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脅され、犯され  作者: ぱぴぷ


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16/21

岸辺 桃花視点

「あいかちゃん、今日はありがとうね。楽しかったよ」

「ういーす。またお願いしまーす!」


駅前のカフェで男と別れ、ウチは小さく息を吐いた。

ウチはお金稼ぎのために、いわゆる「パパ活」をしている。おっさんとお茶したりご飯を食べたりするだけで、コンビニのバイトなんて馬鹿らしくなるくらい効率よくお金がもらえるからだ。


中3から始めて、もうすぐ一年になる。周りの友達には“大人”までやっている子もいるけど、ウチは絶対にやらない。おっさんに触られるなんてマジでありえないし、食事だけで上手く逃げ切る自信があったから。


「あいかちゃん、今日もよろしく」


次のおっさんが来た。「あいか」はパパ活用の偽名だ。


「はい! よろしくです! きょーはどーします?」

「いい場所予約してるから、期待しなよ」


(はー、この矢野って人、本当は苦手なんだよね……)


腕に刺青が入っているし、やたらと距離を詰めて“大人”を迫ってくる。でも、金払いは一番いいし、なんとか躱せているから今はまだ切らずにいる。……そろそろ潮時かな。

高級なディナーをご馳走になり、店を出たところで、ウチは笑顔を作った。


「美味しかったですー! また連れてって下さいねー」

「それは良かった。……待って、今日はまだ付き合ってほしい。お手当、弾むからさ」

「えー、何するんですかー?」

「少しドライブしよう。あそこに車あるから……」

「え……ごめんなさい。前も言いましたけど、ウチ食事しかやってないんで」

「いいから、いいから……」

「痛っ……!」


いきなり、腕を強い力で掴まれた。


「離して下さい!」

「少しだけだから」

「嫌です! それに、あの車、矢野さんのじゃないですよね!?」


矢野の車はベンツのはずだ。だけど、あそこに停まっているのは黒いハイエース。

嫌な予感がして振り払おうとした時、ハイエースの中から見知らぬ男が二人、ニヤニヤしながら降りてきた。


「お! 今日のはめちゃくちゃ当たりじゃん!」

「だろ? ピチピチのJKだぜ」

「やべー、ぜってー俺のモノにするわ」

「ふざけんな! 俺が最初に見つけたんだ。俺らでマワして味見した後は、俺の女にする」


え……。何、コイツら……。


(や、やばい! 逃げなきゃ!!)


「おっと、逃がさねーぞ……へへっ」

「やだ……離して下さい……ッ!」

「離すわけねーだろ。これからお前は、俺らのおもちゃなんだからよ」


嘘っ……ヤダ、ヤダ! そんなの絶対ヤダ!!

ウチはパニックになり、必死で叫んだ。


「おいおい……泣いてんじゃねぇよ。今まで沢山の親父共とヤってきたんだろ? 今更カマトトぶってんじゃねぇぞ」

「ヤってないです……そんな事……ッ!」

「え! それじゃあ、経験は?」

「ない……です。だから、見逃して下さい……初めては好きな人と……」

「ぷはははッ! マジかよ! パパ活やってて処女かよ!」


男たちは下劣に笑い合った。


「決めたわ! 絶対俺が最初な! 文句ねぇよな?」


……そんな。見逃してもらうどころか、逆に相手を煽ってしまった。


「ほら! さっさと乗れ!」

「嫌っ、助けて!!」


必死に抵抗するウチの頬に――


バチンッ!

重い衝撃が走り、ウチは地面に崩れ落ちた。口の中が切れ、血の味がする。


「おい、鼻血出てんじゃん。あんまやり過ぎんなよ」

「わりぃ、ついな」


ああ……終わりだ。ウチ……コイツらに好き勝手されちゃうんだ……。

はは……笑える。こんな事になるなら、パパ活なんてやらずに普通にバイトしとけば良かった。自分の浅はかさを呪っても、もう遅い。


「へへっ……今日たっぷり可愛がってやったら、明日はS漬けにしてやるからな。期待してろよ」


腕を引かれ、無理やりハイエースの暗い車内に押し込まれそうになった。

――その瞬間。


バンッ!!!


窓ガラスに硬い石が直撃し、クモの巣状のヒビが入った。


「誰だ! コラァ!!」

「あ?」


ガンッ!!

ドアを開けて確認しようと外に出た男の顔面に、無慈悲な蹴りがめり込んだ。男は一発で白目を剥き、頭から血を流して崩れ落ちる。


ガシッ!

