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「久しぶり、由良さん」
「おーっ、ハル坊、元気してた?」
「元気っすよ。由良さんは?店繁盛してますか?」
「おかげさまでね」
春一がやってきたのは、一件の中古車ショップ。中古車販売から車の修理・整備まで行っているその販売店で、春一と彼よりも十歳ほど年上と見られる女性が話している。
由良と呼ばれたその女性は、長い髪を後ろに流し、前髪は赤く染めていた。スタイリッシュなスーツに身を包み、大人の雰囲気を醸し出している。彼女はこの中古車ショップの代表取締役であり、そして春一の知り合いでもあった。
「どうしたの、ハル坊?パーツでも見に来た?」
「いやそれが、事故で車オシャカになっちまって……」
「事故!?大丈夫なの?」
「事故ったのは俺じゃないから、俺は大丈夫なんだけどね。車が全損イッちまったから、ちょっと見してもらおうと思って」
「そっか。そういうことならゆっくり見てって。ハル坊なら安くしとくよ」
「ありがと」
春一は由良と一緒に車を見て回った。メーカーは問わず、たくさんの車種がある。プレジデントやキャデラック、GTR、FD、インプレッサ、レガシィ、ハコスカ、コルベット……普通の乗用車はないが、VIPカーやアメ車、旧車まで、様々な車が取り揃えられている。
「何にしようかな~」
春一はウキウキとした表情で、店の隅々まで車を見て回った。そして、一つの倉庫の前で立ち止まった。倉庫はシャッターが半開きになっており、そこから一台の車が顔をのぞかせていた。
「まだ、大事に取ってあるんだね、このFC」
春一の顔に、ふっと悲しみの影が落ちる。倉庫に入っている真っ白なFC。今にも動き出しそうで、良く手入れされている。
「捨てられないよ……この車は」
「もう、四年も経つんだね。あれから」
「四年……か。そうだね。あの時はハル坊もジョーも琉妃香もまだ中学生で……」
由良が言葉に詰まる。込み上げる涙を必死に堪えて顔を上げる。
「思い出させてゴメン」
「いいの。それに、思い出は思い出さないとなくなっちゃうから」
由良の無理な笑顔に春一は目を伏せて、FCを見た。
(秋志……何で、由良さん残して逝っちまったんだよ?)