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大切な人々

  

  今作で、やっと登場人物が繋がって来ます。読んで見てください。

     大切な人々


  都内から少し西に在るこの街、龍ヶ丘。俺は、この街が好きだ。


  警官になって、今年で二年目。俺が、この街を守る。・・・・・と言いたい所だが、俺が配属されたのは隣街の派出所だった。自宅からは、電車で三十分弱。まあ、そう悪くはない。それに、去年の夏には、嬉しい事もあった。


  あれは、この派出所に配属されてから、一ヶ月程経った頃だった。派出所は、駅前のバスターミナルが良く見える場所にある。都内への直通電車の快速が止まる駅なので、再開発された街から、この駅へ来る人も多くすし詰めになったバスが、ひっきり無しに到着している。よく有る事だがバスを降りる時に、後から降りて来た人が前の人にぶつかり、押し倒されて怪我をする人が何人かいる。それはもう、毎朝茶碗をひっくり返したような騒ぎだ。俺は、二年間で、沢山の人を助けて来た。


  とは言え、現役柔道四段の俺でも、最初にその様を目の当たりにして、一瞬戸惑った。その時、初めて助けた人が、彼女だった。その日、降りてくる人の群れは、いつ将棋倒しになってもおかしくないように見えた。ただ、俺の目の前でおきない事を願っていたが、そうならないのが現実だ。左の方向から、複数の叫び声が聞こえた。俺は、婦人警官の先輩よりも、先に現場へ走った。其処には、十人ぐらいが折り重なって一つの塊となっていた。数人は自力で起き上がっていたが、何人かは動けずにいた。その塊の前に心配そうに立ちすくむ、老女がいた。俺は、一人一人、腕を掴み引き上げた。塊の一番下にいたのは、高校生ぐらいの女の子だった。


  彼女を起こそうとしたが、容易にはいかなかった。塊に押しつぶされて足や腕を怪我しているようだった。老女が心配そうに駆け寄って来て、俺に話しかけた。「お巡り(おまわり)さん、このお嬢さんが私をかばってくれたんです。この子を助けてあげて下さい、お願いしますよーお巡りさんっ!・・・。」俺は「救急車を呼びますから、大丈夫ですよ。」と言うと、ほっとした顔で、老女はその場を立ち去った。「大丈夫ですか?今、救急車を呼んだから、まっていてね。」俺は彼女にそう言うと、他の怪我人へと駆け寄った。十五分程で救急車は来ただろうか。いろいろな作業に追われて、あれから彼女がどうなったのか気になってはいたが、日々過ごしていく中、少しずつ記憶は薄れて行った。だけど、日本は狭い。あんな形で、彼女と再会する事になるとはな。石橋太一(いしばしたいち)、俺はなんてラッキーな男なんだ。


  あれから、三ケ月程過ぎただろうか。あの時、派出所の脇で咲いていた桜は散り、沿道に植えられた小さな花には蜜蜂がとまっている。陽射しは強くて、警官の制服が忌々しく感じる季節になった。

 その日の勤務を終えて、俺はある場所に向かった。夜勤明けで疲れてはいたが、毎年幼馴染と行ってる地元の祭りを、すっぽかすわけにはいかない。龍ヶ丘駅を降りて、待ち合わせたコンビニへと足を急がせた。コンビニの看板が見えて来ると、店の前に立っている人影が見えた。


  「お疲れー!元気だったか少年達・・。おやおや、未成年者が煙草何て吸っっちゃいけないなぁ、杉原結翔(すぎはらゆうと)君。」俺はそう言いながら、後ろから結翔の首を掴んだ。「痛ててっ、やめろよーおっさん!それに、未成年じゃねぇしー。」「はっ、はっ、そうだったかぁ。」「四月に二十歳になったばかりだっての。」「あっそうかぁ。お前知ってたかぁ?」と、俺は隣にいる碧に話しかけた。半ば呆れた顔で薄笑いしながら「へへ、そうだったんだー。僕、知らなかったよ。」と碧は言った。


