救世種 Ⅰ
「なぁ、アニメってさぁ」
「ん、どうした?」
「おかしいと思わねぇか?」
「何がだよ?」
「あいつら普通に髪の色とか目の色とかあり得ないような色してるじゃんかよ」
「もしかして····。おまえ髪染めたいの?」
「別にそういう訳じゃねぇけどよ」
「ならさ、染めるなら何色がいいよ?」
「やっぱり俺は赤だな」
「おいおい、そんなことしたら長老だけでなく皆からも嫌われるぞ」
「でもよ大戦の時はサラマンダーとエフリートの独壇場だっただろ」
「あれは青の連中が参加してなかったろ」
「まぁそうだな·····。おい、そんなことよりさ昨日の····」
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"始まりの樹"が崩壊してからというものは、赤・青・緑・銀・黄・金・黒・混色の全種族が力を一気に失い、覇権争いによる大戦が幾度となく起きた。
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「この子の名前は····リリフ」
「女の子のような名前だけどいいのかい?」
「あなただって言えたものじゃないでしょ?」
「う··うんでも、良い子に育ってほしいもんだ」
「育つわよ。だってあなたと私の子供だもの一族の誇りのような存在になるわよ。きっと」
「そうだな」
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リリフ3才
「いい?リリフ」
「うん、ママ」
「それ」
彼女は柔らかそうなボールを優しく投げた
「きたよきた」
リリフは落下点に走る
「とったよ、ママ」
リリフは自慢げに言った
「すごいわ、さすがよリリフ。パパに誉めてもらいましょ」
彼女はリリフの頭を優しく撫でた
「うん!」
リリフも嬉しそうに答えた
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リリフ15才
「行ってきます、母さん」
リリフは優しく扉を閉め施錠をした。
「やぁ、リーくん」
ポニーテールの女性は玄関前でリリフを待っているようだった。
「おはよう。リリン」
「うん、おはよう」
リリンはリリフの幼なじみで仲がよかった
「じゃあ、行こうか」
「うん!」
「リーくん」
「なに?」
「昨日の数学の課題やって来た?」
「もしかしてリリンまたやってきてないの?」
「お主エスパーか?」
「さすがに10年以上も一緒だしね」
「話が早いと言うのは助かりますなー」
リリンは手の平をこちらに向けて出した
「ダメだよ、いい加減に自分でやりなよ」
「つれませんなー」
リリンは唇を尖らせて不服さをアピールした。
「それよりも、今日の地理発表だよね?」
「うん、そうだね!」
「自信あるの?」
「もちのろんですよ。·····リーくんは?」
「····うん、ちょっと内容が足りないかなって思ってるんだ」
リリフは肩をガックリと落としながら言った。
「リーくん····大丈夫だよ!」
「でも、"始まりの樹"についての記述なんて僕たちの地域には残ってないから、間違ったこと言わないか心配なんだ」
「いいの、リーくんにも少しは出来ないことがある。···それだけのことだもん」
「そっか、リリンもたまにいいこと言うね」
「そ、そっかなー」
リリンの頬の色が桃色から少し濃くなった
「行こうか」
「うん」