プロローグ
こんにちわ。黒咲と言うものです。こういったモノを書くのは初めてなので、至らぬ点ばかりになると思いますが、自身のやる気の続く限り頑張らせていただきます。もし一人でも、自分の作品を好いてくれる方がいればいいなと、そう思っております。
週一か週二位のスローペースでの更新になるかと思いますが、よろしくお願いします
――この世界は理不尽だ。
なんて言う奴は五万と居るが、理不尽なのは人間の方だ。
真面目な人間が事故や病死するのも世界の理不尽だというが、そんなことは無いだろう。
いちいちそんなことで理不尽だのなんだの喚き散らしていたら、俺たち人間が食事として取っている動物はどうなる?
牛や豚、鳥といった動物。植物にだって意識はあるかもしれない。そういう捕食関係にある動物たちが、人間が生きていくため殺され、調理され、食べられる。
それも世界が理不尽だからだ、とでも言うのか?
違うな。十中八九こう答える。
自然の摂理だ。運命だ。と
自分達のことは棚に上げ、他の生物たちの意見は聞かない。動物が話すわけが無い。そんなことを考えることはない、と。
何も動物たちだけに言えることではない。人と人の間でも起こり得ることだ。
ニュースで取り上げられる殺人事件。被害者は加害者に対し理不尽だ、と思うだろう。だが、加害者は理不尽だなどと思わない。
恨みがあったとしても、ただの快楽殺人だったにしても、金目当ての殺人だったとしても。
そういう運命だったのだ。運が悪かったのだ。と
何もこれは加害者だけに言えることではない。被害者の親族や親しい人等は理不尽だ、なぜ彼が殺されなければならないんだ。と嘆くだろう。
だが、それは小さな輪の中だけだ。
大きな輪で見れば、かわいそうに、運が悪かったわね。これで終わる。
自分が当事者にならなければ、それでいい。
人間って言うのは実に身勝手で、理不尽な生き物だ。
―――世界を理不尽なものにしているのは、人間だ―――
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俺の名前は椎名春樹。運が悪い以外は普通の高校生だ。
どのくらい運が悪いかというと、自販機には二分の一の確率で金を呑まれ、外を歩けば鳥にフンをかけられ、犬のウ〇コを踏み、前日が快晴にも関わらず車に水をかけられ。
挙げれば切がない。自分で言ってて悲しくなってくる。
そんな不幸に好かれている俺でも、今までは命にかかわるような不幸は無かったのだが
現在、銀行強盗に人質として捕らえられている。
おまけに犯人たちの会話から察するに、俺は後で殺されるみたいだ。
今回ばかりは自分の運の無さを本気で呪ってしまいそうだ。
運命を呪うあまり世界の理不尽さについて考えてしまうレベルだ。
たまたま昼過ぎまで寝てしまい学校に行く気がなくなり
たまたま家に食料が無く
たまたま財布に金が無く
たまたま母親が外出中で
たまたま金を下ろしに行った銀行で銀行強盗にあい
たまたま近くに居た俺が人質として捕らえられた。
不幸に不幸が重なり、大きな不幸を生んだというところか。
もし、俺が朝起きていたら
もし、家に食料がおいてあったら
もし、財布に少しでも金を入れていたら
もし、母親が家にいたなら
もし、違う銀行で金を下ろしていたら
もし、銀行強盗から離れた位置にいたら
今更ではあるが、今日の行動の一つでも違っていたら、こんな事態にはならなかったんだ。
世界の理不尽さについて、散々偉そうに語ったが、言わせてほしい。
この世界は、理不尽だ
やがて、車が森の中に入り、森が深くなった所で止まる。
恐らく、ここが俺の墓場になるのだろう。
犯人の一人が俺のそばにやってくる。その右手には、黒い何かが握られていた。
「悪く思わないでくれよ、お前が生きていると、俺たちも捕まっちまう可能性が高くなるんだ。だから、運が悪かったと思って、俺たちのために死んでくれや」
なんと身勝手な奴らだ、なんと理不尽な奴らだ。
こういう奴らがいるから、世界は理不尽なんだ。
男が俺の眉間にピタリとその黒い何かを当て、指を動かす。その動作はいやにゆっくりに見え、これから俺が死に逝くことを嫌でも感じさせられた。
今やっと、世界は理不尽だという気持ちが、わかった。
――もし、生まれ変われるならば
こんな理不尽な世界には生まれたくは無いな
パァン。と渇いた音がすると同時
俺の意識は、闇の中に落ちていった―――