第6話 オタ社畜の休日
藁で簡易ベットを作り終えた後、
ゲート{転移/異世界門}にて自宅へと戻ってきた。
シャワーを浴び、冷蔵庫からビールを取り出す。
「労働の後の一杯は格別だぜ」
今日は朝から本当によく動いた。
「もう何もする気力もおきねー」
ベットへとダイブし、毛布をくしゃくしゃにする。
平日仕事をしていると、家事というのは溜まっていくわけで、
本当なら、洗濯に、掃除、ゴミだし、アイロンがけ、一週間分の買出しなど様々だ。
今日は色々と動き回り、冒険までしたのだ。
明日やればいいだろう、そんな堕落へと向かう魔法の言葉をつぶやきつつ、
リモコンへと手を伸ばす。
オタ社畜の休日は、家事のほかにやらなければならないことがある。
それは、録画したアニメの消化だ!!!
「アニメはリアルタイムで見るものだ!!」
と、思っていた時期が僕にもありました。
20代前半までは割かし、次の日の仕事なんて考えずに深夜2:30スタートのアニメを見てたりもしたが、
後半にさしかかると、さすがに持たず、1:00くらいのになり、
30になる頃には、アニメは一週間分録画して、週末まとめてみるものになった。
今期は、10程視聴していて、わりかし見てるほうだ。
ビールを飲みつつ、ゆっくり見ていくことにした。
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途中途中、スーパーに行ったり、バラエティ番組やネットサーフィンをはさみつつ、
録画したアニメは全部、視聴が終わった。
時刻は、1:25
いつもなら、とっくに寝ている時間だが、明日(といっても今日だが)は日曜日昼間で寝ていても問題ないのだ。
それに、今の俺にとってこれほど、見なくてはならないアニメはないのだ!!
「個人ブログでありながら、累計1億PVを突破した物語、待望のアニメ化!!」
CMが始まった。
「いつか、俺たちで山から川、海へとつながる村を作ろうぜ」
異世界召喚「農・林・水」参上~現代知識を生かして池消地産の村を作ることにした~
そう誓い合った三人の仲良し組みが、それぞれ農業・林業・水産業を大学で専攻するも、
そう希望通りの就職先がうまく見つからず、それぞれが別の職業に就いていた。
偶然三人組で飲んでいた居酒屋が火事に見舞われ、あやうく死ぬところを謎の魔方陣が現れ、異世界へと転移してたのだ!
王宮では、どうやら勇者を召喚するための儀式を行っていたようだが、当然三人組には剣も魔法の力も知恵もない。あるのは、農業などの知識だけだ。
それに落胆した王は、消沈しつつも、召喚者を無碍にも出来ないのか、「あ、そう。それなら村長として開拓村を手伝ってもらえますかね?」といった具合で三人組で村に行くことへ。
荒れた大地に、森に犇くモンスター、海には海賊という劣悪な環境の中、
「「「村を作ろう」」」」
誰ともなしに、唱和する三人。
三人組の現代知識を生かした開拓が今始まる。
毎週土曜1:30、他----------絶賛好評中。
そう、これは異世界物のアニメ、内政よりのほうだ。
今までの俺なら、異世界物のアニメは、ファンタジー物としてゲームのように世界感に浸り楽しむだけのものだったが、今は違う!!
俺も異世界にいけるのだ!
いうならば、これは諸先輩方の知識や行動を勉強しているのだ!
だって、実際異世界人とかどう接していいか分からないじゃん?
完全に一緒とまでは行かなくとも、アニメではこうしていたなどの知識があるのとないとでは大きな違いなるだろう。
それに、異世界でどう交流していくか、どう発展させていくかは、こちらの秘密基地にもいい刺激になる。
このアニメの影響で農業とかしちゃおうかな~と思ったりもする。
ほんと、アニメって勉強になるな!!!
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「ふぁぁああああああ」
時刻は、2:00
可愛くもないおっさんないびきをかく。
さすがに、眠い。
さっさと歯を磨くが、歯を磨いてるうちに寝てしまいそうだ。
思ったよりも、体は疲れていたらしい。
口をゆすぎ、コップに水を注ぎ、飲み干す。
息をはくが、ヤバイ・・・目も開けられなくなってきたが、今日は藁ベッドで寝ると決めていたのだ!
そう、あの主人公たちのように!!
唱えることもなく、ゲート{転移/異世界門}が目の前に出現する。
あくびをかみ殺しつつ、居間から居間に移動する気安さでゲート{転移/異世界門}をくぐり、異世界へと転移する。
異世界は、とても暗かった。
昼間は、晴天だったが、どうやら、今夜は曇り気味らしい。
月が雲に隠れてしまうと、真っ暗だ。
まぁ、寝るだけだから問題はないけどね!
スマホのあかりを懐中電灯代わりにして、足元を照らす。
黒く鈍い光を反射するタイル。
ペタペタと、素足に当たって、冷たい感触が伝わってくる。
サンダルを用意したほうがいいな~。
光に藁が見えてきて、その上に寝転がる。
やわらかすぎず、硬すぎずな感触に、枯れ草の穂先が多少チクチクするのがこそばゆい。
それに、寝転がりをうつとあたる、暖かく包み込むようなやわらかい感触。
嗅げば、ほんのりとミルクを髣髴させる甘い香り。
やわらかくも弾力があり、形をぐにゃりと変える。
感触を楽しむように、
香りを楽しむように、
なんどとなく頬ずりする。
藁ベットがこんなにも、心地よいとは・・・・・・これは癖になりそうだ。
眠気に思考力が奪われつつ、
「それ」を枕に、多田は深い眠りに落ちていった。




