一人の嘆き
ジョン可哀想
目が覚めると、そこは完璧な静寂と闇だった。
ジョンは、自分が冷凍睡眠カプセルの中にいることを理解した。しかし、なぜか他のカプセルは開いていない。彼の心臓が、恐怖で激しく脈打った。
最初の一週間、彼は希望を捨てなかった。システムに異常が発生しただけだと信じ、他の仲間が目覚めるのを待った。彼は船内の非常食を慎重に配分し、日誌をつけ続けた。
日誌1
「目覚めた。なぜだ?…何もない。誰もいない。聞こえるのは自分の心臓の音と、この船の低い唸りだけだ。ここはどこだ。誰かいるのか?応答しろ!…応答してくれ…」
しかし、一ヶ月が経ち、一年が過ぎても、誰も目覚める気配はなかった。ジョンの心は、少しずつ凍りついていった。
彼は、孤独を紛らわすために、船内を何度も何度もウロウロと徘徊した。食糧庫の非常食を何度も確認し、その数を数えるうちに、自分に残された時間が限りなく少ないことを悟った。日に日に、彼の顔はやつれ、目には生気が失われていった。
やがて、彼は狂気に蝕まれていった。彼は、仲間が自分を見捨てたのだと思い込むようになった。カプセルの中で安らかに眠る仲間たちが、自分だけをこの地獄に残したのだと。彼の希望は、憎しみと絶望へと変わっていった。
彼は、一人で耐えることに限界を感じ、誰かを道連れにしようと、アメリアのカプセルに近づいた。
彼の指先が、開閉ボタンの上に触れる。カプセルのパネルには、**「アメリア・ロビンス」**と表示され、彼女のバイタルが正常であることを示していた。その安らかな表示を見て、ジョンははっと我に返った。
こんな地獄を、彼女に味わわせてはいけない。自分と同じ絶望を、彼女に与えるわけにはいかない。
「…こんな苦しみを、他の人に与えてはいけない…」
彼は震える指をボタンから離すと、葛藤と怒りのすべてを、自らの拳に込めた。何度も何度も、アメリアのカプセルを殴りつけた。その衝撃で、カプセルの外装パネルがひび割れ、内部の制御システムが故障した。彼の絶望と狂気の痕跡は、彼女の命を救う最後の手段を奪い、未来にまでその影響を残した。
彼は、非常食のほとんどを、狂ったように一晩で食べ尽くした。そして、飢えに苦しみながら、日誌をつけた。
日誌1500
「俺は、俺だけがこんな目にあっているのか?なぜだ…なぜ俺だけを起したんだ!答えろ!お前たち、裏切り者め…!この絶望を、お前たちにも味わわせてやる…!」
彼の絶叫は、誰にも届かなかった。
彼は、最後の力を振り絞って船内のラボへと向かった。そこで、彼は致死性の薬品が入った小さな小瓶を発見した。そして、最後の力を振り絞り、ホログラムカメラを起動させた。
「俺はもう、一人で死ぬのは嫌だ…!」
ホログラムの記録が始まると、彼は静かに、しかしはっきりと語り始めた。
「…この記録は、もし誰かが俺と同じように目覚めてしまった時のために残す。この船には、もう希望はない。俺は、そのことを知ってしまった…」
彼の表情は、狂気から覚悟へと変わっていた。彼の絶望は、もはや他人を巻き込む狂気ではなく、自分自身で完結させるべき悲劇なのだと理解したようだった。彼は、致死性の薬品を手に取り、一瞬、故郷の星と愛する人々のことを思い浮かべた。
「…一人で死ぬのは嫌だ、そう思っていた。だが、他の誰かをこの地獄に引きずり込むよりは、マシだ。これで、俺の旅は終わりだ…」
彼は、致死性の薬品を握りしめると、ゆっくりと自分のカプセルへと戻っていった。凍りついた仲間のカプセルに囲まれ、彼は自分のカプセルの中へと身を横たえた。
「…さよなら…」
彼は、静かに小瓶の中身を飲み干した。彼の最期の姿は、3000年という気の遠くなるような時間の果てに、アメリアに発見されることになる。それは、アメリアが直面する孤独と絶望が、すでに始まっていたことを示す、おぞましい予言のようだった。
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