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夏輝はその夜、山道を車で走っていた。例の事件の調査をするため、一番新しい事故の現場へと向かっている最中だった。
すると、彼が運転する車の前に、一台の白い車が現れた。
(幸か不幸か、出会ってしまうとは……)
夏輝は車に明るくはないが、目の前の車が例の車だということはわかる。最大限の注意を払いながら、後ろについて走る。
(あれは……!)
前を走るシルビアが、窓から手を出して挑発してくる。バトルを仕掛けているのだ。
夏輝は迷った。ここで勝負に載って妖を試すべきか、安全を第一に考え乗らないべきか。少しの間考えた結果、このまま様子を見てみようという結論に達した。勝負には乗らず、このまま後ろを走ってみる。妖の出方を窺う。
しばらく走ると、シルビアは再度挑発をしてきた。夏輝はそれに乗らず、追従を続けた。山は下りに入り、そろそろ事故現場だ。夏輝は事故現場まで行ったら車を路肩に停めようと考えていた。その刹那―彼の前から、シルビアが消えた。車のライトが照らすのは、夜の闇だけだ。
そこで夏輝は異変に気が付いた。確かに今は夜だ。視界は悪い。だが、見えなさすぎる。黒いマジックで塗りつぶしたような、違和感のある黒い闇が目の前に広がっている。
これは変だと理論でなく直感で気付いた夏輝は、すぐに車を左へ寄せて停車しようとした。しかし、遅すぎた。
闇の後に突如現れたのは、白いガードレール。
「しま……っ!」
急ハンドルを切り、ブレーキを目いっぱい踏み込む。しかし車はもちろんすぐには止まらず、そのままガードレールに衝突した。その衝撃で、夏輝の意識は途切れかかった。しかし彼は力を振り絞り、何とか顔を上げた。すると、黒い闇の中を白いシルビアが走っていく光景が見えた。さっきまでとは違い、周りも薄暗くはあるが、見えている。夏輝はそれを確認すると、静かにまどろむ意識の中へと落ちて行った。