7-2
7-2
春一の不機嫌さと言ったら、この世にある言葉の全てを出し尽くしても表せられないほどだ。今日の試合は、ACLに出場するためにも、そして何より優勝するためにも絶対勝たなければならないゲームだった。相手は最下位だし、こちらのホーム。手堅く勝ち点3を取る予定だった。
前半はステッレ優勢で折り返した。後半になると、ステッレの花形ストライカーで、得点王を狙っている選手が素晴らしいミドルシュートを決め、ステッレサポーターは一気に活気づいた。このまま二点目もそう遠くないと思われたが、最下位には最下位なりの意地があった。
後半も時間が少なくなってきたところで、相手のFWがコーナーキックからのヘディングシュートを決めた。それで調子が出てきたアーレック姉崎は、後半ロスタイムに追加点を決めた。そして試合終了のホイッスル。勝負とは時に奇跡を生み、特に残虐なものである。
春一はスタジアムから家に着くまで、苛々しっ放しだった。そのせいで車の運転も荒くなる。いつもはあまりしないのだが、家の駐車場に停める時、一回フカした。
家に入り、いつものようにダイニングに行く。首に巻いていたタオルをソファに投げつけ、ユニフォームも脱いでその辺へ投げ捨てる。
「ハル、お帰りなさい」
夏輝の言葉にも反応をせず、そのまま自分の部屋に戻ろうとした時。
春一は、殴り飛ばされた。
「イッテェ……。夏!どういうつもり……だ?」
夏輝に文句を言おうかと顔を上げた春一の表情が見る見るうちに混乱で染まる。
「ひどいですね、ハル。父親の顔を忘れるなんて」
春一は殴られた痛みも忘れ、自分を見下ろしている父親を見た。
「な……何で、親父!?」
「全く、イラつくのは勝手ですが、それを他人に当たり散らすなんて感心できませんねぇ。ハル、直すようにしてください」
「アメリカの大学にいるはずじゃあ……」
「学会が日本であるので、帰ってきたんですよ。尤も、明日の朝には発ちますけどね」
何も言えない春一に、父親はニコリとほほ笑んだ。