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クラスで目立たない超絶陰キャの僕は、三人の美少女ギャルに毎日言い寄られてかなり困ってます。  作者: 戸松原姉線香


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第52.5話 音葉の心

「ウチのこと……好き……?」


 うわぁぁぁぁぁ! やばぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃ! なんか気まずい空気になっちゃってるよぉぉぉぉぉ!


 い、勢いで言っちゃったけど、無理無理無理! こんなの言ってるウチの方が恥ずかしくなっちゃうじゃん!


 こんなの……! こんなのって……!


 耐えられないよ!


「あ、あぅ……」

「あぅ……」


 さっきと同じオタクっちの反応。明らかに動揺している様子。いや、動揺というか、困惑。そのせいでウチも挙動不審になってしまう。


 ヤバイヤバイヤバイ! 今すぐに逃げ出したい! 答えなんか聞かずに、ただひたすらに恥ずかしさを抑え込んでしまいたい! 顔を合わせたくない! 顔を合わせでもしたら、確実に表情で悟られてしまう! 


『あ、これ、ガチで聞いてきてるやつだ……』


 って。


 逃げたい逃げたい逃げたい! 帰りたい帰りたい帰りたい! 何も聞きたくない何も聞きたくない! 何も言わないでほしい何も言わないでほしい!


「あ、あの……」


 何も言わないで! なんでそんなこと聞くの? とか、逆に聞き返してこないで!


「なんで、そんなことを……?」


 予想的中。ウチは一気に窮地に立たされてしまう。誤魔化そうと思っても、どう誤魔化すべきなのか、いい言葉が見つからない。いい理由なども、一つも頭に浮かばない。


 もっともっと気まずくなってしまう。苦しい。オタクっちは頬を赤くしながらも、それは真剣な質問だというのに……。ウチはというと、必死になって今の状況を打開しようとしている。


 どうにかしなければならないのは分かっている。その真剣な質問には、しっかりと答えなければならないのは、分かっているけど……。でも……。


 恥ずかしさで死にそうだよぉ! 無理だよ! もう無理だよ! 何も言えないよぉ!


「え、えぇ〜? そ、そんなに不思議なことだったかなぁ〜? オタクっち、マジになりすぎでしょ〜」

「……マジにもなるさ。あんなことを聞いてくるなら、まぁ……『そういうこと』だと、思ってしまうし……。期待もしちゃうよ……」

「……」


 バレてる? もうすでに積んでる? 終わってる?


 き、ききき、期待って、そういうことでしょ? オタクっちの言う『そういうこと』って、ウチがオタクっちのこと……ってことでしょ?


 顔が赤くなっていく。体温が急激に上昇した。体が耐えきれなくなっているのか、少しふわぁっとなってしまう。


 ヤバい。ヤバイヤバイヤバイ。ただからかおうとしてただけなのにぃ……! なんでこんなことにぃ……! 墓穴を掘ってしまうなんてぇ……!


 もう白状すべきなのか。全部全部、想いを告げてしまおうか。どうしようか。


 好きだということ。好きで好きでたまらないこと。この夏休み、ずっと会いたかったこと。会えなかった分、ハグをしたいこと。


 全部。全部。でも……。




 ———喉元まできてるのに……不安になって、言い出せない……———




「ウ、ウチはね……!」


 出ない。出せない。代わりに、反対のものが出てしまった。


「そ、そういうことを言ったんじゃないの! あ、あははー……。な、何言ってるの、オタクっち……?」

「え?」

「ウチが言ってるのは、そういうマジなことじゃなくてさ、その……なんというか、フレンドリー的な感じのことだよ! ほ、ほら! か、可愛いとかって言ってくれるからさ、好意的には思ってくれてるのかなーってね!」

「あ、ああ……。そういう……」

「うん! オタクっちはどうなのかな?」

「いや、まあ、それは……」

「あ、店長さんが呼んでる。ウチ行ってくるね!」


 嘘をついて、その場をすぐに離れた。流石にその嘘は、苦しい。


「分かんないよ……僕……」


 もう、何も聞こえないくらいに、緊張していた。

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