第6.5話 闖入者
6話に入れようと思ったのですが、時間がなく分けました。
時刻は、1:00
多田がアニメに備え、ビールやつまみの準備、トイレにいたりする頃。
異世界では、月が雲に隠れ、森には濃密な闇の気配が漂っていた。
闇を見透かす動物のような目をもってしないと分からない闇の中を、
二人組みが身を低くして、何者かから隠れるように移動している。
「あっ」
バキボキ、ドッと一人が何かに躓いたようだ。
「大丈夫ですか? ケガないですか? 明かり点ける・・・ですか?」
「点けないで! 私なら大丈夫ですから・・・」
駆け寄る一人は、言葉尻こそたどたどしいが、張りのある若い声。
躓いた一人は、鳥が囀るような軽く、どこかあどけなさが残る声。
「今日・・・ここまでにするですか? そうします」
「・・・・・・ええっ。そうしましょう。ここまで暗ければあちらも追っては来れないでしょうし」
「あそこ-----洞窟ですか」
「・・・・・・そうなのかしら、ごめんなさい。私には見えないわ」
「ふふん、目。一族で一番。 王国でも一番ですか?」
「ふふっ、ええっきっとそうよ」
静かに笑い、二人組みが洞窟へと近づと同時、雲が風で流された。
月明かりが差し込み、辺りを照らす。
「これは、何かしら。鉄の・・・・・・大きな鍋?」
「触っちゃいけないです! 危険なものかもです・・・か」
ドラム缶辺りに群がる二つの薄汚れたぼろきれ、二人組みだ。
二人ともフードを目深くかぶり、相貌は窺い知れないが、体格さはかなりあった。
張りのある若い声の主は、160cmを超えるくらなのに対して、
もう一方の、どこかあどけなさが残る声の主は、120cm程で、声どおり子供なのかもしれない。
どこかあどけなさが残る声のほうが、洞窟を指差す。
「あの青い布? はなにかしら、見たこと無い材質のようだけど」
「触ってみるですか? 魔量は感じないです・・・か。帝国のもの、ドラゴンのもの、とも違うですか」
「ドラゴンのものではないと、思いますわ。それにここは冥府の暗黒竜のテリトリーのはず。青きものは置かないと思いますわ」
「ふ~ん。軽いですね。滑らかなような繊維質、麻とも違うですか。これは、すごい、ですか?!」
張りのある若い声が、先ほどまで声を潜めていたというのに、思わず大きな声を上げてしまう。
青い布?を退けた先は、壁一面に鈍い黒色の輝きが覆っていたためだ。
「これは・・・・・・まさか、黒竜石ですの?」
黒き竜の眷属の体の一部が、風化した時、結晶化され生まれると言われる莫大な魔力を宿した石。
こぶし大ともなれば、かの王国の最高級高級宿に1年は優に暮らせるといわれるほどの価値があるとされる。
それが、さほど広くない空間とは言え、壁一面がそうならどれほど財を生むのか。
床は、残念ながら、黒竜石ではないようだが、黒檀のような輝きを放っており、こちらもそれなりの価値がありそうだ。
「青い布・・・・・・奥には、藁?があります。人の手・・・はいってるですか?」
「ええっ・・・たぶん。いいえ、きっとそうですわね。祖様の眷属でもないでしょうね。藁は兎も角、ここでは少々手ざまでしょうし」
「何かしらの亜人種ですか?」
「う~ん。どうかしら。ゴブリンなら十分なのかもしれないですけど、彼らは集団で行動しますわ」
「足跡も、・・・においもないですか? 冒険者が仮の拠点にしているとか・・・ですか?」
「それかもしませんですわ。先ほどの鉄の大鍋に水が残っていましたわ」
「では、今夜はここを使わせてもらうです! 入り口が一つ。囲まれたら終わりですが、なんとかします・・・です」
そういって、ぼろきれのように薄汚れたマントの隙間、鈍い銀色の輝きを放つ柄を覗かせる。
「はい・・・期待しております。ですわ」
そうして、二人組みは藁に潜り込んだ。
森の木に寄りかかっての雑魚寝とは違い、足が伸ばせ、やわらかすぎず、硬すぎないベットのような感触。
また昼間太陽に当たっていたのだろう。藁はほんのりと暖かく、かすかにお日様の匂いを感じる。
あたりを警戒しなくては、・・・そんなことを思いながらも、疲れきった体に、久しぶりの快適な寝どころの誘惑には耐え切れず。二人組みは泥のように眠った。




