5-8
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秋志の葬儀は、しめやかに行われた。
あの後、崖の下から秋志の遺体と妖怪が発見された。妖怪はまだ息があったものの、全身の骨は粉々に砕けており、回復しても歩くことは困難だろうということだった。
妖怪は枢要院が逮捕し、処理したため、表向きには秋志の不注意による転落事故死となっていた。
「由良さん……」
葬儀が終わった後、春一が由良に話しかけた。由良は涙の痕が付いた顔を春一に向けた。無理に笑おうとしているその表情が、春一の胸を締め付ける。
「由良さん、すみませんでした」
春一は悲痛な思いで、頭を下げた。由良の反応を見るのが怖くて、顔を上げられない。
「俺が、もう少し秋志の力になれたら……。本当、詫びの言葉もありません」
「ハル坊」
「はい」
ゆっくりと顔を上げると、由良が怒ったような表情で立っていた。そして、両手で春一の顔をバチンと挟み込む。
「イッテェ……」
「ハル坊、怒るよ?」
「もう怒ってると思います……」
「あのね、あんた、秋志を侮辱する気?秋志は妖怪に全てを捧げたの。それを無下にする気?秋志は、きっとこうなることがわかってたんだと思うの」
「え?」
春一から手を離して、由良は笑った。無理な笑顔ではなく、思わず笑ってしまったような顔だ。
「秋志は、きっとあの妖怪が生き残ることがわかってた。だから、あの妖怪が生きて更生できると信じて、道連れにされたんだと思う。そうでなきゃ、あの秋志があんなに素直になると思えない」
「そっか……」
そう言われて、春一も笑った。確かに、秋志ならばそうしそうだ。
「そう、だね。ごめん、由良さん」
「謝んなくていいの。ハル坊、ドライブ行かない?」
「お願いします」
由良は秋志を送り出すように、アクセルを踏んだ。