1-3 神様
特に書くことも無い前書きを毎回埋める意味#とは
「――というわけなんだ」
「わかりました。嘘をつくなら私にも考えがあります」
「まってまって!!嘘じゃないから!今話した内容に嘘も偽りも無いから!!」
俺が全裸でいる理由――まぁ転生の経緯や神様のことなどをかいつまんで話したのだがやはりというかなんというか、信じて貰えなかった。
そりゃ、いきなりこんな荒唐無稽な話をされて信じろって方が無理だとは思うよ?でも世界ってのは理不尽なもんで、それが真実なんだからしょうがないじゃないか。
ちなみにと言ってはなんだが、今の俺は全裸では無い。リリアにシーツ的なモノを貰い、それで体を隠している。その下は当然全裸だ。
最初は服を貸すなんて言われたが、さすがに女物の服を着るわけにもいかず(まずサイズが合わないが)しかたなくといった感じでこのシーツを貰った。
いつか洗って返そうと思っていたら「それ、もう使わないのであげます」とのこと。
……絶対俺が使ったからですよね。
「証拠も何も無いのにそんな話信じられませんよ。大体、そのアルエッタという名の神様なんて聞いたことが無いです」
「え、マジで」
「マジです」
なんということでしょう。アルエッタはこの世界には存在しない神様のようです。
本人も橋渡しの神だと言っていたし、あまり有名な神様じゃないのかもしれない。
もしくは自称神様という可能性も。
「ううむ…。嘘は言っていないんだが…。いきなりこんな突拍子もない話をされて信じろって方が無理があるか…」
困ったものだ。
今のミッションは俺が全裸でいる理由をリリアに納得してもらうこと。
転生したら神様のミスで全裸で転生しましたって言っても信じて貰えなかったけどね!
事実は小説よりも奇なりって言葉に始めて共感したが、ここにはそんな言葉は無いらしくリリアに言っても「なんですかその小説ってのは。バカにしてるんですか」とあきれたように返されるだけだった。
真実を語っても信じて貰えないのでは仕方ない。ここは俺の完璧なトーク技術で適当にでっち上げてしまおう。
「本当はただ全裸で町を練り歩いてみたかっただ――」
「次は無いです」
「ごめんなさい冗談なんです本当警察だけは勘弁してください」
日本式DOGEZAで謝る。
そのフォームは恐らく審査員が居れば満場一致で10点をたたき出す程に美しかっただろう。今までで一番綺麗なDOGEZAをしたと自分でも感じていた。
……あまり感じたくない事だな。
「はぁ……。信じられないですけど、あなたの話は本当なのですね?」
「はい。私椎名春樹は嘘偽りを申しておりません」
「そのかしこまった口調がうざいです」
ハッキリと言う子だな!!
ま、まぁまだ疑われているようではあるが、一応は信じて貰えたってことでいいのかな?いいんだよな?
「あなたの話が本当だとしたら、神様とやらも無責任なものですね。『君にしか出来ないことだー』なんて言っておきながら裸で送り出してそのまま放置して逃げるだなんて」
ちなみにだが、アルエッタのことについてだけ多少盛って話た。
事実を捻じ曲げてはいないし、アイツの評判がこの世界で悪く広まればいいなんてことぜんっぜん考えてないよ?
「そうだよな。そう思うよな!!あのエセ神は全裸の俺を一人にして見捨てて逃げたんだ。今度会ったら一発――」
「心外だな。僕は君を見捨てたりなんてしないよ」
不意に後ろから声をかけられ、恐る恐る振り向く
別に今は全裸でも無いのだ。もっと堂々としてもいいのになぜだろうか、この姿を誰かに見られるとそわそわす――
俺は声の主を確認して、知り合いだと認識した上で近づき
「おや?なんだいなんだい椎名春樹君。僕が居ない間に女の子と仲良くなっているとはなかなかのやり手だね。この調子なら美少女パーティーでぐびっ!!」
全力のグーをお見舞いした。
「き、君!!神様に手を挙げたな!?どうなっても知らないからな!!天罰で君の行く先々のトイレが故障中になるようにしてやる!」
「その地味な嫌がらせはやめろ!それに俺は最悪トイレじゃ無くても用をたせるから問題ないんだよ!!フハハハハハ!!」
「なんだいそれは!!君は主人公だろう!?主人公だったらもっと主人公らしく、神を敬って助言を求めたり、祈りを捧げたりしてくれよ!!何なんだ君はいきなり再登場した神様を殴り飛ばした挙句に堂々とタチション宣言!!それにその笑い方だよ、まるで悪役じゃないか!!僕は君を魔王軍に入れるために転生させたんじゃないぞ!!」
「言いたい放題言いやがってこの野郎!!主人公だったら主人公らしくしろだ?神を敬えだ?だったらまずは仕事しろ!お前が俺を主人公にしてくれよ!なんだよいきなり全裸で町中に登場って!!そんな主人公見たことねぇよ!!普通は生前の服来てたり、世界に合った感じの服を着せるもんだろ!!俺にはそれすらなかったんだぞ!?つーかお前口調変わってるじゃん!最初のあの神様っぽい話方はどこいったんですかぁ!?おい聞いてんのか!あ、こら顔背けんなこの野郎!!」
俺がグーをお見舞いした相手。アルエッタとの言い合いは十分ほど続いた。
まだ続きますけど次回は時間が飽きます。楽しんでくれる方が一人でもいればうれしい限りでありマス