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TRUMPⅢ  作者: 四季 華
第7章
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「聞いてねぇぞ」

「言ってませんから」

「さっさと帰りやがれ」

「帰る場所はここなのですが」

「アメリカに帰れっつってんだよ!」

 声を荒らげてそれだけ言うと、春一は立ちあがってダイニングから出ていく。自分の部屋のドアをバタンと強く閉めて、拒否をアピールする。

「やれやれ……ハルにも困ったものですね。きちんとしつけなかった私が悪いのですが」

 肩を落としてため息をついた龍青に、夏輝もつい惰性でため息をついてしまう。

「夏輝さん、何であんな不肖の息子についていくんです?妖怪のことならば、自分でどうにかすることだってできるでしょう」

「妖怪の話を、信じられるのですね」

「ええ。まぁ、私は否定はしませんし、ハルがそんなことで嘘を吐くメリットも思い浮かびませんから」

「私の父は、そういうのを根本から否定する人です」

 そう、春一と出会ったのは三年前の五月だった。あの日、あの場所で―。


 風薫る五月。春の桜が散り、徐々に緑が顔を出す。芽吹いた植物が目にも心にも安らぎを与える。そんな季節。

 夏輝は音楽大学をその前の年に卒業し、現在はある楽団でチェロを弾いていた。中学生の時に始めたチェロだったが、その才能にも恵まれ、音楽大学に入ることができた。卒業する時に楽団に誘われ、それに乗った。夏輝は時にスランプに悩みながらも、それでも楽しんでチェロを弾いていた。

 しかし、そんな彼には悩みがあった。それは、怪奇現象に基づく父親との不仲である。

 近頃、夏輝の周りではある怪奇現象が起きていた。

 彼が家に帰ると、中から不審な物音が聞こえた。最近、近所では空き巣が多発している。もしものことがあると思い、夏輝は身を固くした。

 中に入り、彼は唖然とした。ひっくり返ったような、という表現がぴったりなほど、家の中が荒らされていた。

 そして更に、中には人影があった。机の向こう側、窓の近くに黒い人影が見える。

「!」

 人影は、夏輝がドアを開けた物音に気付き、ばっとこちらを見た。夏輝は驚きのあまり何もできずにただ固まっている。すると、彼は信じられないものを目にした。人影が、すーっと消えていくのだ。

 消失。そんな言葉がしっくりくる。夏輝は、目を丸くしてその光景を見た後、しばらくそこから動けなかった。



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