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クラスで目立たない超絶陰キャの僕は、三人の美少女ギャルに毎日言い寄られてかなり困ってます。  作者: 戸松原姉線香


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綾エンド

 君の手を引いて走り出してから、数年後。


「いやはや……。やはり君のおかげで企業間での発言力が強まったよ。身内の人間が、国際組織で仕事をしていることを知れば、人が変わったように小鳥遊家に擦り寄ってくる。本当に君のおかげだよ、曇くん。ありがとう」


 綾ちゃんのお父さんが、僕に感謝を述べてくれた。


 高校を卒業後、大学に進学するかを考えていた僕。どこから出てきた情報なのかわからないけれど、僕の出どころを知った大学の人間たちは『是非』と、勧誘が舞い込んできた。


 日本国内の大学、アメリカやイギリスといった世界的にも超名門の大学から勧誘されるほどであった。しかしそれは僕個人の力ではないと常々感じていたため、その全てを断ったのだ。まあ、勧誘されなくとも地頭で入学できるレベルではあるけども。


 正直言ってどこでもよかった。どこの大学も同じような物だろうと思っていた。だからこそ迷っていたのだ。大学の近辺を調べるのは面倒くさかったし、そもそもその大学がどんなところなのか調べることも。


 そんなことを色々と考えていた時に、あるところから勧誘がきた。


 それが現在、僕の職場となっている国際組織であった。その国際組織には父さんがいるし、なんなら僕と関わりのある人間がいるはずだった。だから最初はあまり乗り気ではなかったが、僕に勧誘をしてきた人が言った言葉で、僕に火がついたのだ。


『あなたは、実の父親に管理されて育ったということですが……これからも自分のような人間が生まれてくると考えると、どう思われますか?』


 その質問の答えは、すぐに答えられた。


『勘弁してほしいですね』


 そうして、僕は国際組織に加入したのだ。


 加入したと言っても簡単に入れるわけじゃない。きちんと規則があるし、きちんとテストを受けることでそれが実現するのだ。施設で教育を受けて育った僕でも、そのテストの内容は理解に苦しむ物だった。


 何というのだろうな。倫理観について問われるものや、何が一番正しいのか、何が一番正しくないのか、というようなまるでこれまでのテストとは大きく違う、常識を覆すようなものであった。


 そんな問いに答えなどない。自分の意見や考えを伝えることで、その問題の解答となるのだ。つまりは……そうだな……。僕の人間性を確かめていた、というのが正解だと思う。試していたのだ。


 そんな場所で仕事をしていると、当然父さんと対面することがある。晴も雛ちゃんも母さんも、ほかの施設の子どもたちも。


 親不孝だと言われても構わない。僕は、僕の手で、僕のような人間を作り出す、悪しき施設を潰したいだけなのだ。それだけが仕事をする理由ではないのだけれど。世界中の国がどうすれば豊かになるかなどの難しいものも担当している。


 はっきり言おう。この仕事は超絶ブラックだ。



 ****



「ただいま……」


 リビングの電気がついていなかった。もう、彼女も寝ているのだろうか。


 いいや、それはない。僕が帰ってくるまでずっと彼女は起きているはずなのだ。どんなに帰りが遅くても、僕の帰りをずーっと待っている女の子なのだ。おそらくどこかにいるだろう。そのうちすればあちらから登場するに決まっている。


 パチリとスイッチを押してリビングの電気をつけた。すぐ近くに彼女がいた。


「わぁー、まぶしいよぉー」

「ずっと暗いところにいるからだよ。それよりさ、なんで電気つけてなかったの?」

「曇くんを驚かすためー! どうー? びっくりしたー?」

「多少はね」

「やったー!」


 至極当然のように僕に抱きついてくる彼女。感触は暖かくて柔らかい。見れば彼女は水玉模様のパジャマを着ていた。


「えへへー! おかえりー、曇くーん!」

「うん。ただいま、綾」

「もうー、毎日毎日ー! 待たせすぎだぞー! 本当にボクのことを愛してるなら、ちゃんと早めに帰って来なさいー!」

「ごめんね。お義父さんと話があったから、仕方がなかったんだよ。明日からはちゃんと心がけるからさ」

「お父さんと? どんな話をしたの?」


 う……。それを聞かれると……。別に隠すことでもないから、ちゃんと話すけどさ。


「えーっとね……。これからの僕たちの話だよ。僕と綾ちゃんの話」

「これからの……綾たち……。あぁ……!」


 より一層、彼女は僕を抱きしめる力を強くした。


「えへへ……。好きぃー……」


 僕の伝えたいことを全て察したのか、可愛らしい甘い声を出してきた。やばい、なんだこの子。本当に好きだ。


「僕もだよ」


 お義父さんと話していたのは結婚式のことであった。あの人は、自分の娘を溺愛しているためか、結婚したいと綾が言うとそれはそれは喜んでいたらしい。しかし相手である僕を見せた瞬間に腰を抜かしていた。


 その後、色々とあってようやく結婚できるようになったのだ。


 あの人は当初、僕が相手である点から施設に関わってしまうのではないかと心配していたが、僕が半分絶縁状態であることを報告するとすぐに承諾してくれた。綾の方も、僕との結婚を認めてくれないなら絶縁する、とか言い出して、あの人もあの人で承諾しなければならない状況にあったのだと思う。


 承諾してくれたことは嬉しい。僕は綾が好きだし、綾も僕のことが好きだと言ってくれている。これほどまでに幸せなことはないと思う。


「さてと、お腹が空いてるからご飯を……」

「むぅー! ご飯なんかじゃなくてさぁー……!」

「ん?」


 綾が顔を赤くして言う。


「綾を食べてよぉ……」


 時間が止まった。僕の体も止まる。動くことを忘れる。んん? ん? え、えーっと、何?


「ボクを……綾を……食べてよ……」

「そ、それは、エッチなことがしたいってことなのかな……?」

「ま、まぁ……そ、そんな感じなのかなー……。は、恥ずかしいからあんまり聞かないでよ……」

「……」


 彼女が求めているのであれば、それに応じよう。



 ****



「はっ……はっ……。ふぅっ……あっ……」


 始まって二十分くらいだろうか。綾は完全にバテて横になっていた。


 顔もメチャクチャ赤くなってて、目もとろんとしている。色気の塊、とでも言うのかな。なんかそんな感じになっている。ぐったりとはしていないが、しかしこのまま動くことはなさそうだった。


 赤くなった頬からは汗がたらりと滴る。


「好きだよ」

「綾も……綾も……好き……」


 口づけをした。唇を合わせるだけのものと、舌を絡ませるものとを両方とも。その感触は柔らかくて、暖かくて、甘いようだった。


 そっと抱き寄せ、彼女のすべてを受け入れ、そして愛したい。


 本当の幸せをようやく知ったような気がしたのだった。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。最終話になりますが、楽しんでいただけたのなら幸いです。

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