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第四話 想い

なんだか暗い・・・まあ、私が書くお話しで明るいのは無いんだけどね・・・

 新井波の『力見』は一日で終わった。

 合格だったわけではない。

 再度挑戦することも叶わないほどだった。


 同行した術者は三人。

 それぞれが、他者の潜在能力を引き出すのに秀でた人間だ。

 そろそろ引退を考えるほどの老年だが、『力見』は経験が物を言うので今だ現役の三人だ。

 その三人の意見が一致した。

 彼は術者にはなれないと。


 彼の将来はそこで決定してしまった。

 『組織』のことを知る一般人として『協力者』となることを。


 彼の理想と現実があまりにも違いすぎる。


 彼は嘆き悲しみ、そして、心を歪めてしまった。


 それは彼の両親も、彼を一時期預かっていた夫婦も気がつかなかった。


 心の中はどうであれ、表面上は落ち着きいつもの生活に戻っていった。


 そして彼は、誰にも気が付かれずに『協力者』の『裏側』に行ってしまった。

 『表』の『協力者』として活動したことが無いため、『表』では名前はあがらず、しかし、『裏側』のごく一部の人間には知られた存在として彼は生きはじめた。




 そして、彼はある人間の存在を知ってしまった。

 その人間は、生まれながらに『力』を持ち十代で『組織』の幹部となった天才。

 それだけでは彼は何も思わなかっただろう。

 少しは気にするだろうが、かかわりがない以上それほど心は動かされないはずだった。

 しかし、彼はその人間の存在を知ってから心を闇へと浸しはじめた。

 なぜなら、その人間は彼と同世代なのだ。

 それが彼の嫉妬心と憎悪を呼び、心を狂わせ始めた。



 彼の『裏側』と、その人間の生き筋が交差する。



 彼の『裏側』の仕事の一つがその人間と係わってきた。

 彼の仕事は『組織』が人工的に創った人間が受精出来るかどうか、というものだった。

 彼は定期的に『組織』の施設に通い、外見上はほぼ普通の女の体を抱いていた。

 まるで人形のように何も反応しない女を…。


 そして、転機が来た。

 その仕事をしばらくしなくていいと、通知があった。

 暇つぶしにその理由を知るために、何度か施設に行き聞きまわった結果、彼は、彼のことを知ってしまった。

 そして、彼が自分のすぐ近くにいる事を…。

 しかし、そこで何を思おうとも何も出来はしない。


 彼は『組織』の幹部。

 自分はただの術者の子ども。

 何もできない。


 そう『組織』に関わる世界では。

 だが、彼は彼に『表の世界』で、『組織』と全く関係ない世界でなら関われる。

 同世代だったのが、彼に幸運をもたらした。

 二人は同じ大学の学生だったのだ。

 そして、彼と彼は知らぬ仲ではなかった。



 おべっかが得意ないけ好かない奴。

 彼が彼に持っている印象だ。

 別に彼が何かした、という訳ではない。

 ただ、彼と彼は共通の友人がいてチョッとした噂を耳にしたことがあるだけなのだ。

 その噂が、『よく休むが、教授達の『お気に入り』で、レポートや特別講義で単位を取っている』というものだ。

 ただ、それだけで彼を毛嫌いしていたわけではない。

 その程度の噂なら他にもある。

 『あの女は教授に体と引き換えに単位をもらった』とか『あいつは学長の親戚だからどんなにサボっても落第はしない』などなど、たきにわたる。

 それらの噂になっている人物、全てを嫌ってはいない。

 全く係わりがないため、顔すら知らない人間も多数いる。

 しかし、彼は彼を嫌っている。

 人間として。

 それは、彼は彼なりに噂が本当のことだと認識し、彼が彼にしたたった一つの行動が決定打となっていた。


 それは彼の噂を耳にして、そんなに時はたっていない頃だった。

 彼の顔と名前はなんとなく一致していた。

 そして、その頃彼をしばらく見かけていなかった。

 講義がいくつか重なっているから、週に2~3回は見かけていた。

 しかし、一ヶ月ほど見ない日が続いた後、教授の研究室などに出入りしている彼を見かけた。

 そして、一度研究室で教授から個人講義を受けている最中に出くわしたこともある。

 その時は何も思わなかった。

(ふーん)

 その程度の認識しか持たなかった。

 その幾日かたった日、彼は彼とすれ違った。

 その時、彼はバランスを崩してしまい手にしていた荷物を落としてしまった。

 彼と彼は同時に拾い始めた。

「わりい、わりい。ありがとう」

 彼はそう言いながら拾っていた。

「先輩なんですね、大変そうですね」

 彼は拾ったものを渡しながら言った。

 その拾ったものの中には、彼がレポートのために書いたメモが含まれていた。

 それを、彼は読んでしまったのだ。

「はい」

「ああ、ありがとう」

 彼は笑顔でそれを返した。

 その笑顔が、冷笑に見えたのは彼の気のせいではないはずだ…。

 だが、その笑顔を見た瞬間、彼は彼をなぜか嫌悪した。


 ただの勘違いなのか、事実なのかわからない。

 彼は彼のその一言と表情で嫌悪した。

 きっかけは一瞬だった。


 そして彼は彼が『組織』の『天才』であることを知ってしまった。


ごめんなさい。中途半端な終わりかたして・・・

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