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ログイン一日目<買い物/ギルド>

よくよく考えると主人公の外見を書いていない気がする。

 街に戻った僕は、ひとまず手に入れたアイテムをどうにかしようと露天通りに行ってみた。

 露天通り──その名の通りに露天商のものらしい屋台やテントが所狭しと並んでいて、その中にはプレイヤーもいればNPCもいる。賑わっているところもあるが、それはNPCが多い気がする。

 そう言えばこのゲームは私が貰った端末と同時に始まったばかりだったらしいし、体験版からの引き継ぎの人以外は遊んでいる時間は私とそんなに変わらないんだっけ。だからもしかしたら一部のプレイヤー以外は現在はNPCよりも色々と低いのかもしれない。

 だとしたら結構ゲーム内格差社会みたいなのも出来たりするのかも……嫌だなぁ。

 それはそうと、すっごい人混みだなぁ。

 もう本当に気が滅入る。人酔いし易いからあんまりこういうところは来たくないんだよね。

 しょうがないと、あんまり売れていなさそうな露天へと足を運んだ。

 そこは小さな屋台を使っていて、売っているものはどうやらアクセサリーのようだ。

 その全てが可愛らしい猫柄で、ちょっとキュンとしたのはしょうがない。だって可愛いし、というか猫派だし。犬も愛してるけど。と言うか動物ストラップシリーズは卑怯。

 よし、もし買い取って貰えたら一つ買ってみよう。


「すみません、此処って買い取りとかしてもらえますか」

「え? ──あっ! は、はい可能です!」


 何故か目の辺りは奇妙な紋様の書かれた紙で隠している……女の子? まあ、ともかく店員さんに適当に手に入れたアイテムを渡してみる。全部ゴブリン系のアイテムで、内訳の殆どが牙ばかりで、2個くらいが頭蓋骨である。

 

「ゴブリンの牙と頭蓋骨ですか」

「あ、やっぱりゴミは売れなかったり?」

「い、いえ、用途があるので全然大丈夫です。──そ、その、全部合わせて20Gでもいいですか?」


 ──まさか20Gにもなるとは。

 説明文が基本的にゴミだったり、肥料だったりしたから精々が一つ1Gくらいかと思ってたよ。

 父が聖典(バイブル)と宣う竜の冒険シリーズの馬糞みたいなものと同レベルかと思ってた。──ちなみにアレ、一番最初のシリーズは父の世代でももう販売していないはずなのに、どうして箱の状態で保存してるんだろう?

 それはそうと念願のお金である。初期金額が500Gあって、りんご二つで20G使ったので合計500G。

 目の前のアクセサリーは一つ500G。……一つしか買えないけど買えるから良いや。

 

「うん、じゃあお願いします」

「あ、はい! ありがとうございます」

「ついでにこの──猫の形をした鈴貰える?」


 紫色の紐に括られた小さな鈴。材料は陶器だと思うけど、形が猫の顔になっている。口の形をした穴の中には小さな玉があって、それが動く度にチリンチリンと愛らしい音を鳴らしているソレがなんとも気に入った。


「500Gになります」

「じゃあこれでお願いします」

「──確かに頂きました」


 受け取ったソレを早速刀の柄頭に付ける。

 元々紐が付けられている場所なので別段難しい事でもない。むしろ外す手間がないだけ楽である。

 そして、取り付けた途端、錆刀に妙な愛着が湧いてきた。なんというか、今までは貰い物だったのだけど、この瞬間に自分の物になったような、そんな感じ。

 こう、傘に名前書いたりするのとおんなじ感じなんだよね。


「うん、気に入った。また買いに来るかもしれないからその時はよろしくね」

「あ、あの──初めてのお客様なのでこちらも、よければ」


 ……あ、初めてだったのか。

 それはそうと、受け取ったのはイヤリングだった。

 イメージしたのは月を飛び越える猫だろう、精巧に作られたソレは本当に愛らしく、どこか力強さも感じる程だ。

 見た目の愛らしさや精巧さもさることながら、それだけではなくて、──これは装備品だった。



◆月跳ねる猫【猫屋お得意様目印】

SPD+20 破壊不可能 重量+0 



 ……SPD+20って結構凄いんじゃない?

