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「調子どーよ?」
「ハル、お帰りなさい。調子はそれなりですね」
春一が家に帰ると、夏輝がソファで読書をしていた。
「その顔は、解決したんですね?」
「まぁね。その話をする前に、メシにしよう」
「すみません、これからしばらくはレトルト生活になってしまいます」
「あのさぁ、お前、俺のことなんだと思ってるわけ?料理くらいできるっての」
「……本当ですか?」
「その疑り深い上に信用していない目を今すぐやめろ」
春一は夏輝の額にデコピンをして、キッチンに立った。フライパンを火にかけ、卵を溶きほぐす。そこに牛乳を少しだけ加え、火にかける。小気味いい音と共に固くなっていく卵を器用に動かし、オムレツをさっと作ってしまった。真ん中を割ると、中から半熟の卵がとろけ出た。
「すみません。ハルのことを見くびっていました」
「素直でよろしい。だが感心はなしない」
べぇと舌を出した春一は、さっさと二人分の夕食を作ってしまった。テーブルクロスを敷いて一輪花でも置いておけばレストランのようだ。見た目にもおいしい。
「それで、妖怪はどうなりました?」
食事も終わり、コーヒーを飲んでいる時に、夏輝が春一に聞いた。
「一発お見舞いしといてやったよ。相手は、コンビだった」
「コンビ?」
「ああ。一人が運転を担当し、もう一人は霧化ができるタイプの妖怪だ。つまり、シルビアは消えてなんかいなかった。黒い霧に変化した妖怪に、姿を隠されていただけだ。だから、本当はずっと前を走っていた。でもまぁ、はた目には消えたと錯覚するわけだ。けど、霧化できる時間は限られている。それまで辛抱強く待ったら、霧も晴れて、普通に勝負ができた。元々技術自体はそんなにうまくない奴だったから、勝つのはそう難しくなかった」
「そうですか……」
簡単に言ってのけるが、実はすごいことだ。それは事故をしている夏輝自身がよくわかっている。
「これで同じ事件はもう起きないだろう。めでたしめでたし」
春一は残りのコーヒーをグイッと飲み干して、カップをシンクへと持って行った。
「洗い上げは後でやっとくよ。風呂入ってくる」
「はい」
手を上げて部屋を出ていく春一に、夏輝は心の中で密かに敬服した。