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Not Knock  作者: モク
第1章 ブラックシューター
19/21

番外編 正義のパンを召し上がれ(後編)

番外編①後編。

小さなパン屋で起こった小さな事件、完結です。

 時間は少し、遡る。


「頼みって、何です?」


「チェルシー」


「聞かないわけにはいかないかも知れませんよ、ノット様」


「しかし、我々がその……知られているとわかった上で引き受けるのは、どうだろう」


「受けなければ、この場でバラされたって文句言えませんよ」


 会話は全て、小さな輪の中でのみ広げられるものである。


「よせやい。俺が兄ちゃん達の弱みを握ってるみたいだ」


「おや、ミスター。気づいてなかったんですか?」


「悪の組織に、俺が悪者みたいに言われるとは思ってなかったよ」


 やっぱりな。

 ジェームズは苦々しく笑った。嫌なクセのある餓鬼だ。


 やはり面倒事は避けたいと逃げ腰のノットだったが、少し思考を巡らせ、改めてどちらが面倒であるかを判断する。悪の組織だと知れた上でジェームズに手を貸すか、街にブラックシューターの素顔が知れ渡ってしまうか。

 結果、彼は前者を掴んだ。消去法である。


「……聞こう」


 苦渋の選択であるということを隠そうともしない、重々しい声だった。


「まあ、あんた達には嫌な仕事かも知れねえけどよ」


 声に混じるため息に込められているのが呆れか、面倒事を頼まれる二人に対する哀れみか、それとも別のものか。判別はつかなかった。


「……まず、お嬢。適当な悪の組織から二、三人引っ張ってきてくれ、出来るだけすぐにだ」


「なんとまあ」


「悪の組織を利用するのか!?」


 悠長に呆れるチェルシーと対照的に、ノットはより過敏に反応した。


「何を言っているか、わかっているんだろうな」


「だから、嫌な仕事って言ったろ──で。ここに誘導する。やり方は任せるよ。ただし、お嬢が差し向けたとはバラすな。兄ちゃんは、俺とここで待機だ。あいつらが帰ろうとしたら引き止めろ」


「待て。いくら何でも、そんなことを引き受けるわけにはいかん」


「ノット様、ノット様」


 制止するべく袖を軽く引くと、やはりノットは訝しげな目をして口を”へ”の字に曲げている。


「バレなければ問題ないです」


 何気なく言った後に、チェルシーはひっそりと驚愕した。耳に届いた言葉を嫌々に咀嚼したノットは、かつて見たことのない妙ちくりんな顔を造り上げていた。どの言葉でも表すには相応しくないと思えるような。ただなんとなく、驚嘆と憤怒と、ほんのちょっぴりの裏切られたという悲しみと、その他諸々が混沌としているのはわかった気がした。


「……いいのか?」


 やっと出てきた短い言葉には、幼い子が初めて何かに触るときのような、そんな不安さいっぱいが篭っていた。チェルシーはどうしようもなく頭を撫でてやりたい気分になったが、寸前で踏みとどまる。面白きことこの上なしに間違いないが、流石にそれは、まずい。


「そういうわけでミスター、しぶしぶ了解です」


「連れてきた後はどうする?」


「そりゃあ、あいつら次第よ」


 ジェームズにつられて視線が移る。それぞれの目には、苦虫を噛み潰している親子の姿があった。




 屋根を飛び越える。

 ”出来るだけすぐに”というジェームズの注文通り、人が瞬きを終えるよりもずっと速く、いくつもの屋根の上を駆け抜けた。算段は既についている。あとは適当な奴に仕掛けてしまえば、完了だ。

 簡単、簡単。こういう面白い計画やら悪戯やらを思いつくのは得意だった。


「そうだなあ。流石に暁帝国(うち)の人ではまずいですよね」


 相手が顔見知りでは、ノットとチェルシーが、こともあろうに悪の組織をちょこちょこっと利用して一般人に加担していることがバレてしまう。それが予想もつかない程、子どもでもない。

