救世種Ⅲ
全身の痛みが数年分の運動を否定した。
つまり、筋肉痛である。
「足が重い」
これはライヴも同じようで。
彼は毎日トレーニングをしているリリフと違い週に2回程度をしているだけだったため疲労は、リリフの倍以上に見えた。
「いっ·····、いこうぜ····。」
この試験(?)には時間に制限をつけられておらず戻ってくることが条件だった。
なので、今は無理をする必要はなかったが、昨日の竜の咆哮の件があったため移動するのか、しないのかの判断は、それなりに重要なことだった。
お互い疲労のレベルは過去最高クラスだろうな···。
「ライヴ、調子はどれぐらいいいの?」
ライヴは足を擦り
「最悪だな····。」
笑って見せたが、やせ我慢にしか見えなかった。
「ライヴ···無理はいけない今日は歩こう。」
ライヴは少し悔しいような顔をしていた。
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リリンは、どうしているのだろう。
ふと不安に思った。
「ねぇ··ライヴ、リリン達も僕たちのようにこうして、無事でいると思う?」
「なんだよ、突然。」
「昨日の、竜みたいに、ここは少しだけ変だからさ···。」
「大丈夫だろ、あいつのペアは、サクラなんだから。どうせ、サクラなら竜とかでも晩飯とか言って食ってそうだし」
「それもそうだね。」
結局歩いても、全く近づいたように感じられなかった。
果たして、この道があっているのかさえよくわからない。
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馬車は、”始まりの樹”跡の逆方向にいっていた。
それが、唯一の手がかりだ。
つまり、”始まりの樹”跡に進んでいけば、学校に着くことができる。
ただ、それはアバウトかつ危険であり。無事帰還するには、詳細な地形情報を常に集めて進まなければならない。
本来ならば、道路や舗装のなされているところをたどれば戻れるだろう。
しかし、馬車は道から外れたところを走り、人っ子一人いないところに下ろされた状態では、いまどこかを判断するのは困難なのだ。
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「今日は休もう」
まだ日も昇っていたし歩けるならば歩いた方がいいのだろうが、食料確保や、周辺の安全確保、できれば詳細な位置を知りたかったためリリフは提案した。
「そうだな」
ライヴは、それを察してくれたようで、すんなりと了承してくれた。
「にしてもよ、こんな時間がかかる授業やってなんになるんだろうな?」
「さあ···?長老と一緒にいた人を見る限り、軍人とかだろうし連合軍の選別とかかなぁ····。」
「じゃあよ、何で模擬戦とかにしないんだろうな」
「それは、確かに···。」
「わかんねぇことばっかてことか」
「とりあえず、太陽の位置とか山の形とか見るからに、ここは、学校から歩いて2日くらいの距離だね」
「お前、地図丸覚えでもしてるのか?」
ライヴは、驚きと疑いの顔で聞いてきた。
「いやいや、あそこの山の形とか、地図で見た気がするし。」
「はぁん、およそ17.28lonってことか」
「そうなるよね」
「一日中歩いて8.64lon進むってのも無理だけどな。」
4日以上かかる絶望的距離に、二人はその日の疲れが一気に来たようなショックな顔をして見せた。