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今日は土曜日。日曜日に向け、夜更かしでも飲み明かしでも何でもできる曜日である。大学が休みの春一は、家で課題と向き合っていた。時折辞書を使いながら、英語とにらめっこをしている。
店を閉めた夏輝がダイニングに上がると、春一がシャーペンで頭をこつこつと叩きながらパソコンを立ち上げていた。
「少し休憩したらどうですか?すぐ夕飯を作ります」
「おう、そうするか。今日のメニューは?」
「ラザニアです」
「いいね」
春一は机の上を片付けて、ソファへと移った。テレビを見ながら夕飯が出来上がるのを待つ。今は時間的にどのチャンネルも夕方のニュースを伝えており、春一は適当に局を選んでそれをぼうっと眺めた。
『続いて、県内ニュースです。昨日の深夜、数珠市の山で自動車の事故が発生しました。車はガードレールを突き破り谷底に落下。運転をしていた山路透さん、二十一歳が重傷を負いました。この山での事故は今月に入りすでに八件目ということで、県警では注意を呼びかけています』
(事故か……。今月が始まってまだ半分……。それで八件は多すぎる。何か事件が絡んでるのか?)
春一は若干眉間に皺を寄せたが、自分の考え過ぎだと頭を振った。
「どうかしたんですか?」
スープを運んでいた夏輝が春一に声をかけた。
「ん、ああ。県内で事故が続発してるってんで、運転するときは気ぃつけねぇとなって思ってさ」
「ああ、数珠峠で発生している連続事故ですよね?前を走るシルビアに勝負を仕掛けられて、それに乗ってしまうと事故をしてしまうっていう……」
「そうなのか?」
「ネットに載っていましたよ。最近巷を騒がせているので、情報もそれなりに多くあります。尤も、信憑性には欠けますが」
「ふ~ん……」
春一は顎に手を当てて考えていたが、その考えはチャイムの音で消された。すぐに夏輝が玄関へと出ていく。すると、少しして傷だらけの男を連れてやってきた。
「ハル、事故の被害者の方です。妖のことで相談があると」
「……話を聞こう」