 チェルシーはポケットから、用意しておいた小道具を引っ張り出した。ところが外気に晒された瞬間に、それはチェルシーの手を離れ遥か後方へと遠ざかっていく。しまった、と思った。

 一般人の目では到底追えないスピードの上で耐えられるはずもない、仕掛けに使うはずの小さな”紙切れ”は、豆粒よりも縮んで見えた。

 慌てて空を蹴って元の道を閃光の如く飛んで手を伸ばすが、なんと不運なことか、紙はレンガの敷かれた道に着地寸前である。


「お、何か落ちてきた」


 (ことごと)く重なる不運。通りすがった二人の男。拾い上げられた紙切れ。


「”ベーカリー・J 売上げ 狙い目”……?」


 そして、崩壊した計画。


「何のメモだと思うよ、相棒?」


「そりゃ決まってるよ、相棒」


「そういうことなら行くしかないよな」


 にぃ、と歯を見せ合う彼らの服装は、いずれも黒を基調としたもので。真上の屋根に立ちすくむチェルシーは、降りるに降りられない。ただただ、上司に届きますようにと手を合わせながら、「ごめんなさい」を念じる。

 彼女は二人の顔を知っている。恐らく彼らも、チェルシー達同様に昼休みの最中なのだろう。毎日のように、勤める会社ですれ違う顔だった。


「だって俺達──」







「暁帝国だ? ふざけた名前して」


 そして、現在。


「とっとと出ていけ、商売の邪魔だ」


 連れてこさせておいて、出ていけとはどういうことだ。ノットは冷や汗を流しながら耳を傾ける。


「商売って。いないじゃん、人」


「あそこに何人かいるぞ」


 指をさすのはビルギス。彼は髪が短い。


「ああ、ほんと。一人うしろ向いてる」


 ぼんやりとした口調のエンジ。彼らは常に二人でつるんでいる。仕事の間も、休みの日も。さながら兄弟のような彼らを、いつもノットは感心していた。しかし今は何としてでも遠ざけたい。今この場に限って、この上なく疎ましい。


(チェルシー。何故、彼らを)


「ま、なんでもいいや。レジのお金、貰ってくね」


「おい……」


 エンジが離れるのを視界の端に捉えたノットが囁くが、ジェームズは応えなかった。せめてこの計画の意図を教えてはくれまいかと念を送るが、それも駄目だ。

 そもそも、どこまでが計算の内なのだろう。悪の組織を店に寄越させ、そこからどうする。まさか既に予想外なのか?


