9. 気になるのは、三谷
今日はお休み。
目が覚めた頃には
すっかり日はのぼり、
もうお昼過ぎ。
昨夜はなかなか眠れなかった・・・
昨日の三谷を思い出すと、
心がおどってしまって。
困惑や言葉の意味について
深く考えるよりも前に、
自分の気持ちは心に正直だ。
ドキドキがいつでも蘇る。
この気持ちを
大事にしたい。
でも冷静に。
三谷には木村さんがいるから。
頭ではわかっているので、
歯止めがかかる。
それでも、
この跳ね上がるほどの思いは、
止められない。
「おっと、もうこんなじかん!?」
今日は14時からアキラとカフェで待ち合わせ。
いつも通りのラフな格好。
デニムにニット。
化粧もほどほどに、リップも塗らない。
気が楽。
気心知れた彼との時間は
海に例えると凪。
ずっと、どこまでも、
穏やかに流れる時間と会話。
コーヒー1杯飲み終えると解散する。
それも程よい。
だからやめられない。
家を出ると少しひんやりした。
昨日の夜の風に似ていて、
またニヤついた。
ーーーーーーー
カフェに着くと、
アキラが先についていたようで、
席で待ってくれていた。
「あら、珍しい!」
そう声をかけて、私も席に着く。
「うるさいよ!たまにはね!」
と微笑む彼。
おだやかな時間。
そして、またいつも通りコーヒーを頼んだ。
たわいない話。
でもいつもよりアキラの元気がなさそう。
「アキラ、何かあった?」
声をかけると、
「あーーー、、、
実は仕事でミスして、
結構まとまったお金を用意しなきゃいけなくて、
忙しくしてるからかな・・・
でも、大丈夫!
てか、よく気づいたな!
さすが、メイ。俺のことよくわかってる!」
そういうと、アキラは少しうつむきながら困った顔で笑った。
「無理しすぎはダメよ、
体が資本!
ね!
話ならいつでも聞くから!」
とメイがアキラを元気付けようとすると、
「うん。。。ありがと。」
とメイを見つめ、目を細めて言った。
ーーーーーーー
お会計を済ませ、
2人で店を出た。
お店の中の暖かい空気と外のひんやりした空気が混じる。
その温度の変化を感じていると目の前に
三谷がいた。
え???
と体が固まった。
びっくりして、
昨夜のドキドキがぶり返して、
顔が赤くなった。
ふと、我にかえると
リップも塗っていない自分を見られるのも
普段着を見られるのもはずかしくなって、
さらに赤くなる・・・
「長濱、偶然だね!
そちらは??」
三谷が言った。
「三谷さん!!
え、えっと、こちらは。。。」
ここで口ごもった。
三谷さんになんて言えばいいのか・・・
知られたくない・・・
そう思った。
すると横にいたアキラが
「初めまして、
メイの元婚約者の椎名です。
メイがいつもお世話になってます!」
と即座に割って入った。
三谷は少し黙ってから、
「そうですか、こちらこそ、とてもお世話になっています。
長濱さん優秀だから^^
僕、ここのコーヒー豆が気に入ってて、
買うときはいつもここなんだ!
ではここで。
長濱、また週末、会社で!」
そう言って三谷は店内へ入って行った。
三谷を目でおうメイに気づいたアキラは
「ダメだった?元婚約者って言っちゃったの。」
とメイの顔を覗き込んだ。
メイは顔を真っ赤にしながら
「別に、そんなことは」
と答え、アキラの先を歩き始めた。
2人は少し歩いたところで、
「じゃあここで、、、」と
いつも通り別れようとした時、
アキラに呼び止められた。
「ねぇ」
??
「もう一度やり直せないかな?
俺たち。」
・・・
「・・・えと、あの・・・」
「少し考えてみてよ。
一緒に過ごした時間も思い出してほしい。
俺は、やっぱり、メイだと思ってる。
あのときのことを何度も悔やんだ。
今度こそ、必ず、幸せにする。
だから、考えて欲しい。俺のこと。
・・・週明け、月曜19時あのカフェで待ってる。」
そう言い切って、アキラは背を向けて歩き出した。
ーーーーーーー
アキラへの想い・・・
ホッとする、穏やかな時間の正体にはもう気づいている。
懐かしさ。
それだけ。
恋愛のそれではない。
ドキドキするとか、
飛び跳ねるくらいの気持ちとか、
モヤモヤが晴れない想いとか、
たくさんの波があるのが恋愛だと知っている。
正確には、
昨日満月と共に思い出した。
誰とどんな関係だろうが、
私は三谷のことが好きなんだとおもう。
トキメキなんて言葉をこの歳で使うのは恥ずかしいけれど、
私がトキメクのは三谷相手の時だけ。
気になるのは、三谷だけ。
答えはとっくに出ている。
月曜・・・カフェではっきり伝えよう。




