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第8話

 部長と天原さんを残して部室を出た。隣には琥珀とマリン。

 暴走したら俺は確実に止めることはできない。どうしようかな。宇宙人が出てきそうな話をしなければいいのか。

「そういえばさ、マリンの本当の姿まだ見てないんだけど」

「ああ、待て待て。それは今こいつは疲れてるからダメみたいだ」

「ふーん、そうなんだ。じゃあ今度でいいや。そういえばマリンのクラスって面白い?」

 危ない危ない。即で宇宙人の話に持っていきやがった。巻き込まれるこっちの気にもなれよ。

「私のクラスはまあまあ面白いぞ。皆私を宇宙人だと信じてくれているようだ」

それは多分面白がってるだけだと思うけどな。自称宇宙人なんてそうそういない。

「へーそうなのか、よかったな。スイももう疑うのはやめなよ」

「何で俺に話を振るんだよ。そういう琥珀はどうなんだ。自分のクラス楽しいか?」

「当たり前だよ。すごい明るくていい人ばっかりのクラスだよ」

 皆それぞれ学校生活を楽しめているようだ。俺はクラスメイトに襲われそうになったあげく、少し格好いいセリフを言われて殺されそうになったけども。

 まあ話は逸らせた。

「さっきマリンさ、ゲーム作ってたみたいだけど、ソフトはどんなのを作るの?」

 あ、それは俺も気になる。ゲーム機本体がよくてもソフトがダメだと駄作になる。

「それはもう決まってる。伝説にもなっているパぺピルカの民と宇宙からエンシェント・パぺピルカ星を侵略しに現れた宇宙生物との戦い、通称『パぺピルカの戦い』をゲームにしようと思う。ほとんど史実に基づいたアクションゲームだ。これはもうバカ売れだな」

 待てよ、何だよ『パぺピルカの戦い』って。誰も知らねーよ。史実に基づこうが基づかまいが絶対フィクションだろ。それにバカ売れって売る気かよ、そのゲーム。

「面白そうだね、それ。できたら最初に私にやらせてよ。ゲームのタイトルは何?」

「『パぺピルカ戦記』にしようか『ウォー・オブ・パぺピルカ』にしようか迷ってるんだけども、琥珀とスイはどっちがいいと思う?」

 いや、どっちも大して変わらないと思うのだが……。どっちも微妙だし。

「『ウォー・オブ・パぺピルカ』がいいんじゃないかな?」

 即答? 琥珀、お前は絶対に英語の方が響きがいいからとか思っただろ。

「そうか、じゃあそれにしよう。何万本売れるかな?」

「すごい売れるよ。日本人は英語は格好いいと思ってしまうからね」

 やっぱりか。でも日本人全員が英語のタイトルが格好いいと思うとは思わないぞ。

 英語のタイトルや技の響きが格好いいと思うのは大抵が厨二病と呼ばれるやつらじゃないのか?

「ちょっと待て、そのゲーム完成したら本気で売る気なのか?」

「ああ、これで私の生活に不自由はなくなるんだ」

「でもさ、考えてみろよ。売るのなら何万台も用意しないといけないし、売れたなら売れたで続編とか色々作らないといけないし、税金とかも払わないといけないぞ」

 まあゲーム作る頭があるんだから機械作って量産すればいいだけの話なんだけどな。

 それよりも何でこんな話をしているんだろうか? 聞いててあんまり面白くないぞ、この話。

「そうなのか? それだったら面倒くさいな。じゃあ止める、売るのは止めて人研の皆の分だけ作って部室の中でやるとするよ。人間って思ってたより面白いな」

 無表情でそんなこと言われても対応に困る。しかも面倒くさいから止めるって。

「スイと琥珀はこの道を真っ直ぐ行くのか? 私はここを右に曲がるんだが」

「そうなのか? 俺達はここの道を真っ直ぐ行く」

「そうか、じゃあまた明日だな、スイ、琥珀」

「うん、また明日」

 右手を上げてブンブン手を振る琥珀に、軽く手を振ってからマリンは右の道へと歩いていった。

「じゃあスイ、帰ろうか」

「そうだな」

 俺と琥珀は再び歩き始めた。なんとか暴走を防げた。

 あれ以上突っ走られるとかなり危なかった。後はこいつと道が別れる時が来るまで耐えるだけだな。

「スイのクラスは面白いの?」

「ん? ああ、それなりには面白いよ。ちょっとクラスの男子全般が恐いけどな」

「そうなのか? それは危ない。悩みがあったらいつでも私に相談しなさい、スイ」

 琥珀は俺の前まで来て自信満々に言った。いや、天然バカに相談してもな……。

「うーん、琥珀に相談するのは少し心配だな」

 俺はそう言って腰に手を当てて胸を張っている琥珀の横を通り過ぎた。

 五歩くらい歩いただろうか。琥珀が来ないから後ろを見ると、両膝を地面につけてうなだれていた。

「スイは私を頼りにしていない、どうせ私は頼りにならないバカなんだ……うぅ」

 まさかそんなことでそこまで落ち込むとは。単純すぎるだろ。

 その前に、早くこいつを戻さないと。俺が公道で女の子を泣かせたみたいになる。

「今のは冗談だ。ほら、琥珀はすごい頼りになるから、今度相談するから」

「本当?」

 顔を上げた琥珀は何て言えばいいんだろうか、守ってあげたくなるようなオーラ? を体中から(主にその表情から)出している。何だこいつは? これが天然パワーか?

「じゃあさ、スイ。私が相談に乗ってあげたとして、結果どうなると思う?」

「えーと……、必死に相談に乗ってくれようとするその姿を見て和む」

「それじゃあ全然相談できてないよ。やっぱり私は頼りにならないんだ。もういいよ」

 琥珀はそう言うと、道を歩いて行った。

「おーい、そっち逆だぞー」

 疑いもせずに元来た道を歩きだしたから呼び止めると、本人もそれに気付いたらしく、少し頬を赤らめながら引き返してきた。その赤は夕日の赤とちょっとだけ似ていた。


 第一テーマ結果『怠惰は恐ろしい』いや、ホントに。

   

ひとまず、ここまでを第1章とします(あえて章分けしません)

第9話からを第2章としますが、驚愕の展開からスタートします。

さて、主人公はどうなるのやら。

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