表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/14

永遠との語らい

高層ビルの上階。社長室という表現がピッタリと当てはまる空間で、アンバランスな2人が調和のとれた会話を繰り広げている。


1人は年齢不詳の美女。漆黒のスーツに身を包み、時折皮肉っぽい笑みを浮かべている。

もう一人は、背筋の伸びた老翁。


社長とその秘書。


普通に考えれば2人の関係はそれで説明がつくように思われるが、孫娘とその祖父のような、あるいは十年来の親友のような、ときに好敵手であり、稀に恋人同士であるような、それらをすべて合わせて、ぐたぐたに混ぜ込んでしまったような、不可思議に親密な空気が2人の間には流れているのだ。


「アレの再構築は、瑠璃ちゃん、キミにまかせるから」

「ちゃん付で呼ぶな。それからその件に関して私が乗り気でないことはわかってるのだろうな」


「乗り気であろうがなかろうが、無くせないことは分かっているくせに。アレはボク達にとって地方自治体や国家のようなものだからね」

「不本意ながらそこには同意する」

瑠璃と呼ばれた美女はため息をついて窓の外に目をやった。

切れ長の瞳とくっきり弧を描くまゆ。白磁のような肌と、豊かな黒髪が窓ガラスに反射する。そして、その向こうに透けて見える大都市の夜景。


「さすがに親心とかついちゃった?」

「赤子の頃から面倒を見ているんだ。つかない方がおかしいだろう」

振り向くことなく吐き出された言葉に老翁は少しだけ表情を歪める。

「そっか。ボクの方はそろそろゲームセットだよ。あと5年はないね。こうやって自由に言葉を交せる時間はおそらくもっと短いだろう」

「分かるのか?」

今度は振り返って、瑠璃は問いかける。


「慣れてるからねぇ、さすがに。だからそんな顔しなくたっていいんだよ。眠りに落ちるようなものだから」

老翁は伸ばしていた背を革張りのソファーにうずめる。ほぅ、と息を吐くと、スプリングがぎしりと音を立てた。


「明継」

窓に完全に背を向け、瑠璃は老翁の名を呼ぶ。孫娘のように見える女性の言葉には敬称もなく、敬いの色もない。


「それは私にとって、憧れでもあるんだ」


明継は深いしわが刻まれた顔で、にやりと笑う。

「瑠璃」

そして、敬称もなく、敬いの色もない声音で女性の名を呼ぶ。


「それはボクにとってもそう。つまりは、お互い様ってことだよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