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第一部「少女」①

今日も雨が降る。

無造作に積まれた修理不可能な機械製品の山の上で寝そべり、曇天の空を見上げながらランディ・ランバエルはそう思った。

別段、雨が降ることが珍しいことではない。むしろ多いくらいだ。戦時中に使われた化学兵器によって天候は限られたものとなった。空は基本的に雲で覆われており、日の光を拝める日のほうが少ないのだ。また、雨は毒性を持ち、赤い雨となって地上を侵している。

しかしランディにとってそんなことは問題ではなかった。ランディが空を見上げているのはついでである。

視線の先にあるのはその曇天を貫く塔「エンドルフ」。誰が名づけたのか、何の目的で作られたのか定かではない。おそらくは戦時中に作られたものだろうとは推測はできた。


「よう、また見てんのかよ」


聞きなれた声に振り向くとそこにはランディと同じ時期に治安維持部隊として契約したクルスの姿があった。肩まで伸びた金髪の髪を束ね、それがゆらゆらと揺れている。


「まあな」


それだけ言うとランディはまた視線を「エンドルフ」に戻した。クルスは苦笑いをしながらランディの横

に座る。


「たく、あんなもん見て何が楽しいんだ?」

「さあな」


またしても短く答え、視線を「エンドルフ」から外そうとしない。暇があれば「エンドルフ」に目をやり、その目はまるで恋をしているようだった。


「まあいいけどよ、そろそろ交代の時間だぜ。見てんのもいいけど飯食おうぜ。」

「・・・もうそんな時間か?」

「そうだよ、今日もいたって異常なし。俺たちの出番もなし。わかったらさっさと飯行くぞ。」


クルスに促され、機械製品の山から飛び降りる。3mほどの高さがあったが問題なく着地した。


「んじゃ、行こうぜ」

「ああ」


クルスが歩きだし、それに追いつくようにランディも歩き出す。一瞬だけ「エンドルフ」に目を向ける。

曇天を貫き、どこまで伸びているのか見当もつかない。ランディはなぜか「エンドルフ」に心を惹かれていた。理由があったわけでない。ただ、なぜか、目が離せないのだ。そしてそれはいつしかあの塔へ行きたいという思いに変わっていた。

あの塔へ、いつか・・・。


「おい、何やってんだよ」


クルスに呼び止められ、我に返る。一瞬と思っていたのだが、どうやら見入ってしまっていたらしい。ランディは「すまない」と短く言い、クルスを追いかけた。

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