救世主 Ⅱ
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「おはよう、ライヴ」
「おっす、リリフ」
「おはよう、ライライ」
「あっ、リリンも一緒か」
「なによ、そのついで感」
リリンはほっぺを膨らませた
「そうだ、リリフ···噂なんだけどよ」
ライヴは頭を貸せとジェスチャーをしてきた。
「なに?」
「今日、族長さんが体育の視察来るらしいぜ」
「視察ってこと?」
「ああ、その線が強いだろうな」
「じゃあ···頑張らないとな」
「そういや、おまえ近衛希望だったけ」
「まだ、悩んでるけどね」
二人でヒソヒソと話しているのを横から眺めていただけのリリンは、
「な~んの話をしているの?」
と、顔は笑ってはいるものの、どこか怒っている感じをさせながら聞いてきた。
「いや、ちょっとな」
とライヴが誤魔化したが、リリンはちょっとだけ不満そうに見えた。しかし、
「ま、いいけど」
と、答えこの会話に深く追求してくることはなかった。
セーフ·····。リリンには軍隊に行きたいなんて言えないからな。
リリフの額には少しの冷や汗が見られた。
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「ライヴ···そういやさ、将来なにしたいの?」
「その話今するか?」
と、ライヴは苦しそうに言った。
「確かに今はキツいね·····後で聞くよ」
「OK ·····それよりも、後どれぐらい走りゃいいんだ?」
「後······、2時間くらいかな」
リリフは、可能性として2時間以上かかることも考え答えた
「Oh······ボク死ンジャウヨ」
「まぁ···かれこれ、3時間も走ってるもんね」
「もしや···族長様は鬼か悪魔か、それに似た何かか?」
「洒落になってないよ」
などと、いっていたリリフだったが
何せ、ここ、馬使っても3時間以上かかったからな····。
と、思ってしまい、青ざめていた。
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「今日はここで野宿だな···」
ライヴは、ため息のように吐き捨てた。
「そうだね····結局9時間走ったのかな?」
「まさか、授業を全部無くすなんてな」
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ホームルームが行われているはずの時間には、なぜか、担任がいなかった。
代わりに、小さいながらも熊のようなオーラを放つ老人がいた。
「今からペアを組んで馬車で移動し、そこから、ここまで戻ってきてもらう!
無事帰って来るかは、貴様ら次第じゃ。」
老人は、それだけを言い、次の言葉を後ろの軍服を着た25~35才ぐらいの男性に話を任せた。
「それでは···説明を始める。これから君たちには、ここからそこそこ遠いところに行ってもらう。」
彼は重々しくそう告げた。
「ペアは自由だ。·····では、行動開始せよ!」
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と、いうことがあり今に至っているのだ。
また、他のペアも同じように遠いどこかにいるはずである。
「女子も参加とは、鬼畜極まりないな」
「まぁ···僕たちの種はそうでもしないといけないからね」
「俺ら、混色のなかでも超希少種だからな。」
「まぁ···そんなこと言っても仕方ないよ。···とりあえず今日は休もう」
「ああ、そうだな」
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だいたい2時間は寝ただろうか····。
眠った感覚が全くない。
まさか、野宿の場所が竜のすみかの近くだとは考えていなかった。
竜の咆哮が聞こえたら生物は絶対にその場所を離れる。たとえ、どんなに上位の種であろうとだ。
実に簡単な理由だそこにいた種は、根絶やしにされるからだ。
「まさか、寝てからすぐに咆哮が聞こえてくるとはな。」
「つくづくついてないね··僕たち。」
「音の大きさからして、あの山の辺りだろうな」
と、ライヴはここから30分もかからない位置にあるであろう、山を指差した。
「なかなか近いね····。」
「とにかく、今はあれが見えなくなるまで走るぞ。」
「うん」
幸いにもその山は進行方向にはなかったため安全かつ目的地に近づけるルートで離れることができた。
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「にしても奴らが活動するのは日の出から日没までじゃねえのかよ?」
「それは確かに····」
竜の活動は基本、日の出ている間だだけで、何かに起こされるようなことがない限りこの時間帯は、"始まりの樹"付近以外に生息するものを除いて絶対に休息を取っている。
声もオーラすらも感じ取れないほどに。
そんな疑問を抱きながら二人は眠った。