 思わずマジマジと見て、思わずそれを身につける。初めて付けるアクセサリーは、ちょっとまだ慣れてないせいか違和感があるけど、多分、その内慣れる筈。


「本当にもらっていいの?」

「は、はい」

「そっか、ありがとう」

「い、いえ──またのお越しをお待ちしてます」

「こっちもまた楽しみにしてるよ、またね」


 そうして、頭を下げた少女に手を振ると──風が吹いた。

 目に風が入って少しだけ閉じた目を開けた時、そこには何もなかった。

 屋台も、商品も、あの少女さえも、──何にもなくなっていた。

 ただ、錆刀につけた鈴と、耳に付いているイヤリングだけは残っていた。

 僕は、化かされたのだろうか──?



 ☓☓☓☓☓



 買い物の後、僕は鈴が鳴るのを聞きながら耳元のイヤリングを弄っていた。

 生まれて初めてのお洒落である。オシャンティである。ちょっとだけ大人になった気分だ。

 気分がいいのでふらりと街中で最も賑わっている、と言うか、プレイヤーが多い場所を調べてそちらへと行ってみる事にした。

 そこは街の中央広場の近くに存在する、西部劇にでも出てきそうな大きな酒場のようなその施設──まあ、所謂ギルドと呼ばれる場所である。

 此処は僕達のようなプレイヤー、NPC関係なく、登録することで依頼という形で仕事を斡旋してもらえるのだ。モンスター討伐や素材集め等が主な仕事らしいけど、たまに街の人達の手伝いとかもあるらしい。

 どんな場所だろうと中に入ってみると、そこはまさしく酒場である。奥に3つのカウンターに長蛇の列が出来ているものの、駄弁る大人の集団や、酒を飲んで酔いつぶれる男に、下品な話で盛り上がる女、パーティらしい集団の協調性のなさと言ったらもう笑うしかない。

 しかしまあ、なんというか、その……、


「……人が一杯だなぁ」


 気が滅入る。人混み苦手なんだよなぁ。  

 それでもまあ、とりあえずは受付にいくとしよう。──えっと、どうやら登録は一番右側のカウンターらしい。

 受付にいたのは美人な受付嬢──は左側二人で、僕が向かった先にいたのはパイプ咥えて新聞読んでる頭頂部がツルンとしたおっちゃんだった。ちょび髭が凄い印象的だ。


「あの、登録がしたいんですが」

「──らっしゃい。登録したいならそこに置いてある端末に触れてくれ。それで登録は終了だ」


 そう言って目線だけでカウンターの上に置いてある水晶球を指して、すぐさま新聞に視線を戻す。──説明も何もない。

 とりあえず触って、そこに自分のステータス情報を流すかどうかの確認に迷わずYESを選択して登録は終了した。


「これでいいですか?」

「おう、じゃあな」


 会話はこれで終わりらしい。……まあ、いいや。人と話すの好きなわけじゃないし。

 しかしまあ、せっかく登録したのだし、仕事を探してみましょうか。

 依頼書が貼ってあるボードの周辺にはやっぱり人が屯っている。その中を進んでいくのは正直きついところがあるけれど、それでも頑張りますか。



 ──ちゃんと並んで15分くらい。

 ようやく見えたボードにあるので僕が受けられそうなのは4つ。その中で街から出なくても良さそうな物を選ぶ。ゲームは連続で2時間まで、それが我が家のルールだからね。主に父が放置すると3日くらいぶっ通しでやるからいつの間にか家庭ルールになってたんだよなぁ。1時間だと泣くので妥協して2時間だったと知った時はたまげたよ。

 真ん中のカウンターに行き、そこで満面の笑みを浮かべている女性に手にとった依頼書を渡し、場所と本当に大丈夫かを効かれたので頑張るとだけ答えてそこを目指した。


 ──依頼内容は<庭の草むしり>

 依頼は東の住宅街のハズレにあるらしい、一人暮らしのおばあさんだ。

 依頼達成時に貰えるらしい金額は微々たるものだけれども、まあ、まだ初日だからゆっくりしたいからね。



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