「……どきなよ」


「いけない、ロア!」


 エンジの低い警告にバドラッドの叫びが重なった。否応にも全員の目が引きけられる。エンジの前に、小さな影が両腕をいっぱいに伸ばして仁王立ちをきめていた。


「戻ってきなさい!」


「俺は父さんとは違う。俺は弱くない!」


 キッとバドラッドを突き放して、今度はエンジを睨みつけた。


「痛い目に会いたくなかったら、早く。どいて」


「知ってるぞ。お前達は誰も殺しちゃいけないんだ」


 英雄戦線協定。現代の超人たちの足元に(そび)える、絶対の柱。


「そういえばそうだ。どうしよう、ビルギス」


「馬鹿エンジ。納得してどうする」


 このまま見ているでも良かったかも知れないが、エンジは少しばかり頭が弱かった。


「お前少しくらい考えろよ。子どもに口で負けて、情けない」


「ない脳みそは動かん。俺のみそは味気ないよ」


「誰がお前のみそを食うって! カニじゃあるまい。気色悪いな」


「俺カニみそ、あんまり好きじゃないなあ。磯臭くって」


 ビルギスがエンジの肩に腕をかける。半ばエンジを押し退ける体制でロアに迫ると、まるで睨む蛇と硬直する蛙だ。


「確かにな。俺達は掟を破ってお前達を殺すことは出来ないよ。でもな、やかましい餓鬼を暴力で黙らせたところで、お偉いさんも文句は言えねえの」


「ヒーローが……来てくれる」


「見つかんなきゃ来ないんだ、これが。この店の小さいのが悪い」


「わかったら、どいた、どいた。ビルギスが怒るよ。ビルギスは脳みそが重いせいで怒りっぽいんだぜ」


 しかしロアは(がえ)んじない。ビルギスの言う通りだ。ヒーローは、街での破壊行為などを察しなければ現れない。それはパトロールであったり、街中に設置されたセンサーであったり。だが今、彼らがここにいることを知らせる術はないに等しい。


「助けに行かねえのか、兄ちゃん」


「……手伝わないのか、の間違いだろう」


「違いねえ」


 助けにも、手伝いにも行けはしない。この場にブラックシューターがいるなどと知られたら──助ける? だいたいそれは、ヒーローの役目であって元ヒーロー(じぶん)の役目ではない。


「私に出来ることは何もない。何かを成すつもりもない」


「そうかい」


「ジェームズ。そちらこそ、黙って見ているつもりか?」


 何度同じ質問を投げかけても、知りたい答えは何一つ教えてはくれなかった。

 誰かがガラス片を踏み砕く。主はバドラッドだった。


「む、息子に手を出すな」


 ビルギスとロアの間に割り込むと、震える手を振り上げてビルギスを突き飛ばそうとする。だが、やはりヒーローとしてのバドラッドは、まるで相手にもならないらしい。半歩後ずさるまでもなく手のひらで易々と受け止めると、ビルギスは冷ややかに嘲笑して反対に突き飛ばした。倒れ込んでくる父親を必至と受け止めるロアも、体格の差に乗せられ尻餅をつく。


「父さん弱いんだから、引っ込んでなよ!」


「駄目だ!」


 テーブルに面と向かっていたときにはまるで弱々しかったバドラッドとは別人のように思えた。感情的に、腹の底の声を絞り出して、一緒に根っこにあった勇気を持ち上げる。


「父親が息子を守ろうとして何が悪い。俺は弱い。俺は弱い。けれどここで臆病でいては、俺は一生、自分を恨むだろう」


 体制を立て直しながら、ロアを背に庇ったバドラッドが今度は両腕を広げ壁となる。ロアはただ無言で、それでもしかと、父親の大きな背にしがみついていた。


「ヒーローである前に父親なんだ、俺は……今何もしなければ、俺は何者でもなくなってしまう。自慢にはならないかも知れない……とてもヒーローとは言えないだろうが。俺には息子一人を守れるだけの勇気があればいい」


 バドラッドが己をヒーローとした理由。全ては、たった一人の家族の為だった。ロアを養う為に。強い父親として守ってやれるように。けれども、ことは上手く運ばれずに辞めたいと思うようになった。

 ロアがヒーローである父親を慕い、誇りにしていたことは知っていた。辞めることで息子に何と思われるのか、ひたすらにそれが恐ろしかった。それでも、どう思われようとも、何を言われようとも、己がロアのたった一人の父親であることを、諦めてはいけない。その心だけは決して捨てるわけにはいかない。血縁であるという事実以上の繋がりを、誰にも、自分自身にも、否定させたくはなかった。


「親子愛だ」


「そうだな、素晴らしいよなエンジ。でも、そういうのが心に響くのはな、俺が当事者でないときの話だ」


 バドラッドはとっくに覚悟を決めていた。それが”覚悟”と呼べるものかどうかは、よくわからなかったのだが、一つ。これでよかったのだということは、はっきりとしている。

 今の今まで避けて通ってきた恐ろしく強い痛みを、これから食らうことになる。やはり恐ろしくない、とは口が裂けても言えなかった。バドラッドが目を閉じる。そして同時、鈍い衝突音。

 微かに耳に入る呻き声は、ビルギスのものだろうか。はっとしてすぐに刮目すると、ほんの寸秒の内にビルギスが目前から姿を消している。バドラッドよりも驚愕しているのが、エンジである。

 しばし遅れて、こうばしい香りが鼻腔をくすぐった。


「父親ってのは、どうしてこう格好悪いのかねえ」


「ジェーム……」


 ズ?

