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海の家はそれなりに繁盛していた。ヤキソバや冷たい飲み物、かき氷などが売られていた。先ほど琉妃香をナンパした店主の男と、アルバイトとみられる高校生くらいの少年の二人で切り盛りしているようだった。
「かき氷四つ。ブルーハワイといちご二つずつ」
「ありがとうございます!」
少年は春一の注文に元気よく返事して、氷を削り始めた。程なくして赤と青のシロップがかかったかき氷が四つ出来上がった。四人はそれを店内で食べながら、店主の男に声をかけた。
「あのさ、この海で今までに事故とかあった?」
「え、そ、そんなんないっすよ」
春一の問いに答える店主の男は、至って挙動不審で、怪しい。春一達がじと目で見据えると、男は居心地悪そうに体をもぞもぞもと動かしながら、頭をぼりぼりと掻いた。
「ここだけの話にしてもらえますか?そうしないとオレの商売も上がったりですよ」
「そりゃあ、ここのマイナスになるようなことはしないよ。素直に話してくれれば、だけどね」
春一が軽い脅しをかけると、男は顔をひきつらせて、春一達が座っているテーブルの方までやってきて、丈の隣に座った。そして、声を潜めて周囲を気にしながら話し出した。
「実は、最近変な事件が起きてるんすよ」
「事件?」
「はい。海で泳いでると、誰かに足を掴まれて水中へ引きずり込まれそうになるっていうんです。被害に遭った人たちは今夏だけで十人くらいになると思います。でも、すぐに手を離されて、後は何にもないっていうから、事故にもならずに終わってるんです。こっちは評判落とされちゃたまんないから、誰かの軽いいたずらでしょう、で終わらせてるんですが、それにしたって件数が多すぎる。今年だけですよ、こんなことが起きるの。今までは何にもなかったのに」
春一達は顔を見合わせた。やはり、女の子が言っていたことは本当だったのだ。
「ふーん、成程ねぇ。嫌なにおいがしやがるぜ」
春一は口で器用にスプーンをいじると、食べ終わったかき氷の皿にスプーンを置いた。そして立ち上がる。
「ちょいと調査してみますか」