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春一が病院から知らせを受けて飛んでいくと、ベッドには傷だらけの夏輝が寝ていた。まだ意識は戻らないらしい。
春一はベッドの脇にヘルメットを置いて、椅子に腰かけた。ギシ、と椅子が軋む音やけにうるさく聞こえる。
しばらく座っていると、部屋のドアがノックされて、医師と看護師が入ってきた。春一は立って会釈して、医師の言葉を待った。
「同居人の方ですか?」
「はい」
医師は頷いて、傷の具合を話し始めた。
「内臓や脳に損傷はありませんが、打撲がひどく、肋骨と鎖骨を骨折しています。意識はもう少しで戻るでしょう」
「そうですか。ありがとうございます」
春一が頭を下げると、医師は軽く頭を下げて部屋から出て行った。
それからしばらくすると、夏輝が軽い呻き声を上げた。春一はすぐに立ち上がってベッドのそばに寄った。
「ハ……ル」
「夏、大丈夫か?」
「はい……。すみません、車を壊してしまいました……」
「お前な、こんな時になんだけど、殴るぞ?んなことどうだっていいっての。……無事で良かった……!」
心から安堵の表情を浮かべる春一に、夏輝は「すみません」という言葉を発しかけて飲み込んだ。
「ハル、今回の事件ですが……」
「事件のことは忘れろ。今のお前は妖万屋である前に患者なんだから」
「いえ、言わせてください。私はハルの助手ですから」
「お前ってそういう所頑固だよねー」
春一はため息をついて、頭をぼりぼりと掻いた。少し躊躇った後、「聞こう」と言った。
夏輝は自分が見たものの全てを春一に話した。妖怪の乗る白いシルビア、そしてそれが不自然なほど暗い闇に消えたこと、事故をした後に走り去るシルビアを見たこと、一つの情報も漏らさず、詳細を伝えた。
「わかった。お前の調査結果は無駄にしねぇ。後は俺に任せて、療養しろ」
「はい、ありがとうございます」
春一は頷いて、ヘルメットを手にした。
「また来るよ、じゃあな」
それだけ言って、彼は部屋を出た。