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ゲームの世界の人格が疑わしい件に関して

3話構成です。が中編後編はまだ書いてないので明日から書きます。

6月最初の金の日。

俺はついに明後日から開放される、フィールドエリアでの行動計画を練っていた。

もっとも、珍しいことに俺が練っているのは俺の行動計画である。


……うん。普段の俺って、主人公達からしたら、お節介……いや、ストーカーに近いよね。


でも、必要悪だとして割り切ろう。


……いいじゃないか。ストーカーで。

大抵、犯罪者は主人公の敵だからっ!


絶対成敗されるけどね☆あはは……


「うっ、いけない。……そんなことより、俺の行動予定だ」


今回、第一回目のフィールド散策において、俺は主人公達とともに行動する気はない。


俺はパーティーキャラではない、というか噛ませ犬的なボスキャラだ。

馴れ合うつもりは……ごほん!少なくとも在学中に口説くつもりはない!


勿論、俺のRPG知識が役にたつ場面もあるだろう。が、所詮ゲームはゲーム。

ゲームに似た世界とはいえ、“悪魔召喚”の時のようにそれが命取りになるかも知れない。


よって、両者にとって明確なメリットがないことが一つ。


もう一つは、というと


「まずは第三フィールドにある“白銀の鎧”だろ……

それから、第十二フィールドにある“誓いの指環”か“意志の宝剣”はどうするか……」


そう。

ゲーム知識を生かして“希少武器一網打尽計画”を敢行するためである。




何故、このようなことをするのかわからない人もいるだろう。

だって、俺に強い武器はあまり必要がない。むしろ、強くなり過ぎたら不都合だ。

最悪、装備が“錆びたナイフ”“上質な服”の今の状態で4年間過ごしてもいい。


主人公側に立ってみても、あまりメリットはない。

始めら辺に、苦労もせずに無双できる、という考えもあるが、慢心の元にもなるのでメリット・デメリットは相殺される。


しかし、一歩ひいて考えてみよう。


フィールドに武器が落ちている。

異世界。“遺失物横領罪”なんて当然ない。(因みに、その罪状を考えれば、RPGの主人公達はほとんど犯罪者である)


つまり、主人公以外の何者かに拾われてしまう可能性がある。


これが非常に不味いのだ。

特に、“悪魔召喚”と同じようなキャラクターが関わらないにも関わらず、勝手に進行する固有イベントによって敵キャラとして現れる、あいつがいる今の学園では。


場合によっては、無理ゲーとなる可能性まである。


「まあ、どうせ……主人公以外とれないような仕組みになっているんだろうけどな……」


………………頑張ろう。主に世界が理不尽に定めた不測の事態に対しての計画を練ることを。



しかし、その計画はそうそうに潰えることになる。

理由は簡単。俺の“ゴブリン討伐”と書かれた外出申請書が破棄されたからだ。


それにしても、おかしいと思わないか?

ゴブリンといえば、大抵の物語で忌むべき敵キャラとして登場してくる。

女性を襲い、男性を殺す。人を食うときもある。

誰しも男なら、ゴブリンに襲われている傾国の美女を救うことから始まる出世物語を思い描いたことがあるだろう。


一見、異世界において完璧に見えるこの申請書。何が問題か、って?


「馬鹿者っ!ゴブリンだって生きておるんじゃっ!!」


まさかの倫理観の問題だった!


1日経って土の日。俺は正座をさせられ、説教を受けていた。


…………いやいやいや。倫理観に負けるなよ、ファンタジー!


「大体、貴族の君に何かあったら大変じゃないですか!」


納得はいかないけど正論だっ!


ひとし教を知っているかね?これは近年作られた宗教なのだが……とにかく生きているもの、特に哺乳類は大切にせよ…………その宗教を作った人はな…………これだけの徳をもった方でも自分の至らぬところを探しに…………」


ごめんなさい、その宗教を適当に作ったのは俺ですっ!!

だって、ものすごく治安とかもろもろが悪かったんだもん!!

道徳教育。あれがいかに重要かを思い知ったねっ!


