には嫌がらせみたいなことばっかりしてきたし、性格悪いとか思われてるんだろうけどさ」


 自覚有るならやめろよ性悪。

 どうせ筒抜けになっている心中でそう毒づき、俺は少しばかり彼の人柄への認識を改めた。


「あ、ちなみに、俺の従者になるって勧誘さ、今どう思ってくれてる?」


「どれだけ金を積まれてもフィヨルド様の側につくつもりは全くありません」


「そっか。よかった。――――――返答次第じゃ、俺は君のこと消してたからね?」


「ッ・・・・・・」


 え、どういうことですか、怖い。


「フィーリアを支える役割の人間が、浮気性な奴じゃ困るからね。その点、君はどんなに現状より待遇が良くても、俺の方に靡かなかった。少なくとも、主人への忠誠心はかなり大きい」


「ありがとうございます」


 抜き打ちテストやめろ。

 怖すぎてとりあえずお礼を言うくらいしかできない。え?つまり、俺がこのひと月の間に、少しでもフィヨルド側に移動したがっていたら、抹消されてたってこと?・・・・・・金銭目的だけで仕えてなくて本当に良かった。


「この毎朝の稽古だって観察だけじゃなくて、俺に特別扱いされてると思い込ませて、引き抜けるか試す目的もあったし・・・・・・結果として無理だったね。うん、意思が強くて結構だ」


 腕を胸の前で組んで、うんうん頷くフィヨルド。

 日常のいたるところに罠がしかけられていたのか。しかも選択を誤れば消されるという高性能の罠。やはり中途半端に安全な方が却って危ない。気を緩めれば殺されちゃうんじゃないだろうか、本当に。

 その端正な顔立ちに浮かぶ悪い笑み、俺にはそれが彼の素に見えてしまう。


「これからも、妹をよろしく頼むよ、スカイ君」


 それは一種の脅しだ。逆らえば命はないという類のもの。例え、端から逆らう気がなかったとしても、効果は絶大だ。


「・・・・・・お任せください」


 あれ?これ生涯付き従わないと殺されちゃうんじゃないか・・・・・・?

 頭ではそう考えつつも、俺は妹を想う彼の心に、少しばかり胸を温かくするのだった。

構想をメモっていたものを見返してみたのと、現在投稿していた話数を見返してみたら、

僕「あれ、これやっぱハイファンより異世界恋愛の方がジャンル合ってね・・・・・・?」

と考え直し始めた。まだ微妙なラインだし、変更はしない。いや、しようかな。悩みます。

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