始まりの星月下
その日もいつもの駅は、帰りを急ぐ人でごった返してた。僕も早く帰りたいけど、大学の先輩に一日愚痴を言われどおしで、雑踏をかき分けて歩くのには、隣に灯でもいてくれないと無理な話し。付け加えて毎日雨ばかりだ。この季節が過ぎれば、夏が来る。僕には、やりたい事が、沢山ある。
一番楽しみなのは、大学のサークルの合宿だ。獣医を目指してる僕は動物が大好きなわけで、だから、牧場を巡る夏合宿を楽しみにしているわけで・・・・・・。なんて考えながら歩いていた時、突然,後ろ手に肩を引かれた。「よっ、碧。今、帰りか。」はぁ、はぁ、と息をきらしながら声をかけてきたのは、幼な馴染みの結翔だった。「向こうのホームでお前に似てる奴がいたから、走ってきたんだぜ。」「へぇー、よく・・(僕だってわかったねと言おうとしたが、言葉を飲み込んだ。どうせ、いつもみたいに、碧は顔まで青くて細くて不健康だからすぐわかる、とか言われるのが落ちだから。)てかさ、よくあそこから追いついたね。」「そりゃね、一度はJリーガー目指してましたから。」そりゃそうだよな、なんて納得しながら帰る方向が一緒なので、今バイトで盛り上がってるアイドルの話しや目の前にいるオジサンの仕草が面白いなんて話しながら、二人、何時もの駅で降りた。
駅前のコンビニまで来ると、「結翔、又な。」と言って別れようとした僕に、「あっ、お前、来週の龍頭神社の祭り、来るだろ?」来週の予定何かまだわからないよと言いかけた僕の言葉を遮るように、結翔は続けた。「俺、金魚屋やるからさ、太一達と来いよ。なっ!」わかったなー、待ってるからなーと言い残して、結翔は路地へと消えて行った。いつの間にか雨は上がっていて、ひんやりとした空気が、肌に心地良かった。ロータリーを抜けて少し歩くと、マンションに隣接された公園がある。やけに滑り台の所が光っている。その上を見上げたらそこには、冷たく拡がる星の群生の中で、青みがかった月だけが一人、寂しそうに耀いていた。




