7. 哀しみをしれ、三谷(三谷視点)
すると、
会話が聞こえてきた。
男の方から
「久しぶり。
元気にしてた?」
と。
少し困ったような、
でも目線はしっかり男の方を見たメイ。
??
どんな関係だ??
「うん。
アキラは?」
「まぁまぁ…かな」
そう話すと、
2人は別々の方向へ歩いて行った。
??
勘繰りすぎか?
待ち合わせをしている男でもいたのか?
なんて・・・
ふぅ。
よし、仕切り直し、
今だ。
そう思って、再び足をメイの方へ向けたが、、、
一歩を踏み出さずにいた。
歩き始めたメイが、
何度も、何度も振り返るのだ。
メイにとって、
あの男が特別な存在だということは、
明らかだった。
さっきまでの勢いはどこに行ったのか、
自分の気持ちが静まり返るのを感じながら、
1人で家路についた。
——————
あれから、
長濱への気持ちのやり場をなくして、
仕事に打ち込んだ。
長濱との連携は最低限。
気にならないと言えば、嘘になる。
でも、気にならないように、
外回りを増やしているのも事実。
まだ、気持ちが行ったり来たり。
鋭くこの気持ちに気づいたのが 恵だった。
三谷から事情を説明はしていないが、
あの飲み会の後から、どんよりしている表情を読み取ったに違いない。
「今日、うちでご飯食べない??
旦那もひさびさに会いたいってさ!」
いとこの恵は、
三谷の大学時代の同級生の木村と結婚した。
3年前のこと。
木村とは、ゼミが一緒で、
大学卒業旅行も一緒に出かけた中。
この前の祖父の米寿祝いを兼ねた温泉旅行にも一緒に行った。
「そうだな、久々に」
ーーーーーー
その夜 木村宅にて・・・
「いらっしゃい!
久しぶりだなーーー!」
事情を知ってか知らずか
木村が元気に出迎えてくれた。
席に着くと、早速お酒が進む。
久々に会えた嬉しさと、
哀しさを紛らわしたいという思いで。
久々に木村とお酒を飲むと気持ちが緩んで、
近況を話さずにはいられなかった。
それを悟ってか、恵は買い忘れたものがあるからと、
席を外してくれた。
「実はさ・・・
最近、気になる人ができて・・・
でも、その人には好きな人がいるみたいでさ。
この年で、こんなモヤモヤする片思いをするとは思わなかったよ。
参ってる・・・」
スッキリしていない気持ちを友人に話すと、
少し楽になった。
「恋バナかぁ・・・
三谷の恋バナは初めてかもなーー
いつもモテモテで、
悩みなんてなかったもんなーーー笑
そんなに好きなんだ^^
どんな人??可愛い??」
「そうだなーーーーー、
可愛い。
ほんっとに可愛い。
仕事もできるし、気遣いも。
どこをとっても・・・最高だよ。
・・・やっぱ・・・
やっぱ・・・結婚っていいもんなの?
片思いでモヤモヤしてる俺からは、
全く想像できないわ。」
意外にも三谷が『可愛い』とハッキリいうので、
木村は目を丸くした。
「そんなに?
本当に好きなんだな、その人のこと。
俺は結婚してよかったと思ってるよ!
お前の親戚になれたしな笑^^
そういや、俺の会社に結婚式直前に
破談になったヤツがいたよ。
半年前くらいだったかな・・・?
酷い話だったぜ。
結婚って、やっぱ他人同士。
お互いがお互いを想う気持ちが大事だと思ったよ。」
「片思いの俺がいうのもなんだけど、
式直前はつらいな、
一体何があったらそうなるんだよ」
「男の方が浮気。
謝っても許してもらえずって感じらしい。
でも!!これには続きがあって、
どうやら浮気相手の女は既婚者だったらしく、
その旦那から慰謝料を請求されてるらしい。
弁護士入れて、揉めに揉めて、
相手から300万請求されてるんだけど、
そのお金も払うあてもなく、
当時の自分の婚約者にお金を借りようとしてるんだって!!
もちろん借りたら返すつもりはないって
この前の飲み会で武勇伝のように話してて、
流石にみんな引いてたわ。」
・・・。
結婚ってとても怖い・・・。
三谷はそう思った。
「浮気した元婚約者にお金を貸す女っているの?
よほど男前なのかな?!笑」
「この前の社員旅行の写真あるよ、
みる???
・・・えっと・・・これこれ!
こいつ!
確かにね、男前よ!!
でもねーーー
俺たちには敵わないな笑」
「だな!笑」
・・・と笑っては見たものの、
俺には相手すらいない・・・
婚約者がいたことすらない俺は、こいつ以下なのか??
全てをマイナスに捉えることが多くなった三谷は、
今夜も眠れそうになかった・・・