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その後、春一達はずっと秋志についていた。最初の出会いからは考えられないほど、彼らは秋志に懐き、そして秋志から何かを学び取ろうとしていた。いつしか「トランプ」という名前もあまり聞かれなくなっていった。
「お前らさー、学校行けよ。刑事と不登校児が一緒にいたら結構問題だろうが」
例の公園でアイスを食べながら、秋志が困ったように言う。三人はてんで意に介していない。
「知らねーし」
「別にどーでもいいヨ」
「秋志ー、ジュース飲みたい」
それぞれ好きなことを言う三人に、秋志は笑顔に怒りマークを付けた表情で、飲みかけの缶コーヒーの缶を強く握りしめた。
その時、秋志の携帯電話が鳴った。
「何だ秋志、サボりがばれたか」
「給料泥棒」
「税金泥棒」
「うるせー!今日は非番だ!」
言い返してから通話ボタンを押す。
「もしもし?……ああ、いいよ。おう、待ってる。んじゃ」
短い電話を切ると、三人の顔がにやけていることに、秋志は気が付いた。
「秋志、女か?」
「隅に置けねーじゃねーノ」
「スケベ」
「待て!どうしてわかった!?つか琉妃香、スケベってなんだ!」
顔を真っ赤にしながら慌てふためく秋志に、三人はいよいよ面白そうだ。にやにやしながら秋志を見る。
「何、今から来んの?」
「会わせろヨ」
「物好きな女の人見てみたい」
「誰がオメーらなんかに会わせるか!散れ散れ!」
冗談じゃないという風に手を振って三人を邪魔者扱いする秋志だったが、三人は動く素振りすら見せない。
「ちーれー」
春一を無理やり立たせようと襟首を掴む秋志だったが、その手は乱暴に払いのけられた。
「何、そんなに会わせたくないわけ?相手キャバ嬢とか?」
「ランキング何位?」
「どこの店?」
「キャバ嬢じゃねぇよ!普通の女だって!」
「じゃあ会わせろよ」
「そーだそーダ」
「疚しいことでもあんのか?」
「そーゆー問題じゃねぇっ!ああ、俺段々藤さん的立ち位置になってきてんな……」
そんな会話を繰り返していたら、駐車場に一台の車が停まるのが見えた。NSXだ。春一達がそのNSXに注目していると、その車から一人の女性が降りてきた。すらっとした体型で背は高く、NSXから降りていなければモデルと見間違うほどだ。
「すげぇ、あのNSXねーちゃんが運転してたのかよ」
「カッケェー」
「あの人すごい美人」
「来ちまった……」
「え?」
三人の声が重なる。秋志の一言に、三人が一斉に彼を見る。秋志は両手で頭を抱え、項垂れていた。
「おい、秋志、まさか……」
「あのネーチャン……」
「彼女ぉ!?」
琉妃香が言うと、秋志の顔が今まで以上にぼっと赤くなった。もう隠しきれない。
「秋志、ごめん、待たせちゃっ……て?」
やってきた由良が見たものは、項垂れる秋志と、アイスの棒を手にした三人の中学生だった。