プロローグ
シリーズ、TRUMPの三部目です。
今作品だけでなく、前作も読んでいただけると幸いです。
プロローグ
この世界には妖怪が蔓延っている。
そう伝えられたのは今よりも何代も前の人間達までだった。今の人間達は、妖怪の存在など笑い飛ばす。いるはずない、と。先祖たちが作ったまやかしの存在だと。
しかし、妖怪は現存する。その息の根をひっそりと殺しながら。人間達に紛れ、その正体を隠しながら、この世界に棲んでいる。
人間達の無理な経済成長についていけなかった妖怪達は、今や世界の隅に追いやられている。本来共存していたはずの人間と妖怪は、人間主体の世界になったまま、今回っている。
人間と妖怪の均衡が崩れ、世界は不安定で無秩序な状態を保持していた。
そんな妖怪達が存在する現在の世界に、妖怪達の力になって立とうという人間がいる。人間達に虐げられる妖怪達の力になり、道を踏み外し罪を犯す妖怪達を正す存在。それが四季文房具店副店主の四季春一である。
四季春一という一人の少年こそ、妖怪のみが放つ妖気という気を感じ取ることができ、それ故に妖怪と人間の間に立つ者である。妖万屋という看板を掲げ、日々妖怪と向き合っている。
彼をサポートするのは助手兼四季文房具店長の夏輝、そして春一の幼馴染である七紀丈、五木琉妃香、少年課の藤刑事、情報屋の夢亜。
妖怪世界にも秩序がないわけではない。枢要院と呼ばれる妖怪世界の警察のような組織が妖怪達を取り締まっている。しかし、彼らも妖怪だけに、人間との諍いの時には出られない。そんな時にも春一が動く。妖怪についての全ての揉め事に首をつっこんではそれらを解決していく。それが四季春一の正体であり、妖万屋の仕事だった。
彼を支える二人の幼馴染。丈と琉妃香に加え春一の三人は、かつてトランプと呼ばれ恐れられた伝説のチームである。春一の「一」が表わす「エース」、丈が表わす「ジョーカー」、琉妃香の「妃」が表わす「クイーン」が切り札ということで、その名前がいつしか勝手につけられた。本人たちは不良とみられることに不満を感じていたが、今もそのチームワークに乱れが起こることもなく、寧ろ絆を深めながら事に当たっている。
春一は今日も自慢のバイクを駆りながら、妖怪と人間の間を取り持つ仕事に向かう。