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クラスで目立たない超絶陰キャの僕は、三人の美少女ギャルに毎日言い寄られてかなり困ってます。  作者: 戸松原姉線香


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第17.75話 瑠璃奈ちゃん、悶える

瑠璃奈ちゃん視点です。

 知らない男に話しかけられることはたまにある。アタシはなかなかに美人らしく、周りからもそのことを評価される。背もそこそこに高く、スタイルもよく、なおかつ美人。そんなアタシに話しかける男もいて、おかしくはないというのが事実。


 いわゆるナンパ目的の人間たち。軽くあしらっていれば、そのうち諦めて帰っていく。優越感と自分を評価してくれたという快感に浸りながら、いい気分にしてくれることが多い。しかし人込みや街中でやられると困るものだ。


 特にスカウトとか。普通にお茶したいだけのナンパだったら、ダラダラ喋って終わりだからいいけど、スカウトは色々と長い。それにイケメンの人だったら、アタシ的にはなおさら気分がいい。アタシってこのイケメンに釣り合うくらいなんだなってうれしくなってしまう。


 それにしても、今日の店員さんはカッコよかったな。あの人、いつもあそこで働いてるのかな。逆にアタシが話すの長くてウザがられてたかもだけど、それでも本人にイケメンだねって伝えられて良かった。アタシの方がナンパみたいになってたし。


「はぁ……。てか、今日オタクいなかったな……」


 塾の帰り、暗くなっていく中、道を一人で歩いていた。


 前方から足速にこちらに向かってくる男がいた。記憶の中にある自分の通う高校の制服を着た人だった。


 アタシよりもほんの少しだけ大きい身長に、どこかで見たことのある顔。なんだこの人、イケメンだな。目がキラキラしていて、鼻筋もはっきりしている。面のいい男だった。


 男は話しかける。


「ん? あれ? 蝶番さん?」


 初手から名字を呼んでくる男。こんな人、学校にいたかな……。まあいっか、面の良さを拝めさせてもらえて逆に感謝したいほど。アタシは男の顔面をじっくりと見ていた。おそらく真顔で。


 ……コレ、店員さんじゃん。うわ、マジか。接客時のアタシのこと覚えてるかな。調子乗ってイケメンだねとか言ったし、今になって恥ずかしすぎる。


 アタシは何も反応しないでおこうと決めた。


「……」

「蝶番さん、ここで何してるの? もしかして塾の帰りとか?」


 もはや怖い。そんな印象。なぜこのイケメンは塾通っていることを知っているのか。疑問を抱くのはアタシの方だ。


「……」

「な、何か言ったらどうかな……。最近もだけど、さっきも冷たくあしらわれてたし……。人間って意外と繊細な生き物なんだからさ……」


 男はアタシにガッツリ話しかけてくる。え、なに。なんで他愛もない会話をしっかり楽しんでんの。


 あと最近って何? アタシのこと知ってるじゃん、その口ぶり。もしかして関わりあるとか、そういう感じなの?


「……」

「第一、小鳥遊さんは僕のことを兎みたいに思ってるし……。ま、まあそんなに寂しがり屋なわけではないんだけどねー……。あははー……」


 うん。アタシのこと知ってるわコレ、このイケメン。綾の名前出てきたってことはもうこの人、アタシのことガッツリ知ってんじゃん。うわー、真面目に塾行ってることとか知られてるし、なんか恥ずい。


「……」

「あ、あはは……。ああ、そうだ。今日は塾に行けなくて申し訳なかったよ。教えられるところがあればまた今度でも一緒に勉強を……」


 勉強? 一緒に? 新手のナンパか? というか何……。今日はって言った? 言ったわよね。


 このイケメンは一体なんなの? 何者なの? アタシに塾で勉強教えるなんて男、オタクしかいないんだけど……。


 ん?


「……」


 バイト先。アタシの名前を知ってる。塾のことも知ってる。


 イケメン店員。音葉が仲良く喋ってた。


 そこですべてがつながった。


「あ、あのー、蝶番さん?」

「ん……、あ……。オタク……?」


 いや、いやいやいや……。まさかそんな。あるはずないでしょ。だって実は面がいいとか、そんなの……あるわけないし、ありえない……よね?


「オタクっていうのは実は本名じゃないけど、一応三人にそう呼ばれてるから、まあそうだね。というか、やっと反応してくれた」


 ありえた。


「あ……うん……。ごめん……」


 無視していたことを謝り、呆然となるアタシにオタクが聞く。


「今、塾の帰り?」

「帰り……。家、帰る……」

「そっか、気をつけてね。それじゃあ、また明日」

「また……明日……」


 そうしてオタクは歩いて帰っていった。


 アタシはただ立ち尽くしていた。


「ただいま……」


 家に着いた。歩きながら、しばらく夜風の冷たさに体をうたれ、寒さを感じていた。


 ――――――イケメンだね、君。――――――


 アタシは自分の部屋に入り、すぐにベッドに飛び込んだ。クッションに顔をうずめ、今日の一連の流れを思い出す。


 カッコいい店員さん。


 いつものオタク。








 うわぁ〜〜〜〜〜っ!!! 恥ずい恥ずい恥ずい恥ずい恥ずい恥ずい恥ずい恥ずい〜っ! ありえないありえないありえないありえないありえないありえない〜っ! はっ!? なにッ!? マジで何!? なんなのマジで!? アレがっ? オタクっ? はぁ!? マジでありえんってぇ〜……! ありえてたまるかっ! アレがオタクとかマジで意味分からんって! てか最悪っ! イケメンとか言ったしアタシ! オタクにっ! イケメンって! クソ恥ずい〜〜〜っ!


「もう無理……恥ずすぎて死ぬ……」


 上昇する体温。赤面する顔。拍動が暴れている。


 認めるしかない。


「やだ、認めない……。絶対……ヤダ……」


 あのイケメン店員さんはオタクで、オタクはあのイケメン店員さんだ。


「うっ……ぐっ……くふぅ……!」


 瑠璃奈ちゃん、悶える。

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