勿論、そんなことを言えるわけもなく、足の感覚がなくなっていくのを感じながら、俺はじっと耐えていた。



こんな感じに説教されること数時間。結局、外出許可証をもらえないままではあったが、なんとか説教地獄から開放されると、脚をさすっているソルがいた。

俺と同じように正座をしながらまた違う先生から説教を受けていたのは先程確認している。


……因みに、ソルはあの衝撃の会合のあと“まずは友達から始めよう”的なことを言ってきた。

正直受けるかは迷ったが、正直主人公との関係以外はある程度自由にできるのがこの立場だ。友達の友達が敵、なんて状況はザラにある。


それに現在、話し相手がフィリップしかいないのも問題だ。

俺一人で学園中の異変とかに気付けるわけではないので、情報が必要なのに今の状態では入ってくる情報が限られてくる。

その点、このソルというキャラクターは男女関係以外にとても敏感な情報通という設定。

見返りはある程度期待できる。


何かを見極める、との発言もあったので若干不安であったが、ヒーローは本気で嫌がっている相手に何かをすることはない、と楽観的に考え……させてください。

なんとなく手持ち無沙汰なので、とりあえず話しかけてみることにする。

「ソル、なんで叱られていたんだ?」

「外出申請書でな、“貴族がいちゅう駆除”って書いたら、君は国に混乱を巻き起こす気か、って怒られた」


なにか違和感があったような気がするが、気にしないでおこう。

ソルに軽く手を挙げ、俺は気合でプルプル震える脚を立たせて玄関口に向かう。


そこで、主人公達に遭遇した。


「あ、ゴーマン」

「おー、ゴーマン」


リラとミハネである。玄関口付近で喋っていた二人がこちらに気付き、手を振って向かって来る。

今日は半ドンの日なので一度着替えてきたのであろう、リラは水玉模様のワンピースに黄色のカーディガン、ミハネはピンクのTシャツの上に黄土色の上着、下はジーンズという姿だ。相変わらず、この世界は科学というものを舐めている。

俺は制服姿のまま手を振……ってなんかいないぞ!!


慌てて頭上に挙げた左手を下げ、右手で抑える。

勿論、一連の行動がそれでなかったことにはならないけれども。

その間に間合いを詰められてしまう。


落ち着け……慎重に……俺はゴーマン、俺はゴーマン……

「ゴーマン、遅かったね」

「放課後に呼び出されていたけどどうしたの?」

「……ふ、ふん。知る必要があるか?平民」


リラ達が話しかけてきたのでこう返す。ちゃんと鼻を鳴らして、そっぽを向く行為込みでだ。


途中なんか俺を待っていた、みたいな発言が見られたが気のせいだろう。


今回はしっかり成功したっ!!

いくら台詞が簡単だったとはいえ、俺もちゃんとゴーマン化してきたではないか。


その変化を喜べるか、と言われれば首を横に振らざる負えないけどね。

密かに達成感を感じていると、なにやら視線を感じる。

「うぅ~」

「あぅ~」


主人公様とヒロイン様が、視線で何やら訴えかけてきていた。しかも、二人とも上目遣いで、どうやら俺が何をしていたのか気になって仕方ないらしい。

子供かよ、って突っ込みたくなるが考えてみれば13歳。まだ、色々無遠慮に知りたがる年頃なんだろう。

あうう。それにしても罪悪感が半端ない。

特に、どうでもいいことをこういう風に勿体ぶっている今の状況は、非常に心によろしくない。

っく、うううう……我慢だ、我慢だ……


俺は自分の気を逸らすためにも話題をそらすことにする。

「き、今日は快晴だな」

「あ、うん」


雲一つない青空。今日は清々しいほどに晴れ渡っている。

「あ、明日もきっと晴れるだろうな」

「そ、そうだね」


……うん。ただ二人が相槌を打って、それで会話終了。

子供には天候の話題は早すぎたか。


俺のコミュニケーション能力が低いとは、できるだけ考えない方向で行こう。

「あ、明日は何をする予定なんだ?」


会話のついでに明日の予定も聞いておく。


何故か、って?


俺には結局、外出許可が出されなかったので、予定を変更せざるおえないからだ。

そうでなくとも、主人公の動向を知っておくことは決してマイナスにはならない。


というか、明日の行動方針が潰れてしまったので、一つの参考として主人公の行動を知っておきたかったのだ。

「あ、明日なら空いているよ?!」

「あ、あたしも!!」


おかしい。日本語が通じていないだと?

自分が軟派な行為をしたか、と言われれば、俺の物になれ、の発言とか様々な悪行が思い出されるが、今、明日一緒に何かしよう、の類の言葉を言った覚えはない。

俺は、

「じゃ、じゃあ明日はで……一緒に遊びに行こっ?」

「学園の外に見晴らしのいい丘があるから、そこでお昼ごはん食べよ?」


俺が何かを言う前に明日の俺の予定が決まっていた。


……だから、主人公となれ合う予定はまだないんだって!!


だが、これはチャンスかもしれない。

主人公と外に出てから別行動をとって、アイテムの回収に勤しむことだってできる。

対して、誘いに乗らなかった場合、最低でも一週間は外出できない。

デメリットとしては関係性が良化してしまうことだが、遊びに誘われるほど高いなら、何を今さらという感じである。


……勿論、悪化することに全力を尽くす所存ではあるが。


そこまで考えて、俺はある重要な事実に気が付く。

「って、外出申請書通ったのか?!」


“ゴブリン討伐”という素晴らしい申請書の受理が断られた以上、俺は今後、外出許可を得るためにどんな申請書を書くのか学ばなくてはならない。

リラが肩掛けの鞄から取り出した用紙を借りて、申請書の外出理由の欄を見る。


そこには、俺が思いつかなかったような素晴らしい理由が……

「うん。普通に書いたら通ったよ?」


そう、素晴らしい理由が――


外出申請理由“ピクニック”


…………………………………………………WHAT?

ピクニック?

PICNIC?


異世界。ゴブリンとスライムがウロウロする草原でお弁当を持ってPICNIC?

ネット小説とかではたまにあるけれど、そんなところへPICNICにいこうとは……普通思わないと思うのは、俺だけ?!


……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………いやいやいやいや。


俺はあまりの事実に固まってしまった身体を再起動させる。それから空に向かって全力で吠える!!


「正気か、異世界ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


俺は狂気に陥りそうだっ!


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