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「いらっしゃいま、せ!?」
海の家に再び行くと、店主の男が椅子に座って壁を背もたれにし、煙草をふかしながら新聞を読んでいた。新聞から目を上げると、恐ろしいほどににこやかな春一がいた。その後ろにはこれまたにこやかな丈と琉妃香。
「アンタさ、仮にもここの店主だろ?海を汚すようなマネしちゃいけねーわな」
「えっ?何でそれ知って……」
ひくついて煙草を落とす店主に、春一は一切の笑みを消し去って彼に詰め寄った。壁にバンと手をついて、眉間に皺を寄せた目で店主を睨む。
「お前自身がこの海を汚さないこと。そして、客にもそれを厳しく言うこと。なんにしろ、この海をきれいな状態で保つこと。わかった?それができなきゃ、俺ら黙ってないからね?」
「ひぃっ……わかりました!すみません、もうしませんっ!」
店主は地べたに土下座して、何度も頭を下げた。それを見届けた春一達は、無表情から一変、にこやかになって店主に背を向けた。そして店からの去り際にアルバイト中の少年の肩に手をポンと置く。
「喜ぶといい。君は頑張ってるから、今日から時給百円アップだそうだ」
「えっ、マジすか!?」
「良かったな。頑張りはいつしか認められるものだ」
そのあと海の家には、嬉々とした表情の少年と、泣きっ面の店主とが残された。その後、春一達は海を満喫して帰路についた。