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第5話

 俺はゆっくりと瞼を上へ上げた。どうやら俺はあのままここに倒れていたらしい。

立ち上がると首の辺りがまだ少し痛い。時計を見ると、俺が手刀を喰らってから三十分ほど経過していた。 

「まさか縮地を使うとは思わなかったな。全く反応できなかった。それにしても、咄嗟の行動とはいえ俺を盾にするかなあ、普通」

 ふとテーブルを見ると、マリンが突っ伏していた。

 なんてやつだ。まだやってるとは思わなかった。 

「おい、マリン。今日の部活はもう終わりだぞ」

 マリンはゆっくり立ち上がり、こっちを向いて言った。

「ここには今私とスイしかいないようだが桜と鏡花、それに琥珀はどこに行ったんだ?」

「さあ? 明日会った時に本人に直接聞くといい。それじゃあ俺は帰るから」

「うん、それじゃあ」

そう言うと、マリンは完全に上がりきってない手を左右にヒラヒラと振った。俺はその手をヒラヒラさせる動作に送られ、部室を後にした。

「枝葉の様子でも見に行こうかな?」

 テニスコートに行くと、まだ部活は終わってないようで、生徒達がラケットを振って汗を流していた。

 一年生はというと、コートにはいない。筋トレでもやらされてるのだろうか。入部当初は飛び抜けて上手くないと上級生の練習には参加できないらしい。

よく見ると、コートの中に枝葉がいた。これでテニスをする枝葉を見るのは二回目だけど、前回同様楽しそうにテニスをやっている。

どうやら男子と女子合同で練習しているようだ。ひとまず部活が終わるまで邪魔にならないようフェンス越しに見ていよう。

「あれ? 入部希望?」

 突然声をかけられ、驚いて後ろを振り返ると、ジャージでラケットを持った少女が立っていた。

「いえ、友達を待ってるだけですよ」

 この人多分先輩だろうけど、茶髪でショートヘアなんだが、左側の髪を一部三つ編みにしている。あまり見ない髪型だ。

 活発な印象もあるけど、年上の女性という雰囲気も出している。

「見たところ一年生だけど、一年生は今向こうでトレーニングしてるからいないよ?」

「大丈夫ですよ、ここで待ってますから」

「そう、てことはテニスに興味があって見学も兼ねてここにいるとか?」

「まあ興味はありますけどもう別の部活入っちゃいましたし、ただ待ってるだけですよ」

 そうやって部員の勧誘をするのか。少し勉強になりましたよ。

「ふーん、じゃあ枝葉ちゃん待ちかな?」

 この先輩、なかなか鋭い。ここで枝葉の名前が出たということはこの人が枝葉が仲良くなった先輩と見てもいいのかな?

「なるほど、この子が枝葉ちゃんが言ってた幼馴染みか。これは案外……」

 先輩は15㎝ほどの距離まで近づき、俺をまじまじと見つめていた。近い近い近いっ!

「明奈先輩、もう部活終わっちゃいますよ、……って何してるんですか!」

 そこにはさっきまでボールを打っていた枝葉が立っていた。

「ああ、枝葉ちゃん。今偶然枝葉ちゃんが前に話してた幼馴染みに出会ったから少し話をしていただけだよ。部活もう終わるの? 早く行かなくちゃね。じゃあね、幼馴染み君」

 俺に解せないあだ名を付けた先輩はコートへと走って行った。

「今日は待っててくれたんだね、じゃあ玄関の前で待っててくれる? 部活が終わったら着替えて行くから」

 そう言って枝葉もコートへと走って行った。

 俺が玄関に着いてから二十分ほど経った頃、ようやく枝葉は玄関の前にやって来た。

「ごめんごめん、待たせたみたいだね」

「大丈夫、二十分はまだ許容範囲だから」

 俺は待たせるのは嫌いだけど待つのはそれほど嫌いでもなかった。

「そう? ありがと。そういえばさっき先輩と何話してたの?」

「大して話してない。それにしてもあの人は何なんだ?」

「あの人は紅咲あかさき明奈先輩。二年生でレギュラーメンバーのすごい人なの。たまに色々鋭いけど明るくて頼れるいい先輩って感じの人だよ」

「ふーん、それじゃあもう暗くなるから帰るか」

「そうだね、帰ろうか」

 その後、枝葉を家まで送った時、夕食に誘われた俺は家庭の味という誘惑に負け、夕食を枝葉の家でごちそうになってから自分の部屋に帰った。

部屋の時計の短針は十一を越えていた。

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