第一部「少女」
第3次世界大戦。
それは人類が始めた最も忌むべき戦争で、国家が存在する世界において最後の戦争となった。
国家は長年の怠慢により国としての統治能力を失い、各地では暴力が横行し、世界は秩序を失いつつあった。
そんな中、S国がT国へ一方的な奇襲を行い、戦争へと発展していった。戦争の余波は周りの国々を巻き込み、世界中で武力衝突が起きていた。
いつ終わるともしれない戦争を始めた国家を人々は見限り、安息の地を求めて世界を渡り歩いていた。その道程で人々は大なり小なりのコロニーを作り上げていた。
軍事力を持たないコロニーは自衛のため、報酬次第ではどんな仕事でも引き受ける者たち「傭兵」を雇い、コロニーを維持し続けていた。
その体制ができてから長い長い月日が流れた。
戦争は人知れず終結し、国家は消滅、大地は荒廃し、コロニーだけが残された。
残された人々は限られた資源を求めて、またしても争いを始めていた。
人型兵器「ヴァレリア」。
戦時中もっとも多く使用された兵器であり、過去の遺物。残された人々は打ち棄てられたそれを改修し、争いを激化させていった。
残された人々は気づいていた。自分たちがしていることは、かつて自分たちが見限った国家と同じことだと。それでも彼らは争いをやめない。自分や家族や恋人や友人と一緒に明日を生きるために。終わりのない争いへと身を投じていった。
崩壊歴99年。
人類はゆっくりと、だが確実に滅亡への道を歩いていた。