表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TRUMPⅢ  作者: 四季 華
第6章
31/48

6-2

6-2


 シルビアとの勝負に乗った春一は、ワインディングが多い山道を疾走していた。シルビアとの間を一定に保ちながら、ドリフトを仕掛け、相手を追う。

「んだぁ?シルビアの妖怪。ドラテク(運転技術)はそこまで高くねぇじゃねーの」

 春一が挑発代わりにシルビアのテールにFCのノーズを当てる。シルビアはそれに対抗するようにスピードを上げる。


 由良と武史は、山の頂上からそのバトルを見ていた。

「あの小僧、なかなかやるじゃねーか」

「違う……」

「ん?」

 由良が、ポツリとつぶやく。その表情は、信じられないといった様子だ。

(違う……何で?今までずっとチューニングを続けてきた。ずっと、秋志仕様にしてきたはずなのに……なんで、秋志とは違う走りをするの?あのFCで走ってるのに、走りが秋志と重ならないよ……)


 春一は全神経を集中させて、前のシルビアを追っていた。すると、異変が生じた。前のシルビアが、段々と黒く染まっていくのだ。すぐに目の前は漆黒に染まった。

(来たな!)

 春一はその事態にも慌てず、頭の中で自分が今走っているコースを思い出した。

(ここだ!)

 ギアをセカンドまで落とし、減速する。そしてドリフト。FCはガードレールすれすれのライン取で、カーブを曲がった。

 その後も春一は記憶を頼りに走り続けた。この山ならば初心者時代に走りこんだ。どのタイミングでギアをシフトすればいいか、どのラインを取れば最短で曲がれるか、全ては頭と体に叩き込んである。

(そろそろだ……)

 春一が睨んだ通り、黒い霧が段々と晴れはじめ、前を走るシルビアが再び姿を現した。黒い靄は、シルビアの中へと集束していく。

(攻めるなら、ここ!)

 このコーナーを勝負所と決めた春一は、カーブ手前のストレートでスピードを上げた。シルビアも抜かれまいとスピードを上げる。そしてそれが、勝敗を決した。

 スピードを上げすぎたシルビアが、カーブを曲がりきれず、ハンドル操作を誤ってガードレールに激突した。春一のFCは、それを避けてターンし、そこに停車した。

「オイ、そこの妖怪コンビ」

 春一は車から降りてシルビアに詰め寄った。車内には二匹の妖怪がいて、事故のダメージから抜けきれずにいた。春一はガードレールと接していない助手席側のドアをガンと蹴ってエクボを作ると、中から妖怪を引っ張り出した。

 引きずり出された妖怪達は、道路に転がされた。逃げ出すことができないように、呪符で妖怪の腕を縛る。

「テメェら、よくもこんな事件起こしやがったな。挙句の果てに、俺の助手まで傷つけやがって……。本当なら半殺しにしてやりたいところだが……もういい。お前らは枢要院に引き渡す」

「何故……何もしない?」

 運転をしていた方の妖怪が、痛みに呻きながらも春一に問うた。

「お前らを、信じてるからだよ。もう二度とこんなことはしないって」

「何で、信じられる?」

「俺が妖怪を信じてるからだよ」

 言ったあとで春一は、ニヤリと笑った。その笑顔からは、何か禍々しいものが感じられる。妖怪は背筋に冷や汗が流れるのを感じた。

「けどまぁ……何もなしってのは甘すぎるよな。これは受け取っとけ」

 そして春一はギュッと拳を握った。妖怪が嫌な予感を感じる時には既に、春一の拳が眼前に迫っていた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