  結翔と碧と俺は小学一年の時に友達になり、それから今までの付き合いになる。皆、それぞれいろんな事を、抱えている。結翔はサッカー選手を目指していたが、両親が離婚して母親について行き、幼い兄弟を養うために、幾つものバイトを掛け持ちしている。碧は今、一浪中だ。医大を難なく卒業して医師となった兄と何時も比べられて育ったらしい。そんな彼らとお互いの近況を話しながら、二十分ぐらい歩くと、道は龍頭神社の祭りに行く人で、混み合って来た。「あっ、ごめん。言い忘れてた事があった。今夜、あと二人来るんだ。」「えっ?何だ何だ?まさか、女の子かぁ?」と結翔。「いや、こいつに限ってそりゃ無い、無い!大体、こいつにそんな出会いの場が、在るわけないっしょ。」「だよなー。」と言った結翔の前に、一歩踏み出して碧は続けた。「高三の時、予備校で友達になった女の子とそのお友達。」俺と結翔は顔を見合わせたが、多分お互い、ニヤケていたいたんだろう。碧は「フン、どんなもんだい、僕だってやるときゃやるんだ!」と勝ち誇った目で俺達を見ると、半ば強引に行くぞっと二人の腕を掴んで、歩き出した。


  神社の参道は、出店が沢山出ていて賑わっていた。少し歩くと、鳥居の所で誰かが手を振っている。「眞己(まき)さーん。」碧が駆け寄った。後から行った俺達に、フフン、いいだろーと言いたげに、碧は彼女達を紹介した。碧よりも少し背の小さな娘は、キャラメル色した髪を肩ぐらいでふんわりとしていて、小花柄の薄いピンクのワンピースを着ていた。「こちら、眞己灯(まきあかり)さん。僕が来年行く大学の一年だ。へへ、可愛いでしょっ。」そう碧が言うと、「やだーぁ、片倉君ったらー。可愛くなんてないよー、やめてよー、恥ずかしいよー。」(いやいや、眞己さんは可愛いよー)なんてやり取り何も面白く無い、勝手にやっててくれと思った。結翔もそう感じたらしく、すかさず俯向き(うつむき)気味に話を聞いていたもう一人の娘に話かけた。「君は?何さんかな?」その娘は、紺地に朱色や淡いピンク、緑の大きな花柄の浴衣に、檸檬色の(しぼり)の帯、艶めいた黒髪を紅い簪(あかいかんざし)で結っていた。「あっ、すいませ。私・・・。」「この人は私の大事なお友達、水神由乃(みなかみゆの)さん。ちょっと人見知りするけど、とーっても優しいの。」眞己と言う娘が答えた。うーん、この水神って言う娘、俺には見覚えが有る様に思えてならなかった。


  結翔が金魚すくいをやりたいと言うので、皆で探した。行き交う人の群れで、歩くのもままならない。俺は、前を歩いている水神さんが、気になっていた。下駄を履いてるせいか、百八十センチ強の俺と、あまり身長差を感じない。細っそりした身体に、浴衣がよく似合っている。そんな事を考えながら歩いていると、彼女が敷石に足を取られて、転びそうになった。俺は、とっさに後ろから抱きとめた。その時、俺の脳裏に浮かんだのは、あの出来事だった。そう、朝の通勤ラッシュ時のバスターミナルで、一番最初に助けた女の子。あぁ、あの女の子は、この人だったんだ。何故か俺は、探していた宝物を見つけた気がして、とても嬉しかった。それに、大切な仲間が増えたことに、俺は感謝した。

    

    俺は今、深くて冷たい闇の中で、去年のあの祭りの夜を思い出していた。


   碧、結翔、灯、由乃・・・・。いつまでも、いっしょに、いたかった・・・・・・。


                  俺の大切な奴らと




  


  

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