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クラスで目立たない超絶陰キャの僕は、三人の美少女ギャルに毎日言い寄られてかなり困ってます。  作者: 戸松原姉線香


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第54話 恥ずかしいギャル

「あ、あはは……」


 蝶番さんは血相を変えて僕を見ていた。後ろにいた人は不思議そうにしていたけれど、しばらくしてからすぐに席へ座った。ちなみにこの人との面識はなく、喋ったことなど一切ない。しかし邪魔をしていたのは僕である。大いに反省。


 蝶番さんは動かなくなってしまった。石にでもなったかのように、再生中の動画が突然止まってしまったかのように、一切の動きをしなくなった。静止してしまった。息もしていないのかもしれない。それはもうすでに生命活動を停止しているな。逆に怖い。


 動かなくなった彼女を再起動させるべく、声をかけてみる。


「あのー、蝶番さん?」

「……」

「あのー……」

「……」


 反応なし。対処法なし。しかし問題あり。


 どうしよう。どうすればいいのだろう。どうしたら、彼女は僕に反応を示すのだろう。


 今度は声をかけるだけではなく、軽く肩をポンポンと叩いてみた。


「蝶番さん?」

「……あ、オタク」

「蝶番さん……。やっと反応してくれた。僕、心配になってたよ……」

「え、え……。て、てか、オタク……?」

「え? うん。そう呼ばれてはいるけど」

「オ、オタ、オタク……、なんで……」

「なんで、と言われても。塾に来たんだけど」

「い、今の会話……聞いてたの……?」

「ん?」


 今の会話、というのは、先程の彼女が停止する前に塾の先生と話していた時のことか。


「ああ、うん。それなりには聞こえてきたよ。聞いてたわけじゃなくて、聞こえてきたってことが重要だね」

「あ、あぁぁぁぁぁ〜〜〜……!!! 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ死ぬぅ〜〜〜……!!!」


 急にどうした。いきなり言葉にもならないような悲鳴をあげて、本当にどうしたのだろう。死ぬ? 蝶番さん死ぬのか? それは大変だな、大丈夫だろうか。


 その後の蝶番さんは、自分の会話を僕に聞かれていたということで、急激に恥ずかしくなってしまったためか、顔を赤くしてすぐに両手で隠してしまった。ただ、彼女は手で隠しているものの、隠す寸前に僕とバッチリ目が合い、さらに彼女の赤くなった顔を確認した。


 それに反応したのか分からないけれど(多分そう)相互関係のように、僕も顔を赤くしてしまった。はい、こうして何が作り上げられたのか答えてみてほしい。正解はこれまで以上に気まずい空気が作り上げられたのだ。


 まだ塾に着いたばっかりだぞ。蝶番さんとはしばらくの間会っていなかったし、そもそもその間は塾には顔すら出していなかった。会う前から僕としては気まずいようにも感じられたが、ここまで来ると、なかなか気まずいという空気を超えるものになるぞ。


 彼女は顔を覆い隠している。


 さて、ここからどうするよ、僕。



 ****



 チラチラと視線を感じる。


「隙間から見てるよね、蝶番さん……」

「……」

「……」


 何か言えよ。


 指と指の隙間からの視線はすごく分かりやすかった。チラリチラリと僕の方を見ては、視線を外す、もしくはその指の隙間をなくすようにして、あたかも何事もなかったかなように装った。いや、めちゃくちゃ分かりやすいからね?


 しばらくそのやりとりをする。遠くにいる先生はずっとニヤニヤとしていて、冷やかしてもからかってもいないのだが、妙にイライラする。なんだよその、楽しそうな表情は。こっちは気まずくてしょうがないんだぞ。


 ま、まあ……気まずくさせたのは僕なんだけど、僕が気まずいと思ってしまうのは、完全に蝶番さんが原因だと思っている。期待、という言葉を使った彼女。その意味をようやく察して、ようやく察した挙句に待っているのが、この気まずさ。


「ご、ごめんね。勝手に、何も言わずに来なくなったりして……。僕としても理由があったんだ」

「……」

「実家に帰っててさ、まあ、それだけが理由になるんだけど。ただ、これはとても重要なことだったから、その……外せないことだったから」

「……ん」


 顔から手を離した彼女。


「ん? 今、何か……」

「ん。分かった。言ってくれてありがと」


 気まずさが薄れた……気がする。よく分からんけど。油断禁物だけど。僕が彼女の気に触るようなことをしなければ、言わなければいい。


「アタシもごめん……。あんなこと言って……。強く言いすぎた……」

「い、いや、いいよ。僕の方が悪いんだし」

「あの後、ずっと悩んでた……。アンタ、本当にもう来ないんじゃないかって……。それは、嫌だった……」

「僕も考えたけどね。行こうか、行かないか。なんか、蝶番さんとは仲が悪くなっちゃって、行きにくかったし」

「……ん」

「そ、それに……」


 掘り返すつもりはなかった。でも、口走ってしまう。


「き、期待ってなんだろうって考えてたら、もっと行きにくくなっちゃうし……」


 蝶番さんは何も言わなかった。何も、何も。静かに、していた。


 その瞳は、確かに綺麗なものだった。それでいて、どこか希望に満ち溢れて、とても嬉しく思っている、そんな瞳の色だった。嬉しそうにしつつも、それを表情では表さない。静かに、彼女は佇んでいた、


「……ん。勉強」

「あ、ああ、うん。勉強だね」

「ここ」

「ここだね? うん、ここはこれを使えばできると思うよ」

「……ん。ありがと」

「どういたしまして」


 いつもの感じに戻ったけれど、しかし、どこか恥ずかしさも感じられた。


 先生はニヤニヤから、ニコニコとした優しく見守るような笑みを浮かべていたのだった。

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