 バドラッドは新たな声のする方へ、二度目の刮目。棚から伸びる影の中から颯爽と姿を現す小太りの男。シークレットの限りなくジェームズに近い彼は、しかし妙に違和感を醸し出している。

 その場の注目を一点に浴びる男は広いボロ布を首で結び、さながらマントのような着こなし。顔面には一見では布とも厚紙とも判別のつかない仮面を、ゴムを両耳に引っ掛けて固定している。


「あっ……いつの間に!?」


 ここで間の抜けた声を上げたのはノットだった。たった今まで、隣にいたはずの男が知らぬ間に別の所に立っていた。


「誰がジェームズだ、んん? ”パンおじさん”と呼べ。いいな、くそったれ共」


 しかしマントとマスク以外はパン屋主人のままであるパンおじさんは、不愉快そうに頭を掻いた。一方の手には、実に美味そうに焼けたバゲットを掴んでいる。


「あー。弱い者いじめはよくないよなあ」


 全く感情の屑もこもっていない台詞と共に、パンおじさんは掴み直したバゲットを躊躇なく、エンジに投げつけた。

 近年稀にも見ない、奇妙極まりない光景であった。何の変哲もない特製バゲットは空気の抵抗をものともせず、一直線にエンジの額に加速度を伴って引き寄せられ、とうとう衝突した。

 エンジは短い悲鳴すら上げられず、上げて良いのかもわからず、(かぐわ)しさに包まれながら店の外へと飛んだ。時代遅れの古びたコントのようにも思われたが、いかにも吹っ飛ばされた本人は不本意であっただろう──


「パンで……吹っ飛ばした」


 ──ロアのこの一言で、その奇妙な現象の全てを表現出来てしまうのだから。








 チェルシーは店の前に建つ家の屋根から、高みの見物をきめこんでいた。わけはノットの事情と同様。こっそり合流する時宜を伺っていたのだが、突如、立て続けに男が壁を突き破って飛び出してきたのだ。

 しばし呆気に取られるものの、はっとして素早く店の中に身を滑り込ませる。飛ばされた二人は、チェルシーのメモ書きを拾ってしまった彼らだった。

 見回すと、そっくり二人とも放心状態の父子と甚だ疲れきった形相のノットが、おかしな身なりをしたジェームズに目を奪われている。


「た、ただ今戻りましたよぅ……」


 ノットは遅すぎる帰還を果たした部下の姿を見つけるなり、鋭い目つきで手招きをした。


「君は……まあ、今はいい」


「ノット様。あれは?」


「個人ヒーロー、だな」


 会社や組織には属さず、報酬も求めず、一個人が自由にヒーローとして活動する例が存在する。言わば究極の趣味としてのヒーロー業。あの凄まじい腕力はもはや一般人とは言えまい。これがジェームズの副業か、あるいは趣味か、どちらにせよ一種のヒーローであることに間違いはなかった。

 ノットはひっそりと呟いて、やはりまだ顔を隠すべく腕で鼻と口のあたりを覆っている。


「ジェームズ……」


「バドラッド。お前(ちちおや)のことは、この俺(ヒーロー)が守ってやる。お前は、お前の子どもの手をしっかり握って離すな。父親の両腕が一体何の為にあるのか。わかってるはずだ」


