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時は十二年前に遡る。春一達が小学校に入学した時代。髪もまだ全員黒く、ピアスも開いていなかった時。
三人は入学してクラスが一緒になると、すぐ仲良くなった。小学校一年生の頃はクラスメート全員が友達のようなものだが、この三人は特に仲が良かった。元々性格が似ているということもあり、学校にいる間も終わっても、三人は毎日一緒に遊んだ。
そうして一学期が過ぎ、二学期に入った時、事件は起きた。
春一と丈は、毎朝一緒に登校していた。琉妃香だけ家が別方向なので、登校だけは分かれていた。大方春一と丈のどちらかが寝坊をするので、いつも琉妃香が教室で二人を待っていた。そして今日も、春一の寝坊のせいで遅れて教室にやってきた二人は、異変に気付いた。
いつもいるはずの席に、琉妃香がいないのだ。赤いランドセルはあるのに、琉妃香本人がいない。彼女は今日日直ではないはずだし、どこかへ行くなら他のクラスメートに言伝を頼むはずだ。
「ねぇ、琉妃香知らねぇ?」
春一が近くにいたクラスメートの男子に尋ねると、その子は困ったように目を逸らした。何かを知っている表情だ。
「おい、琉妃香どこだヨ?」
丈が肩を掴んで揺さぶると、男の子は泣きそうな顔になって口を開いた。
「三年生に連れていかれたんだよ!五人くらいで来て、琉妃香ちゃん連れて行っちゃった」
その言葉を聞いて、春一と丈の目が見開かれる。丈も相手を揺するのをやめ、放心状態で固まる。
「……どこ行った?おい、どこ行ったんだ!?」
春一が声を荒らげて聞くと、男の子は震える声で「プールの方」と言った。春一と丈はそれを聞くや否や、すぐに駆け出した。