4. 褒めないでよ、三谷
ちょっと!
ちょっと!
ちょっとーーーーー!!!
三谷のくせに、
三谷ごときに、
この胸のざわつき…!
なにかの間違い?
そうよ、間違いよ!!
ふむ。
女子会開催しよう!そうしよう!!
…メイは 三谷の「ありがとう」により
トイレの個室で混乱の最中、
加藤先輩にメールを送るのであった。
女子会メンバーは案の定…
加藤先輩と私のみ。
明日の夜7時。
いつもの個室イタリアン。
予約もばっちり。
少し冷静になったメイは
平然と業務に戻った。
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次の日。
今日は久しぶりの加藤先輩!!
2ヶ月ぶりかしら♪
気合い入れて、柄にもなく
ゆるふわカールに髪まいちゃって、
ワンピきちゃったよ〜ん(^^)
でもでも、仕事もあるからちゃんと無地!
控えめなブルーに白色のカーディガン。
こちらも久しぶりのヒール7センチのパンプス。
よぉーーし!
今日は定時に上がるぞーーーー!
おりゃーーー!!!
朝から張り切るメイ。
女子A「ねぇー?みて!長濱先輩、今日綺麗じゃない?仕事もいつにも増してバリバリだしさー。
あれだね、今日きっと、デートだねー!!」
女子B「え?長濱先輩どこどこ?あっ!!本当だ!!
あのワンピ素敵ー!これは間違いないね!」
女子A「長濱先輩には幸せになってもらわねば。今日は必ず定時に帰ってもらえるよう、フォローするよ!」
女子B「OK!賛成!!」
日頃のメイの仕事ぶりに加え、
結婚秒読みとささやかれていた男性に
こっぴどくフラれて傷心中!
毎日涙で枕を濡らす日々との噂が広まって、
メイは桜舞支店女子一同に
陰ながら応援される存在になっていた。
夕方6時。
定時。
よっしゃー!
帰るぞー(*´∀`)♪
と浮かれながら席を立った時、
目の前の席の三谷と目が合った。
「長濱さん、今日、なにかあるの?」
え?仕事以外であなたから話しかけられたの
初めてですけど?!!!!
「え?!!!ど、どうしてそんな質問するんですか?」
咄嗟に質問を質問で返しちゃった。。。
「服装、いつもと雰囲気違うので、、、」
三谷の言葉に、キョトン。
それを察してなのか、なんなのか、
三谷と仲の良い石川先輩が、
「それは、あれかな?三谷。
長濱ちゃんが、今日はいつもより可愛い!って
いいたいのかな??」
と口を挟んできた。
「あーーー、
あー、
そーゆーことになりますね、、」
と三谷。
目は遠くを見ていて、感情はこもっていない話し方。
あー、はいはい。日常会話の一環ね。
それでも「可愛い!」は想定外。
嬉しくないというとそれはウソ。
メイは動揺を悟られまいと、
仕事用の大人スマイル全開に
「ありがとうございます。では、お先に。」
と丁寧にお辞儀し、三谷たちに背を向け、
コツコツとヒールの音を響かせながら支店を出た。
………。
廊下にでると、給湯室の鏡が見えた。
そのとき自分の真っ赤な耳と真っ赤な顔が目に入った。
メイは崩れ落ち、しゃがみ込んだ。
やっぱ嬉しいーよー
もぅ、なんなのよ、なんなのよ、
褒めないでよ、三谷ーーーーーーぃ。
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19時 女子会にて。
加藤先輩がメイからの突然の招集に驚き、
「どーしたのよ!!!
パワハラ?パワハラなの?!」
と大慌て。
「違うんです、違うんです!
先輩聞いてくださいよ!
三谷さんが、いや、三谷が、
優しくて、仕事できて、
なんなら私にお礼までいってきて、
今日なんてほめてくるんです!!
(褒めたのは本心じゃなさそうだけども)」
真っ赤な顔で打ち明けると、
「なんなのよ、だからどーしたのよ、
三谷くん、いつもそうじゃん、
みんなに優しいモテ男。
ほらっ!いつもどおりじゃん!
…?え?あんたが三谷くんに惚れてるって話??
うそ!?
恋バナなの?恋バナ??」
とニヤニヤと嬉しそうにする先輩。
わたしがフラれた時とっても心配してくれたから、
新しい恋に向かうことが嬉しい様子。
いや、ちゃかしたいだけか?!
その日は最近の出来事と心の変化を
存分に先輩に話し、結局恋バナになった。
恋バナ…
私、恋してるのかぁ…
戸惑いは消えないけれど、
今日、ワンピースを着てみて、
よかった。。。
心から思うメイでした。