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その後何回か会っている内に、由良と春一達はすっかり仲良くなった。由良の経営する中古車ショップに行って好きなだけ車を見に行ったり、秋志とのデートを邪魔したりと、最早友達レベルだ。由良も元々面倒見がいい性格だけあって、すぐに三人のお姉さん的立ち位置に立った。
「秋志、キスしないの?」
「しちゃえヨ」
「キース、キース」
「オメェらぶっ飛ばすぞ!」
いつものように公園でこんなやり取りを十数回重ねていると、秋志の携帯電話が鳴動した。画面に映る発信先を見て、秋志の表情が硬くなる。
「もしもし?……了解。すぐに向かう」
それだけ言うと、秋志は携帯電話を黒い革ジャンパーの胸ポケットにしまった。そして立ち上がる。
「枢要院からの依頼だ。今回はかなり強い妖怪らしいから、お前らついてくるんじゃねーぞ」
すると、三人はすっくと立ち上がった。
「そんなん、俺らが聞くタマかよ?」
「秋志、俺らのことわかってねーナ」
「ついていくに決まってんじゃん」
「でも今回は本当に強い妖怪で……!お前らを危険な目に遭わせられるかよ」
「強ぇんなら、秋志一人よりか俺らいた方がいいじゃん?」
「四人集まったら、強ぇぜ?」
「百人力かける四だからね」
「~っ!ったく、勝手にしろ!」
結局秋志は根負けして、三人の申し出を了承した。由良も含め、五人で現場へと向かった。
現場は、数珠市の山のひとつだった。急勾配で知られるこの山は、所々崖になっていて、事故が多いことでも有名だった。秋志と由良は頂上に車を停めた。
「!」
三人は、車を降りた瞬間、違和感に気付いた。びりびりと、強く禍々しい狂気にも似た妖気が、三人の神経を刺激した。体が芯から震え、内臓がすくみ上る。彼らも何度か妖怪と対峙してきているが、こんなに強い妖気は初めてだ。
「こっちだ」
秋志が森の中へと入っていく。四人もそれについていく。皮膚を刺す妖気が、どんどん強く、濃くなっていく。
「いた」
まるで樵のように、木の上に座っている男がいた。その姿かたちは、まさに鬼。毒々しい緑色をした体は巨大で、頭からは角が生える。目はぎょろついていて、獲物を求めている。
「おうおう、お前か、人を殺した妖怪ってのは」
秋志が近づきながら話しかける。鬼はぎろりとこちらをねめつけて、木株から腰を浮かした。
「誰だぁ、お前?」
まるで地獄の底から這いつくばって出てきたような、そんな声だった。
「俺は秋志。妖万屋をしている。今回枢要院から依頼を受けてやってきた。お前を捕まえる」
「やれるかなぁ?」
「やってやるさ」
にやりと不敵に笑った秋志に、鬼も楽しそうに顔を歪めた。