「なっ……!」


もう一人の男も、襟首を掴まれて車から力任せに引き摺り出された。

鈍い打撃音が響き、男は口から血を吐いてアスファルトに転がった。


「誰だ! てめぇは!!」

矢野が怒鳴り声を上げる。

そこに、街灯の光に照らされて立っていたのは――。


音村 暁人

ウチの、クラスメイトの男だった。

暁人とは同じクラスというだけで、今まで会話らしい会話をしたこともなかった。男友達からは「アイツとだけは関わるな」と忠告されていたほどの不良だ。

中学の頃から暴れまくっているヤンキーで、今年の新入生ながら、すでに学校の二大美少女と仲が良く、その中の鳴上 空とは、無理矢理付き合ってると言われている最悪の噂が絶えない男。


「おい! クソガキ! 俺らにいきなりこんな事して、何が目的だ!!」

「…………」


暁人は矢野の怒声に一切答える事なく、無言で間合いを詰めた。


ガンッ!!

躊躇のない膝蹴りが、矢野の股間を正確に捉える。


「かっ!……ぁ……ッ」

矢野が声にならない悲鳴を上げて悶絶し、その場に崩れ落ちた。


「て、てめぇ……いきなり……」

「………」


暁人は表情一つ変えず、矢野の上にマウントを取り、無言で拳を振り下ろした。


「ぐっ……もうやめ……おえっ……」

圧倒的な暴力。一切の容赦がない、冷徹な制圧。

しばらくすると、遠くから野太い声が響いた。


「おい! お前ら! そこで一体何をしている!!」

見回りの警察官が、大声で走ってくる。


「……おい。行くぞ」

「う、うんッ……!」


ウチは差し出された暁人の手を取り、夢中で走り出した。



十分くらい走り続け、人気のいない公園に着いた。


「はぁ……はぁ……。ここまでくれば大丈夫だろ」

「はぁ……ふぅ……そう……だね」


一息つき、公園のベンチに座る。


「……吸う?」

暁人がポケットからタバコを取り出し、俺に差し出してきた。


「あ……ごめん。ウチ、吸わないんだ」

「あー……おけ」


シュボッ、と火をつけ、暁人が深く煙を吐き出す。


「………」

「………」


静寂の中、ウチはようやく震える声で口を開いた。


「あの……助けてくれて、ほんとーにありがとう……。あのままじゃ、ウチ……」

「どういたしまして。……今度から、気をつけるんだな」

「でも……どーして助けてくれたの? ウチら、あんまり絡み……ないよね?」

「世話になってる先輩にクラブ付き合わされる事があってな。そこでうるせぇ奴がいるから先輩に聞いてみたら、ソイツが裏でめちゃくちゃやってるヤバい奴だって聞かされてよ。そんで、そんな奴とお前が一緒に歩いてたから、ちょい気になって着いていったら……案の定ってカンジだ」

「そ、そうなんだ……」


「お前、アイツとどんな関係?」

「パパ活……相手だよ。食事だけでお金貰えるからさ……」

「あー……そゆことね。悪い大人はすげーいるから、これからは気ーつけな」

「うん……ウチ、もーパパ活やめる。絶対に」

「そうだな。その方がいい。……んじゃ、俺帰るわ」


立ち上がろうとする暁人の背中を見て、ウチは咄嗟に声を上げた。


「え! 待って! 連絡先、交換しよ!」

「ん? あー……おけ」


やった……! 暁人の連絡先ゲットー!


「ねぇ? まだ時間ある?」

「あるけど……何すんの? 俺ら未成年だし、入れる場所もうねーぞ」

「あ、そっか……。それじゃあ、ウチ暁人の事もっと知りたいから、ここでしばらくお話しよ?」

「……少しだけな」


それから、ウチは公園のベンチで、暁人の事をたくさん知った。

噂で聞いてたような恐ろしい不良じゃなく、不器用だけど真っ直ぐで、すっごく優しい奴だってこと。


(やばい……どうしよう)


ウチはもう、暁人にメロメロ、完全に大好きになっちゃった


「……タバコ、吸ってみたい!」


ウチがそう言うと、暁人は少し驚いた後、苦笑いした。


「お……マジか。んじゃこれ……咥えた後、火付けるから、そん時……」


吸い方を教わり、恐る恐る息を吸い込む。


「ゴホッ! ゴホッ!」

「あはは、最初はそんなもん」

「何これー、臭いー。でも……なんか、ちょっと大人になった気分かも」


隣で笑う暁人の横顔から、もう目が離せなかった。


――この日からだ。ウチが、音村暁人という男に、狂おしいほど執着するようになったのは。

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