表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
脅され、犯され  作者: ぱぴぷ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/16

過去

私は、どんなに不安でも、暁人の前では「物分かりのいい完璧な彼女」でいようと心に誓っていた。

だけど――最近、暁人の周りがおかしい。


「あきとクーン! おはよー!」

「ねぇねぇ、この前のゲームの続き教えてよぉ」


教室でも、廊下でも、中庭でも。

派手な女子たちが、やたらと暁人にベタベタと距離を詰めてくるようになったのだ。

暁人は「うざい」「離れろ」と冷たくあしらっているけれど、あの子たちは全く気にする素振りを見せず、暁人の腕に胸を押し当てたり、肩に腕を回したりしてくる。


(……やだ。触らないで。暁人は、私のなのに)


胸の奥で、ドス黒い靄が渦を巻く。

今すぐあの子たちの髪の毛を掴んで、暁人から引き剥がして、ボコボコにしてやりたい。

でも、そんな狂った真似をしたら、また暁人に引かれてしまう。嫌われて、捨てられてしまう。


だから私は、爪が手のひらに食い込んで血が滲むほど我慢して、笑顔を作っていた。

そんな私のギリギリの精神状態に、スッと入り込んできたのは、最近仲良くなったクラスの女の子だった。


『空ちゃん、最近すごく辛そう。……もしかして、暁人くんのこと?』

『うん……』

『だよね。あの子たち、露骨すぎるもん。……ねぇ、空ちゃんは優しすぎるよ。あんなの、彼女として怒って当然だよ?』


親身になって話を聞いてくれるその子の言葉は、私の心の奥の「黒い感情」を、甘く、優しく肯定してくれた。

『男の人って、ハッキリ言わないと流されちゃう生き物だから。空ちゃんがしっかり手綱を握ってないと、絶対浮気されちゃうよ?』

『浮気……っ、そんなの、絶対にやだ……!』

『私なら、他の女子と話すの絶対禁止にするなー。空ちゃんも、それくらい言っていいんだよ。暁人くんを守るためにもさ』


――暁人を、守るため。

その言葉が、私の頭の中でカチリと音を立ててハマった。

そうだ。私が我慢してるから、あの泥棒猫たちが調子に乗るんだ。

暁人は悪くない。悪い虫が寄り付く環境が悪いんだ。私が、暁人を守ってあげなきゃ。



その日の放課後。

私は、誰もいない教室で暁人を問い詰めた。


「ねぇ、暁人。もう、他の女子と話すの禁止にして」

「……は?」


暁人は、信じられないものを見るような顔をした。


「何言ってんだよ。俺から話しかけてるわけじゃねぇし、挨拶されたら返すくらい普通だろ」

「挨拶もダメ! 目も合わせないで! ……あと、男友達と遊ぶのも極力減らして。暁人があの子たちに会うかもしれない場所には、絶対に行かないで」

私が一気にまくしたてると、暁人の顔に明らかな「苛立ち」と「呆れ」が浮かんだ。


「お前……最近マジでおかしいぞ。さすがにそれは異常だろ。だるいわ」


――異常。息が詰まる。

その言葉が、私の脳の血管をブチッと切った。


「ッ……なんで!? なんでわかってくれないの!?」


ドンッ!

私は感情のままに、暁人の胸を強く突き飛ばした。


「私は、暁人が大好きなのに!! 他の誰かに盗られるのが怖くて、狂いそうなのに!! なんで私の気持ちをわかってくれないの!?」

「おい、空……やめ……」


バシッ!!

私の右手が、無意識に暁人の頬を思い切り張っていた。


「……っ」


暁人が、目を見開いて私を見る。

私も、自分が何をしたのか一瞬わからなかった。でも、私の手は止まらなかった。


「暁人が悪いんだよ!! 私の言うこと聞いてくれないから!!」


ポカポカと胸を叩き、足を蹴り、泣き叫ぶ。


「私だけを見て!! 私以外、誰も見ないでよぉッ!!」


暴力なんて振りたくない。傷つけたくない。

でも、こうして力ずくでわからせないと、暁人が私の手からこぼれ落ちてしまう気がして、恐ろしくてたまらなかった。


「……はぁ、はぁっ……」


一通り暴れて泣き崩れる私を、暁人はただ呆然と、怯えたような、絶望したような瞳で見下ろしていた。


(あ……怖い顔、してる)

でも、もういい。引かれたっていい

私の愛が重くて逃げ出したいなら、絶対に逃げられないように、手足を切り落としてでも私の側に縛り付けておけばいいんだから。

翌日、私は暁人のスマホに、隠しアイコンで位置情報共有アプリをインストールした。

さらに、二時間おきに自分の状況を私にメッセージで報告するよう義務付けた。少しでも遅れたら、何度でも電話を鳴らし続けた。


あはは……あははははっ!

安心する。スマホの画面を見れば、暁人が今どこにいるか、いつでもわかる。

暁人を苦しめる女たちは、私が全部排除してあげる。

暁人は、私がいなきゃダメなんだから。

永遠に、私だけの箱舟の中に閉じ込めて、愛してあげるからね。

――私は、もう二度と「物分かりのいい彼女」には戻れない。

ただひたすらに、彼のすべてを喰い尽くす、貪欲な化物になっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