 親子は言葉を失っていた。そして、何とも複雑な面持ちをしていた。自分が店の外で仰向けになっているとビルギスが気づいたのは、隣にエンジが横たわるのを見てからだった。


「あれ、エンジ。お前なにこんな所で寝てるの」


「フランスパンが迫ってきた」


「なんじゃそ……いや、言われてみれば俺も。え、パンなの?」


「よ。パンにやられる気分はどうだ」


 見上げればあるはずの空が、逆光の影でより黒々とする妙ちきな安っぽいマスク男に阻まれている。驚きでビルギスの心臓が跳ね上がった。


「コスチュームの時代遅れ感、半端じゃないよ、おっさん」


「おっさんじゃないよ、ビルギス。パンおじさんだってさ」


「おっさんが無理した格好してるのは一緒だ」


「うん。けれど、なんだかまずいよ」


 エンジが言い終えるか、終えないかの瞬間にも、パンおじさんは容赦をしなかった。一体どこから取り出しているのか、既に彼の両手には幾本もの新しいバゲットが収まりきらずにいる。

 ひょいと真上に飛び上がったかと思えば、乱雑な馬鹿力に全てを任せて、焼きたてホカホカのパンを次から次へと、地面に寝転ぶ悪二人にぶつけ始める。はたから見れば、まさか絶え間なく浴びせられている塊の正体が、ただのバゲットだとは誰も夢想だにしないだろう。微妙にコミカルな衣装の男が土煙を起こす程の攻撃を仕掛けている様は、店の中から見物しているノットとチェルシーにも、もはや理解不能の域である。

 本来は主食として役割を果たすものが武器と化している。おおよそパン屋の所業とは思えない。衝撃を余すことなく伝え終えたバゲットは儚くも、粉々に四散する。


「これはまた。派手と言いますか、馬鹿らしいと言いますか」


 いつの間にか後ろには、苦笑するチェルシーが立っていた。


「心配ねえ。二度とバゲットが食えなくなるだけだ」


「パン屋がなんてトラウマ植えつけちゃってんですか」


 勝ち誇る滑稽なヒーローは悠然と笑って見せた。鳴り響く異様な音と香りに周辺の人々が集まってくる頃には事態は終幕を引いており、何かに(えぐ)られた穴ぼこだらけの地面に傷だらけの男が二人、気を失っているのが放置されているのみであった。







 ノットはデスクに乗せた袋を眺めため息を吐いた。上から円形に見えるそれは、短時間で処理できる夕食にとチェルシーから譲られたパンだった。菓子パンの類に入るのだろうか。見た目はアンパンらしいが、中身には代わりに生クリームに混ぜられたチョコレートが入っているという。

 彼はふと、数日前の小さな事件の後を思い出していた。


『別にいいよ』


 ロアがもじもじと、少し恥ずかしそうに言う。


『ヒーロー、辞めても別にいいよ』


 それだけをバドラッドに伝えて口ごもってしまったが、ともあれ躍起になっての言葉ではないようだった。対してバドラッドは何も口にすることなく、ただ優しく息子の手を引いた。”手を握って離すな”。不格好な正義の味方の言うように、彼はどれだけ弱かったとしても家族の手を、みすみす離してしまうことはないだろう。

 最後にチェルシーの後をついてノットが店を出ようとしたとき、ジェームズは軽く肩を掴み引き留めた。


『餓鬼にとっちゃな、父親ってだけでヒーローに思えるもんだよ。特にロアは男の子(ぼうず)だからな。憧れてる奴がいるなら、それだけで──”ヒーロー”が必ずしも、(イコール)”正義の味方”である必要はねえ。俺の持論だ』


『それを、どうして私に?』


 ジェームズは呵々と笑って『さあな』とだけ言った。


 カチリ。ひときわ鋭く、壁の時計が音を立てたことでノットの目には現在の景色が再び映し出された。長針が頂点を指した合図だ。


「ヒーローの意味、か」


  言葉をどう捉えるか。これはノットに与えられた選択である。腰、背筋、腕と順に真上にぴんと伸ばしてから、ノットは椅子を離れインスタントコーヒーを入れ始めた。その表情は、悪としての彼が決して他人に見せることのない穏やかさを纏っていた。


パンおじさんは、もう少し格好よくキマるはずが。どうしてこうなった、というおっさんクオリティでしょうか。

でも作者は割と気に入っています。

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